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生田信一(ファー・インク)
リトルブックレーベルのカードを作成する

リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

今回の活版トライアルは、グラフィックデザイナー 小熊千佳子さんにご協力いただきました。小熊さんは、印刷や加工についての深い知識をお持ちで、これまでにも印刷・加工技術を意欲的に取り入れた作品を多数手がけておられます。

今回の連載コラムは、小熊千佳子さんが手がけた活版印刷のカードデザインと製版・印刷のメーキングを紹介します。テーマは小熊さんが立ち上げた「YOU ARE HERE」のリトルブックレーベルのカードです。カードの表面はレーベル名をタイポグラフィで力強く表現し、シルバーの1色刷りで印刷されています。裏面はピンクとシルバーの2色刷りで、幾何学形態の立体物の写真を画像処理し、活版印刷で仕上げたグラフィックになっています。

写真のような連続階調のイメージは、通常は製版の出力段階で網点に変換して白黒の網点画像に変換します。今回のトライアルでは、デザイナーである小熊さんご自身がPhotoshopを使って写真を2階調に変換しました。変換方法はいくつかの方法が選べますが、今回は「誤差拡散法(ディザ)」を試みました。さらに、通常の製版時の網点変換も行い、2種類の方法で印刷を試みました。どのような違いが表れるか、じっくりご覧ください。

リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

アートブック「YOU ARE HERE」のカードを作る

小熊さんが手掛けておられるリトルブックレーベルの「YOU ARE HERE」は、“あなたは今、ここに居ますよ”というメッセージが込められています。さまざまな人達の「今」をビジュアルで切り取り、一冊の本に凝縮するというコンセプトのアートブックです。2017年に第1作「PROFILE」、第2作「THE DISHES」を上梓されました(写真1〜4)。

(写真1)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真1)

(写真2)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真2)
(写真1、2)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。箔押し加工:コスモテック

(写真3)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真3)

(写真4)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真4)
(写真3、4)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。

小熊さんの最近のお仕事を少し紹介しましょう。まず、ご自身のYOU ARE HEREレーベルの名刺です(写真5、6)。表裏とも箔押しで刷られ、ホログラム箔に光が反射し、さまざまな色が表れます。手にした人の動きに応じて表情が変わるので、「あなたは今ここに居ますよ(YOU ARE HERE)」と問いかけられているような気持ちになります。楽しく、美しいカードです。

(写真5)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてシルバーの箔1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真5)

(写真6)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてシルバーの箔1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真6)
(写真5、6)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてホログラム箔(HK015シルバー、村田金箔製)1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。箔押し加工:コスモテック

2018年5月に上梓された「はかれないものをはかる」(工藤あゆみ著、青幻舎)は、49の「はかれないもの」を詩とユーモラスな絵で紡ぐ大人の絵本で、小熊さんが装丁・デザインを担当されています(写真7)。カバーはトレーシングペーパーを巻いた二重構造になっています。カバーに表れる分度器の定規は本に巻かれたトレーシングペーパーではなく、本体の表紙側に印刷されているので、実際には定規を手にして測ることができません。本のコンセプトから派生した意表を突くおもしろいギミックです。本文ページのイラストやテキストも素敵です。

(写真7)「はかれないものをはかる」工藤あゆみ著、青幻舎刊。製本はコデックス装でページの開きがよい。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真7)「はかれないものをはかる」工藤あゆみ著、青幻舎刊。製本はコデックス装でページの開きがよい。詳細はコチラ

(写真1)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真1)
(写真1、2)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。箔押し加工:コスモテック

(写真2)「YAH 001 PROFILE YOU ARE HERE」。PROFILEは「横顔」の意味。板紙を使ったドイツ装の表紙はゴルードの箔押しのみで刷られています。本文ページはモノクロ印刷で、ページをめくると表紙の女性が目を閉じているシーンが表れます。さらにページをめくるとさまざまな人達の横顔が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真2)

(写真3)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真3)
(写真3、4)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。

