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三星インキ株式会社
印刷に関連するマークについて
– 印刷インキに使用しやすい植物油 –

印刷インキに使用しやすい植物油 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

前回、植物油インキマークについてお話させて頂きましたが、基準となる植物油にも様々な種類があり、印刷インキに使用しやすいもの・使用しにくいものがあります。
では、この違いはいったい何なのかについて説明させて頂きます。

印刷インキで良く使用されている植物油として、大豆油・亜麻仁油・桐油・米ぬか油が挙げられますが、それ以外にもヤシ油・パーム油・オリーブ油・ごま油・菜種油・綿実油・ひまし油・椿油等があります。

これら植物油は当然の事ながら、植物に含まれる成分によって、見た目・粘度・味などが変わりますが、印刷インキ用として必要な性能の1つとして乾燥性が挙げられます。

植物油は乾燥する速度によって『乾性油』・『半乾性油』・『不乾性油』の3つに分類され、油中にどれだけ多くの不飽和脂肪酸が含まれているかによって影響を受け、不飽和脂肪酸が多いほど乾燥性は早く(『乾性油』と呼ばれる油に)なり、少ないほど乾燥性は遅く(『不乾性油』と呼ばれる油に)なります。

この不飽和脂肪酸の含む量はヨウ素価(100gの油脂が吸収するヨウ素のグラム数)で表され、不飽和脂肪酸が多いほどヨウ素価が高くなります(ヨウ素価が高い方が乾燥性は早くなります)。

代表的な植物油を乾燥性で分類すると、下表のようになります。

  分類基準 植物油 ヨウ素価(代表値) ※)
乾性油 ヨウ素価
130以上
亜麻仁油 168-206
桐油 155-175
半乾性油 ヨウ素価
100-130
大豆油 114-141
菜種油 95-106
綿実油 10-120
ごま油 110-113
米ぬか油 99-108
不乾性油 ヨウ素価
100以下
ヒマシ油 82-91
パーム油 34-59
オリーブ油 75-90
椿油 73-87
ヤシ油 7-10

※)ただし、産地や精製度合い等によって変化します。

上表の事から、印刷インキには 大豆油・亜麻仁油・桐油・米ぬか油を使用する事が多い理由がお分かり頂けたでしょうか?

印刷インキは原反上で皮膜を形成しなければならず、その為に乾性油や半乾性油を使用してインキ化を図る事が多いのです。

その他に植物油の生産量、価格面などを考慮してインキ化処方を施しています。

また、乾燥を遅くする事を目的として、不乾性油をわざわざ使用する事もありますが、平版インキや活版インキではあまり使用することはありません。

以上のような多種多様な植物油を規定量以上使用したインキを総称して植物油インキと呼びますが、特定の植物油を規定量以上使用した製品は別途名称がつけられる事があります。

良く知られているのが『大豆油』を使用した大豆油インキ(SOYインキ)がありますが、その他に『米ぬか油』を規定量以上使用したインキを『ライスインキ』として製造・販売されているメーカーもあります(『ライスインキ コンソーシアム』という母体が普及活動を行っています)。

これら植物油は石油成分とは異なる地球にやさしい成分であり、インキ中成分に占める割合を増やす事で、より環境に優しいインキであるという事ができます。

ではインキ中の成分に含有する植物油量をもっと増やせば、より環境に優しいインキができるのではないか?と考える方がいると思います。

平版インキや活版インキでは、鉱油と呼ばれる溶剤成分を使用せず、植物油に完全に置換えた無溶剤型インキというものが各インキメーカーで製造・販売されています。

鉱油を使用したインキに比べると、セット性や乾燥性、転移性といった印刷適性がやや低下する傾向にありますが、艶や固着力が向上するといった点もあります。

ただ、何より環境に対して、より優しい製品となっておりますので、一度使用についてご検討して頂ければと思います。

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