白石奈都子
街の言葉
4月にミラノに約1週間滞在した後に休暇を兼ねてフィレンツェを訪れた。
紙も好きだが言葉と文字も好きなので、旅先では流れてくる土地の言葉を聞きながら、その生活の中で生きている文字や紙を見ながら歩くのが楽しみの一つである。
ミラノもフィレンツェも洗練されたデザインと歴史的な文化や建造物が融合した街で、特にフィレンツェでは石造りの建物に囲まれた小道は趣きがある。湿度の高い日本や東南アジアにこんな所があったら、きっと苔の壁とグリーンカーペットが敷かれるだろうな、と想像した。
ミラノで毎年開催されている「Millano Design Week」という各国のデザインやアートが集うイベントの時期だったこともあり、街は色彩豊かなカリグラフィーやタイポグラフィで彩られていた。イタリア語で書かれた落書きなのか広告なのかわからないものも、クリムゾンのような赤が不思議と街並みに馴染んでいるように感じた。(写真2)
墨文化の日本では、文字は黒という感覚が強い。
文字を彩る、という面白さを改めて感じた。
以前訪れたミャンマーでの文字の記憶は、やはり街並みの中にあった。
ミャンマーの公用語であるビルマ語(ミャンマー語)は弧や円を連ねたような文字で、33文字の基本字母とそれらを重ねたり組み合わせ、更に母音や発音記号を組み合わせて構成されている。(写真3)
ミャンマーの人も見逃してしまいそうなくらい一体化していた。
因みに、弧や円がきれいな「まる」で書けると「美文字」となるらしい。
文字の美しさは、国によっても違う。