(写真4)「YAH 002 THE DISHES YOU ARE HERE」。お皿に乗った料理が幾何学図形で表現されています。本文ページはCMYKの4色プロセスカラーですが色数を限定した実験的な配色になっています。配色はCMYKのカラーをなるべく100%のベタで使用し、掛け合わせで色を表現する場合はベタ同士の掛け合わせで色指定、プロセスインキの発色を最大限に高めています。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真4)

(写真5)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてシルバーの箔1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真5)
(写真5、6)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてホログラム箔(HK015シルバー、村田金箔製)1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。箔押し加工:コスモテック

(写真6)小熊さん個人の名刺。右の写真はさまざまな色で刷られているように見えますが、すべてシルバーの箔1色です。光の反射でさまざまな色が表れます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真6)

(写真7)「はかれないものをはかる」工藤あゆみ著、青幻舎刊。製本はコデックス装でページの開きがよい。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真7)「はかれないものをはかる」工藤あゆみ著、青幻舎刊。製本はコデックス装でページの開きがよい。詳細はコチラ

カードデザインと印刷入稿データの作成

小熊さんが今回手がけられた名刺のデザインを見ていきましょう。表面はレーベルのロゴを配置し、特色のシルバーで刷ります。裏面は、金属の立体模型を撮影した写真を配置し、これをシルバーとピンクの2色で刷ります。

写真データはグレースケールの画像が元になっています。しかし活版印刷では、連続したグレースケールの階調表現は、白黒の網点に置き換えて印刷します。以前のコラム「やさしく、やわらかなタッチの活版印刷」で紹介したように、Photoshopでグレースケール画像をモノクロ2階調モードに変換することで、デザイナー自身で網点形状をコントロールできます。

前のコラムでは変換方法として「ハーフトーンスクリーン」を使用する方法を紹介しました。ハーフトーンスクリーンは連続した階調を小さなドット(網点)に変換します。ドットは一定の角度で規則正しく並びます。人物写真などではこの方法が適していますが、80線の線数は粗いので網点は肉眼で確認できるくらいの大きさになります。

私は入稿された写真を単純に網点変換するのではなく、別の方法を試しました。Photoshopでは変換の種類として5種類の選択肢があります(写真8)。いろいろ試してみて、今回は「誤差確認法(ディザ)」による変換が、写真の質感を再現する一番良い方法に思えました。

(写真8)Photoshopでグレースケール画像をモノクロ2階調に変換する際に現れるダイアログ。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真8)Photoshopでグレースケール画像をモノクロ2階調に変換する際に現れるダイアログ。

画像の立体模型は多くが金属素材で、独特な質感が表れています。しかしながら球体のみが発泡スチロールの素材であり、質感が他のものと違っていました。私は小熊さんにモノクロ2階調に変換したテストを報告し、最終的には小熊さんご自身がコントロールして2階調に変換する作業をお願いしました。

印刷をお願いするCAPPAN STUDIOさんに印刷入稿データを送り確認してもらったところ、「よい機会なので、ディザで変換したものと通常の網点に変換したものの両方で刷って、違いを比較してみてはどうか」との提案をいただきました。このことを小熊さんに伝え了承いただき、最終的には2種類のデータを作成することになりました(写真9〜11)。

(写真9)グレースケール画像をディザで変換した入稿データ。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真9)グレースケール画像をディザで変換した入稿データ。

(写真10)グレースケール画像のままの入稿データ。こちらはネガフィルム出力時、80線の網点に変換されます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真10)グレースケール画像のままの入稿データ。こちらはネガフィルム出力時、80線の網点に変換されます。

(写真11)最終的な製版入稿データ。写真データは2種類作成、そのほかの版は共通です。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真11)最終的な製版入稿データ。写真データは2種類作成、そのほかの版は共通です。

出力前のデータ段階で、画像の一部を拡大して比較してみましょう(写真12、13)。

(写真12)ディザ画像拡大。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真12)ディザ画像拡大。

(写真13)グレースケール画像拡大。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真13)グレースケール画像拡大。

印刷版は亜鉛版を使用しました。細かな網点も凸状になって表れます(写真14)。

(写真14)表面は1版で、シルバーで刷ります。裏面は絵柄を2版に分け、シルバーとピンクで刷り分けます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真14)表面は1版で、シルバーで刷ります。裏面は絵柄を2版に分け、シルバーとピンクで刷り分けます。

