生田信一(ファーインク)
葛西臨海水族園 開園30周年記念イベントで作られた 『特大!クロマグロ194mmシール』
葛西臨海水族園は、東京都江戸川区臨海町にある水族園。1989年10月10日に開園し、2019年は30周年にあたり、10月12日~14日の3日間、さまざまな記念イベントが催されました。筆者はこのイベントに参加しました。とても楽しく、記憶に残る体験でした。
今回のコラムではイベントの1つのクイズラリーとそのお土産に作られたシールのことを中心に、葛西臨海水族園の魅力をお伝えしようと思います。イベント後に葛西臨海水族園を訪れ、飼育展示課 教育普及係の堀田桃子さん、飼育展示課 教育普及係 デザイナーの齋藤未奈子さんにお話を伺いました。
大勢の人で賑わった開園30周年の記念イベント
最初に葛西臨海水族園を紹介します。水族園は、京葉線の葛西臨海公園駅を降り、公園内を歩くとすぐの距離にあります。立地は東京湾を望める場所にあり、入り口のドームの前に立つと、水族園が海と接しているかのような壮大な景色に出会います(写真1)。入り口からエスカレーターで下って園内に入っていくのですが、海底へと潜っていくような感覚を覚えワクワクします。
私はSNSで開園30周年の記念イベントの情報を知りました。その中でひときわ目を引くグッズがありました。冒頭の写真の『特大!クロマグロ194mmシール』です。なんて素敵な、迫力のあるシールなんでしょう。
このシールは2019年10月12日~14日に実施される、クイズラリー「挑戦!マグロ魚(ウオ)ッチング」の参加者に配られるとのこと。私は最終日に訪れ、記念イベントを楽しみました。訪れた日は祝日で、家族連れやカップルなど、大勢の人で賑わっていました。
まずは、この水族園で人気の高いマグロが泳ぐ水槽をのぞいてみましょう(写真2、3)。マグロの体はラグビーボールのような形をしています。この形により水の抵抗を抑えて水中をスムーズに泳ぐことができるそうです。
3日間の記念イベントでは、スペシャルガイドツアー「マグロ裏側探検」が行われ、普段入ることのできない水槽の上からマグロをのぞくことができました。また「体験!マグロラボ」という別のプログラムでは、飼育係がふだん使っている道具などを間近で見ることができました(写真4)。
さて、いよいよクイズラリーに挑戦です。入り口で、クイズシートを受け取り、水槽を観察しながら問題を解いていきます(写真5)。筆者も挑戦しましたが、じっくり観察しないと問題を解くことができないようです。周りの子ども達の会話を参考にすることもしばしばでした。
答えをすべてを書き終えて、シートを係員の方に見せると、『特大!クロマグロ194mmシール』をもらうことができます(写真6)。筆者は、答えを一問間違えてしまったのですが、答えと解説が記された用紙(解答シート)をもらうことができました。
手に入れたシールは実に素晴らしく、迫力があります。このシールはふかふかの和紙に印刷されており、触り心地がとてもよいです。印刷は2色刷りで、メインの絵柄が活版印刷、さらにその上に金色の箔押しがスタンプされています。このシールは、見れば見るほど不思議で、どうやって作られたのかとても興味を持ちました。詳細は後述します。
イベント用に作られたチラシやグッズ達
葛西水族園の飼育展示課 教育普及係の堀田桃子さん、飼育展示課 教育普及係 デザイナーの齋藤未奈子さんに今回の記念イベントのお話を伺いました。さらに、これまで催された同イベントのチラシやクイズシート、記念のグッズの数々を紹介いただきました。
2019年度のイベントで作られたチラシとクイズシートが(写真7、8)です。クイズシートは、手に持ったときにちょうどよいサイズで、デザインも親しみやすいです。クイズの作問は教育普及係のイベント担当者が受け持ち、デザイナーの齋藤さんが印刷物やお土産のグッズのデザインを手がけられました。今回のイベント企画について、齋藤未奈子さんは語ります。
「クイズラリーのお土産には毎回アイデアを凝らしていますが、開園30周年という節目の年の開園記念イベントなので、さらにスペシャルなものをと考えて企画・デザインしました。この『特大!クロマグロ194mmシール』はシールとしては大きめですが、実は水族園で飼育したなかで最大になった1940mmのマグロの1/10の大きさなのです」
さかのぼって、2018年度のチラシやクイズシートを紹介いただきました(写真9、10)。この時のお土産は『お家がアクアシアターに!? マグロマスキングシール』です(写真11、12)。シールには切れ込みが入っており、剥がすとマグロの形をしたシールになります。「ガラスなどに貼って楽しんでもらえるように企画しました」と堀田さんは話します。
さらにさかのぼって、2017年のチラシとクイズシートが(写真13〜15)です。この時のお土産は『金ピカ!特製メダル(風)シール』(写真16、17)。
2017年度のお土産のシールは、とても豪華な仕上がりです。このシールの仕様のヒントになったのは『デザインのひきだし31』(グラフィック社)の記事でした。記事で取り上げられていたシールは、レッテル、または封緘(ふうかん)シールと呼ばれ、昔のデパートの贈答品の包み紙の留め具として使われていました。以前は水をつけて貼るタイプでしたが、現在はシールの形で利用されています。このシールの製造の詳細は、シール製作を手がけたコスモテックのブログ記事「葛西臨海水族園 にて、昔ながらの 『 レッテル 』 をゲットだ!」に詳しく書かれています。
