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アミリョウコ
日本語の活字をオアハカで印刷するプロジェクト②

Octubre(10月)

オラー、こんにちは!オアハカよりアミリョウコです。今月のコラムは、カレンダーづくりの続きです。

私は来年に間に合えばいいと気楽に考えていたのですが、9月の中頃から日本に一時帰国をすることになっていることを伝えると、

「そうしたら、日本行きに間に合うように作らないと!」

と逆にしりをたたかれることになりました。

メヒコは基本的にはのんびりとしていて物事も遅々として進まないことが多いのですが、何かを具体的にするとなると日本では考えられないくらいのスピードでとんとんと話が進められていく時があります。

この時がまさにそれ、という感じで話をどんどん詰めていきます。

写真1 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

「せっかくだから、活版印刷と版画をコラボレーションさせよう。絵はお前が担当!」

とマエストロ。カレンダーの出来上がりイメージはこの写真のように「大きな絵+カレンダー部分」にすることになりましたが、ここで一つ問題が。

カレンダーがイメージの下に来てしまうとその月が終わるとそれをちぎらなければなりません。しかし、せっかく活版印刷したカレンダーをちぎってしまうなんてもったいない気がします。

マエストロは、「ちぎりたくない人は、クリップか何かで止めて使うから大丈夫」と言いますが、それでは3月以降見た目がよくなくなってしまう……。私は何かを作るときはやはり「実際に便利に使える」つまり実用性を重要視するので、この「紙をちぎりたくないけどカレンダーとしても十分使いたい」という相反する気持ちの間で迷いました。

結果、カレンダー部分を上のほうに持ってきてリングを付けてめくれるようにするということに落ち着きました。これなら、1年間終わった後も最初の状態で保存することができます。

写真2 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

隣で活字を組むのを見ていましたが、先月も書いた通り日本の活字と海外の活字は規格が違います。ほんの少し、されどこの少しの隙間を埋めないと活字が抜け落ちてしまいます。高さを合わせるために微調整が続きます。

組み終わった後も機械にセットする前に何度も活字が抜け落ちないか入念なチェックをします。

写真3 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

マエストロは活字を組むときに、行ごと、あるいは情報の塊ごとに違う字体を選びますが、これが本当に長年の経験というか技だなぁと感心します。ただ範囲内に収まればいいというのではなく、印刷されたときの見栄えや文字と文字の相性、大きさのバランスなどを活字を選びながらすべて計算されています。

この作業はつくづくパソコンでデザインするのとは違うと見せつけられるとともに、調整の中で足される「余白」の美しさを感じられるものです。

文字を組まれて印刷されたものから職人さんの息遣いが聞こえてきそうなのはそういうわけかもしれません。

写真4 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真5 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真6 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

せっかくなので面白い枠を選ばせてもらいました。にやにやした悪魔の上半身と下半身に分かれていて、その間に文字列を入れられるというものです。

印刷されたものを見ると、アルファベットの活字と日本語の活字があって普段アルファベットの者ばかりを見ているのでなんだか不思議な感じがします。マエストロも、漢字が読めないけれど刷り上がった日本語の文字ににやり。

写真7 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

表紙はこんな風に刷り上がりました。版画の部分は、いつもエプロンをして働くマエストロが活字の箱をを持っている様子です。日本語ではこんなに大きな活字はありませんがアルファベット圏の国では木の大きな活字があります。大きな活字は迫力満点ですね。

もともとは、スペインのMedia Vacaという出版社のためにマエストロが刷ったポスターの文言がもとになっているのですが“La vivda es tan corta”は「人生は短い」という意味です。

いろいろ悩んだり考えたりすることもありますが、時間はいつも過ぎています。普段はそういうことをあまり意識しなかったりするのですが、日本に一時帰国した時に久しぶりに会う姪っ子や友達の子供などを見ていると、時間の流れが容赦なく早いことを感じます。立ち止まるのはもったいないとつくづく思います。それならば来年の干支いのししにちなんで「猪突猛進」するくらい一生懸命いかないとな、という気持ちも込めました。

写真8 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真9 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

工房には本当にたくさんの活字の種類があって全部は無理でもできるだけたくさん使ってみたい!(印刷された感じを見てみたい)ということで、表紙にはこれでもかというくらい「CALENDARIO(カレンダー)」の文字を躍らせることにしました。

配置のアイディアを持っていたのですが、

「うーん、イマイチ!」

と却下され、これがいいんじゃないか、いや、こうしてみようか、と相談しながらデザインが決まりました。

写真10 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

パペルアルバネネという、トレーシングペーパーのような透ける紙に印刷したのですが、インクの存在感がめちゃくちゃかっこいいです。

結婚式やキンセアニエラ(女の子の15歳のお祝い)の招待状に昔はよく使われていた紙だそうです。確かにエレガントな雰囲気です!

写真11 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

全部刷り上がったあとは、近所の文房具屋さんで製本してもらいました。さっきはエレガントと形容した薄紙の表紙ですが、透けて見える黄色の紙と版画で書いたイラストのおかげでポップな仕上がりになりました。

写真12 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

このカレンダーづくりを通して、「時間」のことを考えさせられました。大量に物が生産される時代だからこそ、ものがどういう工程を経て出来上がるのかについてじっくり考えることは少ないかもしれません。活版印刷だって、もともとは早くたくさん印刷するために発明されたものですが、デジタルがやってきてその存在が逆に手間と時間をかけることについて考えさせてくれるとは、なんだか不思議な現象です。

すでに家庭でもプリンタのボタンを押せば、あるいはマウスをクリックするだけでフルカラーで印刷ができる時代です。しかし時間と技術とそして何より愛情を込められて1枚ずつ印刷されたものを手に取って、改めてものをつくるということの大変さと楽しさをかみしめています。

マエストロが忙しい中日本行きに間に合わせてくれたこのカレンダー、日本では京都活版印刷所さんにてお取り扱いをしてもらっています。70部限定のシリアルナンバー付きです。興味のある方がいましたら、ぜひ足を運んでお手に取ってみてくださいね。オアハカの風を感じてもらえたらうれしいです。

それでは、また来月お会いしましょう!

写真1 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真2 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真3 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真4 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真5 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真6 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真7 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真8 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真9 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真10 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真11 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所

写真12 | 日本語の活字をオアハカで印刷する プロジェクト② - アミリョウコ | 活版印刷研究所