平和紙業株式会社
機能のある紙(その4)
温暖化だの、異常気象だのと言いながらも、いつものように梅雨の季節はやってきました。
気温や湿度の変化で、体調を崩しやすくなるのもこの季節です。
みなさん体調管理にはくれぐれもお気を付けください。
そして、この時期は、紙のコンディションも悪くなります。
紙を構成する繊維が、水分を吸収することで紙全体が膨張し、「しわ」の原因となりやすいからです。また、紙全体が伸びることで、印刷の際の見当ずれも発生しやすくなります。
乾燥しすぎても、湿度が高すぎても、紙のコンディションは悪くなります。
植物という生物のDNAを受け継いでいるからこそのことですが、つくづく紙は生き物だと感じます。
紙が水分を吸収しやすいことを利用したのが、コースター用紙と呼ばれる紙です。
コップやグラスの下に敷いて、水分を吸収するあのコースターです。
冷たい飲み物が、グラス表面に結露を促し、水滴となってグラスを濡らします。
この水滴がグラスの底へと伝わり、テーブルや床を濡らすことになります。
そこで、グラスの下にコースターを置き、この水分を吸収することで、テーブルや床を濡らさずに済むことになります。
水分を吸収し易くするために、一般的には、紙の密度を下げ、繊維と繊維の間に空隙を設け、より多くの水分を紙の中に留められるように作られています。
また、紙の表面は、水分の吸収力を高めるため、一般の紙によく施される、印刷適性を上げるための塗工などはしないのが普通です。
とは言え、無地のコースターは少し味気ないもの。
お店の名前や、ロゴを印刷したいと思うのは当たり前のことでしょう。
しかし、通常のオフセット印刷では、厚手のコースター用紙を印刷することが難しかったり、紙の性質上、水分を吸収し易いということは、見当ずれなどを起こしやすく、シルク印刷でも多色刷りなどでは、シビアな柄だと。紙伸びにより見当が合わなくなったりしやすいので、注意が必要です。
また、インキを吸ってしまうので、発色はあまり良くないのが現状ですから、あまりクオリティーを追求するものではありませんでした。
そうした中、紙の密度が低いということは、紙全体が柔らかいということですから、その柔らかさを活かして、活版印刷で印刷すると、適度に印刷面が凹み、風合いのある印刷ができますから、コースター以外にも名刺やタグなど、活用の幅は広がります。
また、箔押しなど施すと一層豪華な感じを演出できます。
最近では厚い紙を印刷するUV印刷機が増え、インキが紙に浸透する前にインキを硬化させることができることから、こうした少し扱いにくい紙にも、ある程度のクオリティーのあるビジュアルが印刷できるようになってきました。
また、コースター用紙自体も、従来のものより印刷適性を上げることで、印刷への適応を図るようになってきました。
弊社でも、こうしたコースター用途で多く使われる紙を取り扱っています。
1972年の発売から40年以上使われ続けている、定番中の定番「特Aクッション」。
コースター用紙でありながら、印刷適性を向上させた「SSコースター」。
未更クラフトをベースにしたナチュラルな風合いの「LPマット」。
この3種類のコースター用紙はそれぞれの持つ特徴から、多くの方にご愛用いただいており、単にコースターだけではなく、名刺やタグ、インビテーションカードなど、様々な用途でご利用いただいています。
Cappan Studioのサイトでも、これら用紙が掲載されていますので、一度目を通してみてください。
https://cappan.co.jp/archives/3752(特Aクッション)
https://cappan.co.jp/archives/3272(LPマット)
素敵なコースターに出会うと、そのお店自体も何だか素敵なお店に見えてきます。
逆かな?素敵なお店だからこそ、素敵なコースターを使うのでしょう。
グラスの下に敷かれた、たった1枚のコースターですが、そこには、それなりの意味と役割と機能があるということを、時々思い出してあげてください。