平和紙業株式会社
新しい日本銀行券②
前回、新しい「お札」について触れながら、何か違和感を覚えていました。
何かを忘れている。何かが足りない…。
その忘れている、足りない何かとは、「二千円札」の存在でした。
今回の改刷でも、「二千円札」は俎上にも上がっていませんし、実際、新紙幣には加わっていません。
そもそも二千円札は、小渕総理大臣の発案により、日本で開催されるサミットとしては、初めての地方開催であった、沖縄サミット開催と、2000年のミレニアムをきっかけに、1999年その発行が決められた経緯があります。
二千円札が発行されたのは、2000年の7月19日でした。
しかし、今思うと、発案から発行まで1年ほどの短期間で、よくお札が出来たものだと、今更ながら思う次第(写真1)。
ちなみに寸法は76㎜×154㎜で、表面には、肖像画ではなく、沖縄の守礼門が印刷されています。日本の紙幣で、建物が表面に印刷されるのは、1946年に発行された「拾円札」の国会議事堂以来のこととなります(写真2)。
さて、二千円札の存在を思い出したところで、お札と言えば、「透かし」抜きに語ることはできません。
透かし入りの紙幣は、1963年以降に発行された紙幣から、偽造防止の目的のために作られ始めました。
一言に「透かし」と言いますが、基本的に2種類の透かしがあり、一般に「白透かし」「黒透かし」と呼ばれています。
「透かし」とは、紙を抄く際に、紙の厚みに厚薄を付けて抄くことで、絵柄や文字が透けて見える技術のこと。
一般に周りよりも薄くした部分は白っぽく透けて見えるので、「白透かし」と呼ばれ、逆に周りよりも厚くした部分は黒っぽく透けて見えるので、「黒透かし」と呼ばれています(写真3)。
弊社も透かしを入れた偽造防止用紙を取り扱っていますが、この透かしは「白透かし」です。
一般に卒業証書などに、校章などを白透かしで入れているものもあるように、白透かしは意外と身近にあります。
紙幣に使われている透かしは、この「白透かし」と、「黒透かし」を使って作られていて、一般に「白黒透かし」と呼ばれています。
「透かし」は偽造防止のために使われるものですので、特にこの「黒透かし」は、一般には使えないよう、「すき入紙製造取締法」という法律で以下の様に、規制されています。
「黒くすき入れた紙又は政府紙幣、日本銀行券、公債証書、収入印紙その他政府の発行する証券にすき入れてある文字若しくは画紋と同一若しくは類似の形態の文字若しくは画紋を白くすき入れた紙は、政府、独立行政法人国立印刷局又は政府の許可を受けた者以外の者は、これを製造してはならない。」
法律はいつも難しいけど、要は、黒透かしは、政府の発行するもの以外に使っちゃだめで、白透かしも政府の使っている図柄や文字なんかに似たものには、使ってはいけませんということ。
紙という、ペラペラのものに、更に厚薄をつけて透かしを作る。
もともとは、手漉き和紙の技法から、機械で抄く紙にその技術が受け継がれ、今の紙幣があります。紙の持つポテンシャルを再確認することができるのが、この「透かし」の技術と言えるのではないでしょうか。
もともと和紙の技法が元になっていることもあって、和紙の専門商社の(株)辻和でも、卒業証書をはじめ、オリジナルの透かしを入れて販売しています。
透かしのサンプルも作っていますよ(写真4)。