(写真8)Photoshopでグレースケール画像をモノクロ2階調に変換する際に現れるダイアログ。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真8)Photoshopでグレースケール画像をモノクロ2階調に変換する際に現れるダイアログ。

(写真9)グレースケール画像をディザで変換した入稿データ。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真9)グレースケール画像をディザで変換した入稿データ。

(写真10)グレースケール画像のままの入稿データ。こちらはネガフィルム出力時、80線の網点に変換されます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真10)グレースケール画像のままの入稿データ。こちらはネガフィルム出力時、80線の網点に変換されます。

(写真11)最終的な製版入稿データ。写真データは2種類作成、そのほかの版は共通です。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真11)最終的な製版入稿データ。写真データは2種類作成、そのほかの版は共通です。

(写真12)ディザ画像拡大。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真12)ディザ画像拡大。
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(写真13)グレースケール画像拡大。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真13)グレースケール画像拡大。
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(写真14)表面は1版で、シルバーで刷ります。裏面は絵柄を2版に分け、シルバーとピンクで刷り分けます。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真14)表面は1版で、シルバーで刷ります。裏面は絵柄を2版に分け、シルバーとピンクで刷り分けます。
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活版トライアルの実演風景

今回の活版トライアルは、2018年4月にオープンした竹尾淀屋橋見本帖に設置されたCAPPAN STUDIOの印刷機(プラテンT型)を使って店頭でデモンストレーションを行うことにしました。お店に設置された印刷機はガラス張りになっているので、来店したお客様が印刷している様子を見学することができます(写真15〜18)。

小熊さんにお願いし、プロジェクトの詳細を紹介するパネルを作成していただき、活版印刷のデモンストレーションとして掲示させていただきました(写真19)。

(写真15)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真15)

(写真16)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真16)
(写真15、16)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。

(写真17)印刷デモンストレーションの風景。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真17)

(写真18)印刷デモンストレーションの風景。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真18)
(写真17、18)印刷デモンストレーションの風景。

(写真19)活版トライアルの解説ボード。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真19)活版トライアルの解説ボード。

(写真15)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真15)

(写真16)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真16)
(写真15、16)竹尾淀屋橋見本帖の店内。落ち着いた雰囲気の中で、紙を吟味し購入することができます。土日は活版印刷の相談を承っています(平日の相談は事前に予約が必要)。

(写真17)印刷デモンストレーションの風景。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真17)
(写真17、18)印刷デモンストレーションの風景。

(写真18)印刷デモンストレーションの風景。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真18)

(写真19)活版トライアルの解説ボード。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真19)活版トライアルの解説ボード。

印刷結果を比較する

カードの表面はレーベルのロゴを大きく配置した構図で力強い仕上がりになっています。用紙は気包紙U、ディープラフ、L判Y目/255kgを指定しました。気包紙は針葉樹パルプを60%使用しているため、触ってみると強度があります。しかしながら感触はしっとりしていて優しい印象です。

今回のトライアルでは、印圧やインキ量の微調整はCAPPAN STUDIOさんにお任せし、細かなドットの再現をコントロールしていただきました。表面の印刷仕上がりは(写真20〜22)を参照ください。

(写真20)亜鉛版の表面。レーベルのロゴがシャープに浮き出ている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真20)亜鉛版の表面。レーベルのロゴがシャープに浮き出ている。

(写真21)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真21)

(写真22)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真22)
(写真21、22)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。

裏面のピンクの印刷は(写真23〜25)を参照ください。

ピンクの版を刷り終え、続けて2色目を印刷したところ、インキの乾燥が不十分で、別のカードに裏写りしてしまうことが判明しました。少し乾燥時間が必要であったため、シルバーのイメージは後日刷ることになりました。

(写真23)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真23)

(写真24)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真24)

(写真25)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真25)
(写真23〜25)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。

後日作業して仕上げた結果です。ディザによる2階調化と80線網点出力の場合で印刷した場合とで比較してみましょう(写真26〜32)。

どちらがよいかは好みが分かれるところだと思います。三角錐の立体は素材が金属です。立体の各面はフラットであるため濃度がそれぞれ大きく異なり、さらに金属の質感も表れています。一方、球体は素材が発泡スチロールであることと、表面が曲面であるため濃淡がなめらかに変化しています。この2つを比べると、ディザと80線の網点出力のどちらがより好ましいかを判断する手がかりになると思います。

