web-magazine
web-magazine

あみりょうこ
コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。

Junio(6月)

こんにちは。あみりょうこです。梅雨に入りました。久しぶりの日本の梅雨と夏に戦々恐々としています。メヒコも暑い時期は暑いのですが、私の住んでいたところは乾燥した空気だったので、影に入ると意外と大丈夫だったので、エアコンのない生活でも大丈夫でした。しかし、湿気が高くなり始めた日本。すでに暑いを連呼しながら、内心はドキドキしているのです。

さて、コラムは先月の続きです。

コチニージャのワークショップを受けて、コチニージャの本来の色、そしてライム汁などを1滴たらしただけでダイナミックに変化する魔法のような性質にすっかり魅了されてしまい、それに加えて、シルクスクリーンで刷ったらおもしろいかも、というアイディアですっかりと鼻息があらくなり、「インクをつくってみる」という実験に乗り出したのです。

(写真1) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真1)乾燥コチニージャ。

コチニージャを粉末にしたものを水で溶かして、絵具のように使ったり、あるいはその汁で煮て染色したりして色を定着させます。シルクスクリーン印刷では、小さな網目からスキージーで使ってインクを押し出して印刷するのですが、ある程度の粘度が必要です。つぶしただけでは虫なのでサラサラの粉にはなりません。また、色水をつくっただけでは網戸に水を通しているようなものなので、水分が全部出てしまいもちろん印刷することができません。

ということで、トロミをつけることを考えました。画家さんいわく、「メディウム(ものとものをつなぐ媒材)」があればインクができるとのこと。

つまり、すりつぶしたコチニージャの粉、あるいは高濃度で抽出した液体とメディウムをまぜてインクの粘度を持たせるというのです。

(写真2) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真2)

まずは、お茶のように色を煮出す作戦から始めました(写真2)。お茶パックにコチニージャを詰めて少量のお湯で温めました。

見る見るうちに水は赤く染まります。しかし、このままではしゃばしゃばすぎるので、思い切り煮詰めます。料理のソースのように煮詰めたらきっととろみが出るだろうと予想したのです。

(写真3) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真3)

並行して、タッパーの中でつけておいて色を出す方法も試すことにしました(写真3)。一番効率よく、いい感じでとろみがすでについた液体を得るのが目的です。

(写真4) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真4)

煮だしたり、あるいはひたすら待ったりと「濃い液」づくりを進めます。できた液体の色を様々な紙でどのような色が出るのか試してみました。(写真4)

洋紙だと少しすると色が変わったのに対して、和紙は液体の色のままの色が鮮やかに定着したので面白かったです(写真5〜7)。この渋い原色や、ライム汁の酸を混ぜて変化した鮮やかなオレンジ色がシルクスクリーンで印刷できたらめちゃくちゃかっこいいに違いないと、と胸は高鳴ります。

(写真5) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真5)

(写真6) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真6)

(写真7) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真7)

元となる色はできたので、次なる段階は「メディウム」探しです。

今までしたことのないことをするのは一苦労です。というのも、「メディウム」なるものがお店で一向に見当たらないのです。

メヒコの画材屋さんは、輸入の画材が結構多く並んでいます。紙にしても鉛筆にしても、外国製のものが多く、日本製の画材は質がいいので人気なのだそうです。カッターなんかは、大体どこもオルファを扱っていて「これ私の国のやつですねん!」と別に私自身がオルファをつくっているわけではないのですが、妙にうれしく誇らしいような気持ちになります。日本の文房具や道具は本当に素晴らしいです。海外でも高く認められ、日本の道具は憧れの存在です。

ということで、メディウムもメーカーの名前を言えばポンと出てくるでしょうと思って行ったのですが見当たらず、店員さんに聞いても「ない」と一言。

あれば簡単なのですが、ないと大変なのです。(それはどこの国でも一緒だと思いますが。)「どういうことをしたいのか」、「そのモノを使えばどういうことができるのか」、「どういう見た目か」、を全部説明してお店にあるものでそのようなことができそうなものを探し出してきてもらいます。

あるいは、メーカー名の発音がスペイン語では若干変わるのかも?といろんな発音を試みたり、手に取ることができいないショーケースに顔を近づけて「あれいけるかも?」「ボトルになんて書いてある?」「用途は?」と少ない情報から無理やり想像したり、逆に店員さんを質問攻めにします。

(写真8) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真8)

結局「多分、いける、かも……??」という限りなく確信がない状態で、おそるおそる買って帰り、祈るような気持ちでコチニージャと混ぜ合わせます。すると、なめらかな感じにはなるのですが、それ以上に粘度が上がる気配がありません。(写真8)

(写真9) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真9)

見た目は白くてメディウムっぽかったけど、どうやら用途が違ったみたいです。出来上がった液体は、「水よりも若干トロンとしているけど限りなく液体」という感じで想像しているいわゆるインクとはほど遠い代物でした。(写真9)

でも、せっかく時間をかけてああでもないこうでもないとつくったのです。試し刷りをしてみました。

(写真10) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真10)

色は、悪くないような……。(写真10)

(写真11) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真11)

こちらはライム汁を加えて色を変化させた方の液を使ったもの。(写真11)

インクのように紙に乗っているという感じになるにはやはり粘度が足りず変な刷り上がりです。そして、あんまり量も作らなかったのでいたるところがかすれて思うようなコチニージャの「インク」にはなりませんでした。

そしてやはり、煮て抽出しただけでは、色は濃いけれどしゃばしゃばで、水と変わらないので、この基となる液体ももう少し粉状にするとか工夫が必要だと思われました。

しかし、失敗をすることこそが実験の醍醐味、失敗した理由と、こうしたらいいのでは、という仮定がわいてきました。

1.もっと濃度の高い原液、あるいは粉状のものをつくる
→水の量を減らしてもっと煮詰めるといいのでは?
→煮詰めた後に、天日干しをして水分だけをさらに飛ばすといいのでは?

2.もっと別のメディウムがあるはず。(今回のは2個とも不本意。)
→違う画材屋をあたる

1日目では思い描いたようなコチニージャインクをつくることができませんでしたが、アイディアだけを残して実験を終わるわけにはいきません。ということで、帰国前、引っ越しの荷造りそっちのけで実験2日目に続くことになったのです……。

まだ、つづく。

(写真1) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真1)乾燥コチニージャ。

(写真2) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真2)

(写真3) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真3)

(写真4) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真4)

(写真5) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真5)

(写真6) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真6)

(写真7) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真7)

(写真8) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真8)

(写真9) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真9)

(写真10) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真10)

(写真11) | コチニージャをシルクスクリーンで刷りたい①、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真11)