平和紙業株式会社
閑話休題 ―書籍の行方―
毎年この時期に、出版界における紙書籍と電子書籍についての、出版市場規模が発表されます。
2025年における出版の中で、紙媒体(紙書籍+紙雑誌)は、相変わらず減少を続けています。
特筆すべきは、2025年紙媒体(紙書籍+紙雑誌)の推定売上額が、1兆円を割り込むこととなった点です(表1)。

(表1)紙媒体(紙書籍+紙雑誌)の合計が、1兆円を割り込みました。
トレンドでは、コロナ禍の巣ごもり需要によって、一旦回復した時期もありましたが、全体的には減少傾向にあります。
このトレンドの中では、ベストセラーなどのヒット作にめぐまれない限り、減少傾向は、続くものと思われます。
紙媒体(紙書籍+紙雑誌)は、1976年に1兆円を超え、1996年にピークの2兆6千億円に達しました。その後徐々に減少を続け、ついに1兆円を割り込むこととなったのです。
紙書籍は前年より2億円プラスの5,939億円(昨年は3,937億円)でしたが、雑誌は前年比10.0%減の3,708億円となりました。
紙書籍は、「国宝」などのベストセラーが相次いだことが好調につながり、前年プラスでしたが、紙雑誌は、月刊誌、週刊誌共に前年を下回り、月刊誌は前年比8.6%減の3,195億円、週刊誌は前年比17.9%減の513億円となりました。
特に週刊誌は返品率が初めて5割を超え、かつてない落ち込みとなりました。また、コミックに関しても、24年に大ヒット作が相次いで完結し、それにかわる大きなヒットが無かったことや、デジタルソフトへの移行が進み、紙の雑誌の大きな減少につながっています。
これに対して、電子出版の市場は、前年比2.7%増の5,815億円で、2011年に前年を下回った以外は、これまで前年比プラスを続けています。
ただし、電子コミックは、前年比2.9%増ではありますが、これまでの進捗率が鈍化の傾向にあります。
電子出版の中でも、コミックの占める割合が大きいため、今後ヒット作などに見放されれば、電子出版の進捗も鈍化の可能性が出てきます(グラフ1参照)。

(グラフ1)紙媒体が右肩下がりのトレンドであるのに対し、電子媒体が右肩上がりを続けています。
但し、電子媒体も増加が緩やかになってきています。
こうした、紙媒体(紙書籍+紙雑誌)の今後は、紙雑誌の減少に歯止めがかからず、ますます減少の一途を辿ると思われます。紙の書籍は、コンスタントな需要と言うよりは、ヒット作やベストセラーの有無に大きく左右されることになります。
また、紙の書籍としてはBook○○のような二次店での取り扱いや、メ〇カ〇などでの取り扱いが増加すると、書店での販売が減少していきます。つまり、1冊本を購入すれば、その本が複数人の手に渡ることになるからです。書籍そのものは、多くの人に読まれることになりますが、最初に本を購入する人の総数が減少するという、ジレンマに行き着くこととなります。
電子媒体と紙媒体を、10年前と比較をしてみると2015年対2025年では、電子媒体は387.2%、紙媒体(紙書籍+紙雑誌)は、63.4%と、大きく引き離されているのがわかります。
とは言え、現段階では、推定売上金額自体は、電子媒体5,815億円に対し、紙媒体9,647億円ですので、現段階では、まだ紙媒体の方が上回っていますが、現在のトレンドが続けば、いずれはこの構図は逆転する可能性があります(表2)。

(表2)10年前との比較をすると、紙媒体の減少が顕著で、10年前比で、62~65%程度で推移しています。
電子媒体も10年前比で見れば、2022年から10年前比に減少の傾向が見られます。
とは言え、金額全体では増加のトレンドは変わりません。
書籍に限らず、紙媒体が電子媒体に移行を続けているのは、街中を見回しても分かります。これまであちらこちらに貼られていたポスターは、サイネージへ、飲食店では紙のメニューからQRコードへ、交通の面では切符からICカードへ、各種明細書はメールへと移行を続けています。
こうした世の中の流れは、逆回転することはまずあり得ないことですので、ますますこの傾向は強まるものと思われます。つまり、書籍の動向は、こうした世の中の流れを反映しているものと言っても過言ではないのでは、ないでしょうか。
紙媒体の縮小によって、紙を製造する製紙メーカーや、紙を使う印刷業界、そして製本・加工業界と、裾野の広い紙業界全体に、今後大きな影響を与えるものになってきます。
明治以降、殖産興業の一環として誕生した製紙産業も、高度成長期の大量生産大量消費の時代を経て、現在では規模縮小による経営合理化へと進みつつあります。
印刷業界もWebコンテンツの開発に乗り出し、経営多角化を目指しています。
凸版印刷も、「印刷」の文字を外し、「TOPPAN」となり、印刷主体の業態から、多角化した業態への転換を図っています。
どんな産業でも、一旦衰退すると、再興は難しいものです。紙に関わる私たちは、紙とどう関わっていくかを、考え直す時期に来ているのかもしれません。
同時に、紙の魅力を伝え続けていく事も私たちの使命でもあります。
情報伝達メディアから脱却し、未知なる紙の可能性について、今一度見つめ直していきたいと思います。
(表1)紙媒体(紙書籍+紙雑誌)の合計が、1兆円を割り込みました。
トレンドでは、コロナ禍の巣ごもり需要によって、一旦回復した時期もありましたが、全体的には減少傾向にあります。
このトレンドの中では、ベストセラーなどのヒット作にめぐまれない限り、減少傾向は、続くものと思われます。

