生田信一(ファーインク)
平和紙業 ペーパーボイス東京がリニューアル、「PPP」展に行ってきました
平和紙業株式会社は、色・柄・風合いの豊富なファンシーペーパーを一枚から販売する紙の専門商社です。名刺やステーショナリー、パンフレット、ポスター、パッケージなど、紙を選びたいときに利用するのが今回ご紹介するお店、ペーパーボイス東京です。これまでショップでの買い物や、併設されたギャラリーの展覧会やイベントによく出かけていたのですが、2019年10月にリニューアルされ、とても便利になりました。
リニューアルオープン後の初めての展覧会が催されるニュースを聞き、さっそく出かけました。今回のコラムでは、新しくなったショップのニュースと、2019年10月23日〜11月2日に開催された「Paper Product Prototypes(PPP)」展の様子を紹介します。
美しく生まれ変わった店内。紙の相談ができて、1枚から購入可能
平和紙業 ペーパーボイス東京は、東京都中央区新川の住所で、最寄駅は東京メトロ日比谷線・東西線[茅場町駅]です。駅から永代橋方面へ7分程歩くと、ビル1Fの入り口のガラス越しに受付のカウンターが見ます(写真1)。
ショップでは、紙を購入できるほか、カウンター形式の窓口で相談を受けることができます(写真2)。紙の専門店ならではの作りで、紙の選択に悩んでいる時は、利用してみるとよいでしょう。ファンシーペーパーは、銘柄により色、柄、風合いなどの特徴があり、実際に見本帳などで触って感触を確かめないと判断が難しいものです。店頭で専門家の方からアドバイスをいただけるのはとてもありがたいです。選択に迷った時は是非訪れてみることをお勧めします。
平和紙業のWebサイトでは、「紙検索」のページで条件を絞り込んで、紙の銘柄を探すことができます(写真3)。
この検索画面はとても使いやすく便利です。たとえば「感覚」の項目では、ツルツリ、サラサラ、ザラザラ、フカフカ、シマシマ、ピカピカの親しみのある言葉で表現されています。また「紙質」の項目で「機能紙」をチェックすると、コースターに適した紙「SSコースター」や、屋外など水に濡れる場所でも使用できる紙「OKレインガード」、水に溶ける紙「溶ける紙・水」など、特殊な機能を併せ持った紙を見つけることができます。さまざまな銘柄の紙の特徴を知っておくことで、プロダクトを企画する際のヒントになるのではないでしょうか。
「Paper Product Prototypes」展
リニューアル後のギャラリーで最初に催されたのが「Paper Product Prototypes(PPP)」展です(写真4)。紙の使用目的には、情報を伝達したり、ものを包むパッケージなどの用途が一般的です。しかし、インテリアとしての紙、さらには実用性のあるプロダクトとしての紙という観点から捉え直してみると、紙にはまだまだ未知の可能性を秘めています。PPP展に展示された試作品は、紙の新たな可能性を追求したもので、初めて見るものばかりでした。
一方、製作工程にも興味が向きます。「普段見慣れた紙なのに、いったいどうやって作ったのだろう?」と素朴な疑問が湧きます。展示された試作品の作り方や発想のヒントを伺うために後日出展されたクリエイターさんが集うトークショーに出向きました。以下では、作品とともに、コンセプトや製作のヒントなどをご紹介しましょう。
紙の資材
ギャラリー会場の入り口に設置されたのは、紙とはは思えないプロダクトの数々。プロダクトデザイナー 尾形逹さん(B6 Studio)による作品で、紙の特性を活かし、インテリア・プロダクトなど他領域に展開・活用できる新たな紙素材を製作されました。
本展示では、曲げ成形を施し強度を向上させた紙素材「ウェーブ」と、折り加工を施し伸縮性を付加した紙素材「ジャバラ」の展示、それらの活用例も合わせて披露されました(写真5、6)。ウェーブやジャバラ状に成形された紙は強い強度があり、これらを使った家具やインテリアの試作品はどれも実用性があり、しかも軽くて扱いやすい特徴があります。成形方法はシンプルで、紙を一旦水で湿らせ、型に密着させた状態で乾燥させるだけ、という解説を伺いました。
紙の整理箱
もうひとつのトライアル「紙の整理箱」は、ファンシーペーパーの多色性、紙の加工性を活かし、縦にも横にも組み合わせて使える紙の整理箱を試作しました(写真7)。紙の切断面の薄さ、美しさを損なわないよう、一般的なパッケージとは違う製造方法と加工調整を行っているそうです。
束紙─たばがみ─
紙の構造デザイナー 工藤陽介さんは「束紙(たばがみ)」と名付けられた作品を試作しました(写真8、9)。一枚では意識することのない紙の重さも束ねると持ち上げられないほどになることがあります。紙の一枚の軽さとしなやかさと、塊になった時の重量感や存在感を併せ持っているのが束という状態。本の端をしならせた時の感情は誰しもが記憶しているでしょう。ここうした無意識の記憶をキューブ状の紙の束で再認識させたのが「束紙」です。
「束紙」は紙を積層したキューブを二等分してあり、分割の仕方によって断層の表情が違って見えるように設計されています。紙一枚ずつは幾何学のみで構成されていながら束になった時の断面は有機的にも見え、並べていくと新たな表情が生まれます。遊びの様に手で触りながら、今まで意識してこなかった紙の特性を感じられる作品になっています。
どのようにして作られたか不思議で、トークショーでは作り方のヒントを少しだけ伺うことができました。思いもよらない断裁方法と仕上げ加工がこの作品の秘密になっています。
紙の包み袋
グラフィックデザイナー 保田卓也氏+三上悠里氏(△□)のお二人は、紙が自然素材から作られること、古紙回収のしくみが整っていることに注目し、紙を折る、曲げる、切ることで形を保ったり、変えたりする紙の特性を活かしたプロダクトを製作しました。
「紙の包み袋」は、服や小物など重くない日用品の持ち運びに利用できる紙の袋です(写真10)。紙の柔らかさや切り込みを入れた時の伸縮性を利用し、メッシュを入れることで中身に合わせて自由に形が変形します(写真11)。さらに取っ手を付けることで機能性を加味しています。ふろしきのような包むという感覚を連想する試作品です。
紙の日よけ/雨よけ
紙の厚みと、折りや曲げによってある程度の強度を持った「日よけ」「雨よけ」を試作しました(写真12)。万能ではありませんが、ちょうどよい機能を持たせています。江戸時代の番傘が竹と紙でできていたことを参考にしたそうです。
紙の特性として、軽くて持ち運びしやすい、加工しやすい、リサイクルしやすいなどの利点があります。こうした利点を生かして、紙製品をプロダクトとして捉え直す視点は新鮮でした。さらにクリエイターがアイデアを加えることで、新しい分野が広がり、楽しい商品に生まれ変わっていくことが実感できました。この展示がきっかけとなって新しい商品が生まれることを願っています。
では、次回をお楽しみに!
平和紙業 ペーパーボイス東京
住所:〒104-0033 東京都中央区新川1-22-11
電話番号:03-3206-8541
FAX番号:03-3206-8515
営業時間:9:00am ~ 5:00pm(土日祝休み)
在庫アイテム数:3,500アイテム
在庫寸法:四つ切(545×394㎜)/半裁(788×545㎜)
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