三星インキ株式会社
意匠性のある特殊なインキ「パールインキ」
今回は今まで紹介してこなかった意匠性のある特殊インキについて紹介していきます。
弊社は一般の顔料とは異なる金属を色材として使用した、意匠性の高いメタリックインキを製造・販売していますが、この世にはその他にも様々な意匠性を有するインキが存在しています。
一般的にメタリックインキを要求される目的としては、金属が持つ特有の輝きによって豪華さ・重厚感を欲する場合や、ふとした瞬間に目に飛び込むキラメキによって注視してもらいたい時に使用される事が多いです。
このような人に何か訴えかける目的を欲する場合に、意匠性のあるインキが使用されます。
まずはメタリックインキと同様に、人の目に訴えかける意匠性のあるインキをご紹介します。
パールインキ
パールインキはメタリックインキと同様に、一般の顔料では再現する事ができない意匠性のある輝きを付与する事ができる顔料を使用したインキであり、金属を使用したメタリックインキよりも輝き自体は少ないですが、鮮明さや透明性などの柔らかな輝きを有するインキであります。
一般的にパールインキは文字の如く、パール(真珠)や貝殻のように見る角度によって反射度合いが異なる事で輝度感や色相が変化するインキであり、人の目を惹きつける効果のあるインキであります。
パールインキに使用しているパール顔料は、天然鉱物である雲母を基材として金属酸化物の薄い層(二酸化チタンや酸化鉄)をコーティングしたものであり、基材とコーティングの成分が異なる層を形成する事で光の屈折率に違いが起こり、光の多重層反射を引き起こす事で色々な色相を再現しています。
話しは変わりますが、皆さん子供の頃、シャボン玉で遊んだ事があると思うのですが、シャボン玉の表面の色が絶えず変化していたと記憶されていると思います。
これはシャボン玉の表面が風やホコリなどの外的要因でシャボン玉の厚みがごくわずか変化し、それによって光の屈折率が変わり、人の目に入る光の波長が変化する事でシャボン玉の色が変化しているように見えるのです。
つまりパール顔料もコーティング層の種類や厚みが変わる事で光の波長を変える事ができ、色々な色相を再現する事ができます。但し、光の屈折による色再現なので、白以外では虹と同じ7色までしか再現する事ができません。
更に成分の異なるコーティング層の数を増やす事で光の反射率がさらに複雑となり、見る角度によって大きく色相が変化する効果を付与したパール顔料も存在しています(偏光パール、干渉パール等と言われます)。
以上のように、現在のパール顔料の殆どは合成によって製造されており、コーティング層(金属酸化物)の種類や厚み、コーティング層の数などを変える事で、得られる輝きや色相に変化を与える事が可能である事から数多くの種類のパール顔料が存在しています。
パール顔料に対して、金・銀インキに使用している金属顔料(真鍮・アルミニウム)は金属の単一物質であり、表面処理の方法によって多少変化をつける事はできますが、基本的には粒径や形状、厚み等を変える事での対応しかできないので、パール顔料に比べて使える品種が非常に限られています。
また、パール顔料は非常に安定性に優れた顔料であり、酸やアルカリ雰囲気下でも化学的に安定であり、また不燃性・非発火性・非導電性で800℃くらいまでの耐熱性も有しています。
この事から、以前金インキの時にお話させて頂いたような変褪色の発生も起こらない事から、食品包材等には金インキ(真鍮粉)ではなく、パールインキを使用している場合もあります。
ただ、パール顔料は金属顔料とは異なり隠蔽力が非常に弱く、下地の影響を受けやすい性質を持っています。従って、一般の色インキと混ぜる場合や色上に乗せる場合は、使用するインキや下地の色によって色が違って見える(あるいは色がなくなる)事もありますので、その点は十分注意して下さい(特に光の屈折で色相を再現している偏光パールや干渉パールと言われるパール顔料を使用する場合は顕著に現れます)。
なお、パールインキも金属顔料を使用した金・銀インキと同様に、一般色インキに使用している顔料よりも粒径の大きな顔料であり、印刷しにくい傾向がありますので注意が必要です。