白石奈都子
大和言葉
大陸から漢字が伝来するまでは日本では文字が存在せず、飛鳥時代頃までは王朝のあった大和国では「大和言葉」という音だけで伝達としていたようだ。漢字文化が入ったことにより、大和言葉と漢字を融合させ、さらには仮名を作り、現代の日本語の礎となった。
よく言われるように、漢字、平仮名、カタカナという表意文字と表音文字を併用している、世界的にも稀な言語だ。
大和言葉は、一音一音に「意味」があり、その意味も複数ある場合もある。現代の日本語では、その意味を漢字を用いて表現する。
最近では、「書く」よりも「打つ」ことで文を書くことが多いので、難しい漢字への変換もすぐできるので漢字を多用することも多いかと思う。さらには、英語も入り混じることも増えているので、冷静にはたから見ると、もはや何語なのかよく分からなくなる。私も御多分にもれず、その一人だ。
書道で仮名を習うと避けては通れない、和歌という古来から日本の歌がある。
現代では使われない日本語も多く書かれている上に、変体仮名などという日本人の美意識と遊び心みたいな文字も作品により気まぐれに入っているから、最初は手習いだけでも大変なので、一つ一つ言葉の意味を理解するにもかなり時間を要する。
子どもの頃は言われるがまま、正直よくわからないまま書いていたが、大人になると日本語の響きの美しさに気がついた。
このあいだ思うことあり、百人一首の書道の作品集を開いた。その本は、ほぼ仮名や変体仮名で構成されており、言葉の音の美しさに触れることがあった。
どうしても表面的な技術に注視してしまい、言葉のことを疎かにしていたが、身近にありながら、遠い存在である大和言葉とあらためて向き合いたいと思った。