三星インキ株式会社
LED照明が発色する仕組み
前回色温度の説明の際、照明器具(昼光色など)について説明させて頂きましたが、現在照明器具が徐々にLED照明に替わってきています。
LED照明器具は今までの通常の照明器具(蛍光灯・電球)に比べて寿命が長く、かつ使用電力も小さいことから使用量は多くなっています。
特に美術品などを展示する際に使われる照明器具のほとんどがLED照明となっています。
ではなぜこのような場面にLED照明を使われているのでしょうか?
それは美術品を守るためです。
いったい何から?
もうお分かりですね。
そう、紫外線からです。
LED照明は可視光(380-780nm)未満の短い波長(紫外線領域である200-400nm)の光を極力出ないようにしており、その為に紫外線による焼けや原料の破壊などを防ぐことができるのです。
このLED照明器具の普及により、印刷物のトラブルの1つであった変退色発生等は、蛍光灯しかなかった時代に比べると減少していると思われます。
ですが、LED照明下でもまだ変退色の問題は完全になくなりません。
なぜ美術品で品質劣化防止の観念からも使用されているLED照明を使用していても、印刷物の変退色の発生が起こるのでしょうか?
ではLED照明が発色する仕組みを見てみましょう。
皆さんは白色に発光するLED装置というのを見たり聞いたりしたことはありますか?
実は現在存在していないのです。
ではどのように白色を再現しているのか?
これは異なる色の光が混ざることで色がなくなる(白色となる)現象(加色混合)を利用しているのです。
一般に昼光色・昼白色と言われている白色LED照明を得る方法として、次の3つの方法が取られています。
①青色LEDに黄色の蛍光体を塗布し、青色と黄色の補色である白色光を作り出す方法
②赤色LED・緑色LED・青色LEDの3つをそれぞれ発光させて組み合わせる方法
③近紫外LEDまたは紫色LEDにより、赤色・緑色・青色の蛍光体を光らせる方法
上記3つの内、最も多くの白色LED照明に使われているのが①の青色LED(波長:460nm)と黄色に発光する蛍光体(光が当たると発光する)の組み合わせであります。ただ、青色LEDを基本として発光させているため、黄色蛍光体で補色してもどうしてもやや青みがかった白色となります。なお、LED照明器の発光部を見られた方がいらっしゃると思いますが、LED発光部が黄色く見える場合は、この①の方法にて白色を再現している照明器具となります。
②に関しては3色(赤色(波長:620~750nm)、緑色(波長:505~555nm)、青色(波長:460nm))のLED光を混ぜることで白色を再現しており、各色の混ぜ方によって様々な色の再現性が可能であることから、色を変えることができる照明器具(寒色-暖色)などはこのタイプが使われています。
上記①②に関しては紫外線の放出はほとんどないのですが、光の加色混合を使用して再現しているので色の偏りが発生してしまうことや、強い光を発生することは難しい等の課題もあります(一般家庭の照明器具用途としては問題ないそうですが・・・)。
この色の偏りや光量を解消するために、③の近紫外LEDまたは紫色LEDを発光させて赤色・緑色・青色に発光する蛍光体を光らせる方法があります。
近紫外LED・・・・、 紫色LED・・・・
おや?
そうです。
このタイプの白色LED照射には紫外線が含まれるのです!
近紫外LEDとは200nm~400nmの波長を有する光の事であり、現在印刷に使用されているLED-UV照射機には、365nm、385nm、395nmのいずれかの単波長を発光するものが標準とされています(近紫外LEDは通称UV-LEDと呼称されています)。
お分かりですね。
光量に違いはあれど、インキを硬化させるためのLED照射機と③の白色LED照明器具から発せられるのは同じ近紫外LEDであります。
従って、知らずに③の照明器具を用いている場合、印刷物に紫外線の影響を与えてしまっていることがありますので、耐性の弱い印刷物を保管する際はLED照明を使っているからといって安心せず、是非どのような方法で発光しているか確認して下さい(UV-LED照明と書かれていると③のタイプの照明器具の懸念が高まります)。