平和紙業株式会社
巡る紙 ―その2―
前回、江戸時代の紙のリサイクルについて書かせていただきましたが、現代の紙のリサイクルはどのようになっているのでしょうか。
一つの指標となるのが、「古紙の回収率」と、「古紙の利用率」です。
「古紙の回収率」の計算方法は、以下の通りです。
紙・板紙の払い出し重量と、紙・板紙の輸入重量を足したものから紙・板紙の輸出重量を差し引いた重量が、紙・板紙の国内消費重量として表されます。
そして、集められた古紙の入荷重量と古紙の輸出重量と、古紙パルプの重量を足したものから、古紙の輸入重量を差し引いたものが、古紙の回収重量として表されます。
この古紙の回収重量を、紙・板紙の国内消費重量で割ったものが、古紙の利用率として表されます。
ザックリ言えば、国内で使用した古紙の重量を、国内の市場に出た紙・板紙の重量を割ったものです。
しかし、ここには少し現実とは少しズレがあります。
それは、国内の市場に出た紙や板紙が、その年のうちに全て消費され、回収されるということは、現実的にはあり得ないからです。市場に出回った紙や板紙が製品化され、私たちの手元に届きますが、製品すべてが手元に届くわけではありません。手元まで届く時間、手元で使われる時間、中には保管され続けるものなど、様々な過程を経て、使われなくなったものが、回収されるという行程を踏みます。
市場に紙や板紙は出回りますが、その紙や板紙が使用されて、回収されるまでにはそれなりの時間が必要と言うことです。
従って、単年でこの回収率を見極めることは難しいということになり、複数年の統計的な判断が必要になります。
2014年から2024年までの10年間の古紙回収率は、概ね80%前後で推移しています(図1)。
市場に出る紙・板紙の中には、各家庭などに保管されてしまう本や雑誌などもあり、物理的に回収不能なトイレットペーパーやティッシュペーパーなども含まれていることを考えれば、この数字を見る限り、日本での古紙回収率は、平均して高い水準にあると言えます。

(図1)10年間の古紙回収率、利用率の推移です。
コロナ禍の2020年は、紙・板紙の生産量の減少した影響もあり、数字上回収率が増加していますが、おしなべて回収率はこの10年間安定的に80%前後で推移しています。
また、利用率は、この10年間微増の状態を続け、10年前に比べ、約3%の増加となっています。
回収率と同時に、回収された古紙が、利用されなければ意味がありません。この指標となるのが「古紙の利用率」です。
古紙の利用率は、古紙、古紙パルプの合計重量を、紙・板紙を生産する際に使われた原料となる、パルプ、古紙、古紙パルプ、その他の繊維原料の合計で割ったものです。
回収率の様に、紙・板紙として市場出た、生産重量をベースとするのではなく、紙・板紙を生産するために使われた原材料の重量をベースとしています。
従って、回収率と利用率は、同じベースではありませんが、生産に必要な原材料の中の古紙や古紙パルプの割合を示すものとなります。
そのため、この利用率は、単年単位でも判断が可能です。
こちらも2014年から2024年までの10年間で、利用率は63%台から、66%台へと上昇してきています(図1)。
古紙の回収率が横ばいで推移する中、利用率は若干上昇傾向にあるということは、回収された古紙が、再利用される割合が増えたことを意味します。
環境問題が大きく取り上げられ始めた1970年代には、古紙の回収率は40%弱の水準でしたが、直近では81.7%へと高い水準まで引き上げられました(図2)。
これは、環境問題・ごみ減量施策と集団回収・行政の資源回収拡大等を経て、古紙を出してくれる皆さまのおかげでと言えるでしょう。

(図2)古紙の回収率は、1970年代から現在まで、増減はあるものの、着実に増加しているのが見て取れます。
回収率の80%台は、世界的に見ても高い数字と言えます。これは、家庭や企業など、分別、回収のシステムが整えられている成果だと言えます。
また、利用率は、1970年当時は34%程度であったものが、直近では、66.6%にまで引き上げられました(図3)。利用率の増加は、日本が世界に誇る「分別」によって品質の高い古紙(製紙原料)を維持し、古紙を製紙原料に作り上げる古紙問屋やその製紙原料を使いこなす製紙会社の努力によるものでもあります。

(図3)古紙の利用率は、1970年代34%程度だったものが、現在では66%にまで引き上げられ、回収した古紙が、再循環していることを表しています。
今後も循環型社会を目指して、私たち一人一人の意識を高めていく必要があります。
回収率、利用率の推移は、紙のリサイクルの実情を表すものでもあります。
日々の暮らしの中で、分別や回収協力など、私たちにできることを、もう一度見直してみたいものです。
「捨てればゴミ、使えば資源」です。
(図1)10年間の古紙回収率、利用率の推移です。
コロナ禍の2020年は、紙・板紙の生産量の減少した影響もあり、数字上回収率が増加していますが、おしなべて回収率はこの10年間安定的に80%前後で推移しています。
また、利用率は、この10年間微増の状態を続け、10年前に比べ、約3%の増加となっています。
(図2)古紙の回収率は、1970年代から現在まで、増減はあるものの、着実に増加しているのが見て取れます。
回収率の80%台は、世界的に見ても高い数字と言えます。これは、家庭や企業など、分別、回収のシステムが整えられている成果だと言えます。