(写真26)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真26)

(写真27)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真27)

(写真28)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真28)

(写真29)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真29)
(写真26〜29)ディザによる2階調化(一部を拡大)。

(写真30)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真30)

(写真31)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真31)

(写真32)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真32)
(写真30〜32)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。

限定部数ですが刷りあがった2種類を並べて比較していただけるように台紙にセットし、希望されるお客様に配布しました(写真33〜35)。

(写真33)ディザによる2階調化。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真33)ディザによる2階調化。

(写真34)グレースケール画像を80線で網点出力。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真34)グレースケール画像を80線で網点出力。

(写真35)お客様に配布された印刷サンプル。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真35)お客様に配布された印刷サンプル。

 

今回の活版トライアルでは、グレースケールの画像をモノクロ2階調の画像に変換する2つの方法を試しました。網点の形状で印刷仕上がりの表情はずいぶん変わることが実感できたと思います。

写真以外の原稿として、筆やチョーク、パステルなどの描画素材で描かれた原稿もあります。さまざまなタッチで描かれたイラストの原稿では、細部をどのように活版印刷で再現するかが表現上のポイントになります。Illustratorであれば、モノクロの線画原稿をスキャンしオートトレースでパスに変換する方法も有効でしょう。

注意点としては、網点が小さくなりすぎると、製版時に網点が飛んでしまう場合があることを知っておく必要があります。また、網点がまばらで点在した状態は、網点部分の版としての強度が弱くなる恐れもあります。網点がある程度密集していれば、浮き上がった凸版の土台が安定し、版の強度も保たれます。

皆さんご存知のように、鉛でできた金属活字は、強い圧をかけて印刷を繰り返すと、文字が磨耗してしまいます。細かな精度が求められる印刷物を大量に刷る場合は、版の強度も考慮して素材を選ぶ必要があるでしょう。

では、次回をお楽しみに。

※以下、写真をクリックすると拡大表示します

(写真20)亜鉛版の表面。レーベルのロゴがシャープに浮き出ている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真20)亜鉛版の表面。レーベルのロゴがシャープに浮き出ている。

(写真21)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真21)
(写真21、22)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。

(写真22)表面、シルバー(PANTONE 877U)で印刷。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真22)

(写真23)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真23)

(写真24)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真24)

(写真23〜25)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。

(写真25)亜鉛版の裏面。ピンク(PANTONE 196U)で刷られている。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真25)

(写真26)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真26)

(写真27)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真27)

(写真28)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真28)
(写真26〜29)ディザによる2階調化(一部を拡大)。

(写真29)ディザによる2階調化(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真29)

(写真30)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真30)

(写真31)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真31)

(写真30〜32)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。

(写真32)グレースケール画像を80線で網点出力(一部を拡大)。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真32)

(写真33)ディザによる2階調化。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真33)ディザによる2階調化。

(写真34)グレースケール画像を80線で網点出力。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真34)グレースケール画像を80線で網点出力。

(写真35)お客様に配布された印刷サンプル。 | リトルブックレーベルのカードを作成する - 生田信一(ファー・インク) | 活版印刷研究所

(写真35)お客様に配布された印刷サンプル。

プロフィール

小熊千佳子 / CHIKAKO OGUMA

小熊千佳子 / CHIKAKO OGUMA
アートディレクター / グラフィックデザイナー。日本大学藝術学部絵画科油画専攻卒業。2011年よりフリーランス。印刷・加工ギーク。グラフィックデザインを基軸に、ブックデザイン、ブランディング、空間デザイン、イラストレーションなど幅広く手掛ける。リトルブックレーベルYOU ARE HEREを主宰。主な受賞歴:GRAPHIS POSTER ANNUAL 2015 / 2016 GOLD、2017 SILVER、2018 PLATINUM、全国カレンダー展金賞文部科学大臣賞他多数。ADP(Asia Design Commynication Platform)会員。

小熊千佳子 / CHIKAKO OGUMA