コスモテックのブログによると、素材は金消しホイル、印刷は[DIC-433]、[DIC-2591]の2色、さらに仕上にエンボス&抜きフチ色づけ[DIC-2591]( レトロ技法 )を行っているとのこと。デザイン、印刷、加工が見事で、見入っちゃいます。
『特大!クロマグロ194mmシール』のメーキング
2019年度の『特大!クロマグロ194mmシール』と2017年度の「金ピカ!特製メダルシール」の印刷を手がけたのは、箔押しやシール製造を得意とするコスモテックさんです。コスモテックのブログではシールの制作のプロセスを、ブログ記事「葛西臨海水族園 『 特大!クロマグロ194mmシール 』」で詳しく紹介しています。
印刷仕様は以下の通りです。
素材 : ふかふか和紙シール材(再剥離)
印刷 : 活版シール印刷1色[DIC PARTⅡ 2172]
加工 : 7号金箔押し
仕上 : 半抜き&1カット+四方断裁
さらにブログでは製造工程のムービが公開されています。印刷機でシールが連続して流れていく様子は、マグロが群で泳いでいるようでもあり、素敵なムービーになっています(写真18、ムービー1)。
刷り色は青と金の2色でシンプルですが、それぞれに活版と箔押しという伝統的な印刷技法が使われています。「トラディショナル」というワードがぴったりの出来栄えです。
金箔では、水の泡が表現されていますが、その中にアルファベットの文字が確認できます。「Thunnus orientalis」という文字で、これはクロマグロの学名とのことです(写真19)。
シール素材のふかふかの和紙は、吟味して選ばれたそうです(写真20)。素材の和紙について、ブログの記事からコスモテック 青木政憲さんの言葉を引用します。
「実物を是非ご覧頂ければ分かりますが、通常のシールとは異なり、ふかふかと厚みがあり、大きい。そして、手で撫でると印刷と箔押しの圧の痕跡をほのかに感じ取ることが出来ると思います。まさにアナログ感満載のこだわりシールの完成です」
シールの糊は再剥離タイプだそうです。どこに貼ろうか迷いますね(写真21、22)。
水族園を案内するサインやパネル
取材を終えて、園内を案内していただきました。水族園内では、デザイナーの齋藤さんが手がけられたサインや掲示物のデザインを見ることができました。
園内には記念のロゴをあしらったフラッグが飾られ、イベントを盛り上げていました(写真23)。ロゴは30周年を記念して作られたもので、さらにロゴをあしらった記念品の缶バッチも作られました(写真24、25)。ロゴの中には水族園の生物達が12種類描かれ、毎月のイベントの告知などで使われています(写真26)。
人気の水槽をいくつか案内していただきました。中でも筆者が驚いたのは、巨大海藻ジャイアントケルプの水槽です。解説のパネルによると、大きくなると長さが40m以上になるそうです(写真27、28)。海の中の林のようでもあり、林の中は魚の隠れ場所になっているそうです。
また、定期刊行物「SEA LIFE NEWS」は、水族園の展示生物についての情報や、ふだんはなかなかお伝えできない内容を隔月でお知らせしています(写真29、30)。Vol.77ではジャイアントケルプが紹介されています。
「浮遊生物」の水槽では、水の中で光るクラゲを見ることができました。水槽に掲示されたパネルを見てさらに知識を深めることができます(写真31〜33)。
レストランの外側の壁面は、葛西臨海水族園の歩みがわかる年表が掲示されていました(写真34)。30年という歴史は、オープン当時に訪れたカップルが子どもや孫を連れて家族連れで訪れる場所になっているわけで、多くの人たちに愛され続けている水族園の大切さを感じずにはいられません。
見所いっぱいの水族園
案内いただきながら巡る葛西臨海水族園は、ほんとうに見所がいっぱいでした。
冬の間は4種、夏には2種のペンギンを屋外で見ることができます。水中を泳ぐ姿も見ることができます(写真35、36)。
「伊豆七島の海」の水槽では、色鮮やかな珊瑚や魚達をじっくり眺めることができます(写真37)。
「渚の生物」の水槽には、浅い岩場の潮だまりを再現しています。案内いただいて気が付いたのですが、岩の上にはたくさんのウメボシイソギンチャクが体を寄せ合うように密集しています。体をすぼめるとウメボシのように見えますね(写真38)。
売店ではお買い物ができます。ここでしか手に入れることができないオリジナルグッズがいっぱいです(写真39、40)。
最後に。マグロの水槽で、『特大!クロマグロ194mmシール』と一緒に記念撮影しました(写真41)。
今回はクイズラリーの記念品『特大!クロマグロ194mmシール』がきっかけで、葛西臨海水族園を取材させていただきました。水族園はふだんは見ることができない水中の生き物を見ることができる貴重な施設です。同時に来園者に豊かな思い出をもたらすものだということを改めて感じました。園内では飼育係や教育普及係のスタッフのお話を聞くことで、多くの知識が得られることも実感しました。みさなんも、ぜひぜひ訪れてみてください。
では、次回をお楽しみに!
葛西臨海水族園
住所:〒134-8587 東京都江戸川区臨海町6-2-3
TEL:03-3869-5152(代)
ホームページ:https://www.tokyo-zoo.net/zoo/kasai/