web-magazine
web-magazine

生田信一(ファーインク)
書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました

書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

今回のコラムは新刊書籍『文房具を深める100のことば』を紹介します。

本書は、文房具をテーマに100のコラムが綴られた一冊です。著者は、文具メーカー、株式会社ノウトの代表でもある高木芳紀(たかぎ・よしのり)さん。文房具のアイテムはとても幅広く、本書でどんなお話が飛び出すのか、読む前からワクワクです。

本書でも語られていますが、日本は文具大国で、海外のお客さんがおみやげに文具製品を買い求める光景も珍しくないとのこと。文房具は、誇るべきメイド・イン・ジャパンの文化なのです。本書を一読して、自分が生活する周囲を見回してみても、文房具に関して恵まれた環境であることを改めて実感しました。

本書を読み終え、数々の文具の歴史や開発秘話などのエピソードに触れると、新しい世界が広がり、誰かに話したくなるに違いありません。

では、一緒に覗いてみましょう。

書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

翔泳社の新シリーズ「100のことば」、1冊目のテーマは文房具

2025年5月26日、株式会社翔泳社から、書籍『文房具を深める100のことば』が発売されました(写真1)。
リンク→SE Book 翔泳社の本『文房具を深める100のことば』

写真1 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)書籍『文房具を深める100のことば』(高木芳紀 著、翔泳社)。定価:2,200円(本体2,000円+税10%)。仕様:四六変・224ページ ※紙の書籍、電子書籍があります。

写真2 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)本書の紙の書籍の仕様は丸背上製本。コンパクトで軽量、上製本なのに負担に感じないのが特徴。

「100のことば」シリーズは、翔泳社の書籍の新シリーズ。好きなテーマについてもっと知りたい。日々すぎていく時間の中で、立ち止まって好きな世界にゆっくりとひたり、理解を深めたい。他の人にも知ってほしい、一緒に語りたい。そんな方に向けた読み物です。

1冊目のテーマは「文房具」。本書では、文房具メーカー代表である高木芳紀氏が、100のことばを切り口に、文房具の世界を縦横無尽にご案内します。

本書の目次は以下の通り。

──────────
■目次
001 紙の前夜/002 紙の発明/003 文房具と文具/004 聖典とつけペン/005 家康と鉛筆/006 金印とシーリングスタンプ/007 ハンコの色/008 蔵書印のロマン/009 毛筆と石筆と鉛筆/010 日本製の鉛筆/011 シャープペンシルの革命/012 王室とペン/013 伯爵の鉛筆/014 文房具メーカーと動物/015 ぺんてるとサインペン/016 三菱鉛筆と三菱財閥/017 水先案内人と水兵さん/018 コクヨは国誉/019 建築工具とマックス/020 プラスとアスクル/021丸善と文房堂/022伊東屋とItoya/023 ボールペンインキと日本人/024 カラーペンの世界/025 はだいろの鉛筆/026 E E 、E B 、F 、H B/027 パンと消しゴム/028 壊れない文房/029 マスキングテープと3人の女性/030 シールと剥離紙/031 付箋とポスト・イット製品/032 かわいいはんこ沼/033 文房具とタイムマシン/034 ファンシーグッズと女子/035 算盤と電卓/036 虫眼鏡の魅力/037 紙のお道具箱/038 オフィスの家具/039 大人の手書きと道具/040 自分の美文字/041 手帳コツコツ組とスカスカ組/042 連用日記の憂鬱/043 手書きの速度/044 ノートデコ・手帳デコ/045 オリジナル原稿用紙/046 一人の手帳会議/047 手書きの味わい/048 紙の変態/049 ノートの裏抜け/050 紙と筆記具のマッチング/051 文豪と万年筆/052 文房具と毛細管現象/053 調印式と記念ペン/054 乾かない万年/055 モンブランと仏壇/056 金ペンと鉄ペン/057 セルロイドとエボナイト/058 きっかけのご当地インク/059 文化としてのインク沼/060 ガラスペンとつけペン/061 インクの3S/062 インク沼の次/063 郵趣の世界/064 郵便局と風景印/065 文通のコスパ/066 製本の種類/067 コデックス装のひみつ/068 箔押しの今昔/069 ペンは剣よりも強し/070 ダ・ヴィンチのノート/071 廃刀令とベルヌーイ螺旋/072 ローラーボールと大統領/073 昔の名残/074 SNSと文房具/07 5 作家ペンとカンペセット/076 名前のわからない文房具/077 ファイルとホルダー/078 推し活と文房具/079 木軸ペンと中学2年生/080 鉛筆の香り/081 文房具コレクターとセラピー/082 文房具モチーフもの/083 名入れ文具のよろこび/084 ひきだしと文具箱/085 ミュージアムグッズ無双/086 即売会と限定品/087 文具女子という趣味/088 備災と文房具/089 ワークショップのすすめ/090 文房具のアワード/091 ノベルティの王様/092 文房具店員のためいき/093 問屋さんとバイヤーさん/094 有隣堂しか知らない世界/095 世界の文房具好きさんたち/096 台湾と韓国と日本と/097 インバウンドと文房具/098 文房具とコロナ/099 民俗学と文房具/100 文房具の未来
──────────

著者の高木芳紀さんのプロフィールは以下の通り。

──────────
■著者紹介
高木芳紀(たかぎ・よしのり)
文具&ノベルティ企画販売の株式会社ノウト代表。扶桑社『文房具屋さん大賞』審査委員長。翔泳社『暮らしの図鑑 文房具』『暮らしの図鑑 紙もの』『暮らしの図鑑 筆記具』監修。ラジオ・テレビ・雑誌など出演多数。トレードマークのボーダーシャツとハンチング帽から、爆笑問題の太田さんに命名されたあだ名は「フランスの泥棒」。
──────────

私は以前、取材のために高木さんの仕事場におじゃましたとことがあります。著者の高木さんは、これまでクアウドファンディングサービス「MAKUAKE(マクアケ)」を通じ、数々の文具商品を企画し、世に送り出してきました。

高木さんがこれまで手がけてられたプロジェクトは、MAKUAKEサイトで見ることができます。
リンク→「新しい文具製作委員会」プロジェクト

私が気に入って本サイト「活版印刷研究所」のコラムに最初に取り上げた文具は「箇条書き手帳術に最適なコデックス装ノンブルノート」や「Mozu錯視トリックノートの改訂ベスト版」でした。
リンク→「錯視トリックノート「NOUTO」(改訂ベスト版)by Mozuが発売」

また最近では、毎年必要となる通年仕様の手帳として、「make time planner」を取り上げさせていただきました。
リンク→「自分のペースとスペースを取り戻す手帳 make time planner2025」

文具の世界の奥深さや楽しさを教えてくれた高木さんの言葉に耳を傾けてみたいと思い、本書を手にしました。おもしろくて引き込まれて、一気に読んじゃったのですが、本書の造本設計には並々ならぬこだわりが感じられます。紙面の一部を紹介しながら紹介しましょう。

写真1 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)書籍『文房具を深める100のことば』(高木芳紀 著、翔泳社)。定価:2,200円(本体2,000円+税10%)。仕様:四六変・224ページ ※紙の書籍、電子書籍があります。

写真2 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)本書の紙の書籍の仕様は丸背上製本。コンパクトで軽量、上製本なのに負担に感じないのが特徴。

読書に耽り、文房具の沼に浸ってみましょう

好きなテーマについて書かれた本にじっくり向き合うことは、贅沢な時間です。マニアにしか知りえないとっておきの話に、ふむふむとうなずきながら読み進めました。

本書の大きな特徴は、コンパクトな設計の上製本の仕様になっていることでしょう。手にしたときに軽量で、持ちやすく、ページをめくった時の読みやすさに感動を覚えました。

どのお話にも挿絵が付き、雰囲気を盛り立ててくれます。添えられた挿画は、ドイツ出身のイラストレーター、クレメンス・メッツラーさんによる描きおろしとのこと。事典の挿絵のような精緻なイラストで、100のことばに花を添えてくれます(写真3〜6)。

写真3 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)028「壊れない文房具」より。

写真4 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)039「大人の手書きと道具」より。

写真5 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)059「文化としてのインク沼」より。

写真6 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)083「名入れ文具のよろこび」より。

 

最近のGoogleの検索サービスでは、“文房具の沼”のような新しい言葉は、AI機能を使って意味を教えてくれます。AIで表示されたのは以下の解説でした。

“「文房具の沼」とは、文房具に魅了され、次々と新しい文房具を欲しくなり、収集してしまう状態を指します。まるで沼にハマって抜け出せないように、文房具の魅力に引き込まれ、収集を止められないことを表現しています。”

大きな文具店や100円均一のショップを覗くと、これは…と思わせる楽しい商品が並んでいます。コレクターの人(あるいは予備軍の人)にとっては危険地帯ですね。ぬかるみに足を取られないよう気をつけて歩いていきましょう。

では、次回をお楽しみに!

写真3 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)028「壊れない文房具」より。

写真4 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)039「大人の手書きと道具」より。

写真5 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)059「文化としてのインク沼」より。

写真6 | 書籍『文房具を深める100のことば』が刊行されました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)083「名入れ文具のよろこび」より。