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平和紙業株式会社
紙の白さを考える④

前回もお話しした通り、日本製紙クレシア興陽工場の2号機が停機し、弊社の取り扱う紙が生産できなくなり、他の製紙メーカーや、他の抄紙機での生産を余儀なくされました。

前回は、「北雪」について書かせていただきましたが、同様に歴史のある紙で、「HSKアイボリー」という紙も、新たな生産設備での生産を行うこととなりました。

「HSKアイボリー」は、1956年に発売された紙です。発売から70年近く多くの方に愛され続けて今に至っています。
商品名の「HSK」は、メチャクチャ安直ですが、YKKが、吉田工業株式会社の頭文字であるように、TDKが、東京電気化学工業株式会社の頭文字であるように、平和紙業株式会社の頭文字、「Heiwa Shigyo Kabushikigaisya」からつけられています。

アイボリーは、本来「象牙」のことで、少し黄味がかった色味の紙のことを指したようですが、現在では、化学パルプ100%で作られた、平滑性が高く、色の白い紙器用板紙のことを指しています。

アイボリーは、分類上、板紙と呼ばれる、厚みのある紙の中で、紙器用板紙に大分されます。この紙器用板紙の中の白板紙は、更に白ボールと、マニラボールに分類され、マニラボールの中に、高級白板紙と特殊白板紙があり、この高級白板紙の中にアイボリーが存在します。そして、アイボリーはコートアイボリーと、ノーコートアイボリーに分類されます。分かり難いので、図1を参照ください。

図1 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

図1

アイボリーは、通常、紙器用の板紙で、化学パルプ100%を使用し、古紙パルプや機械パルプなどは使用していません。表面/裏面ともに平滑性が高く、色も白く、比較的厚い紙です。
印刷適性を持たせるため、表面に塗工したものが、コートアイボリーと呼ばれ、非塗工のアイボリーは、ノーコートアイボリーと呼ばれます。
「HSKアイボリー」は、非塗工のノーコートアイボリーです。

前回書かせていただいた「北雪(北雪ケント)」は、ケント紙です。ケント紙も化学パルプ100%を使用し、表面は平滑性があり、色も白いのが特徴です。
(ケント紙は、イギリスのケント地方で作られたことが、名前の由来と言われています。)
では、一体アイボリーとケントは何が違うのか?

ケント紙は、紙の分類上、印刷・情報用紙の中の非塗工印刷用紙に大別されます。
非塗工印刷用紙の中で、上級印刷用紙に分類され、その中の、筆記図画用紙にケント紙は分類されます。こちらもややこしいので、図2を参照ください。

図2 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

図2

ザックリ言えば、ケント紙は「紙」の分類、アイボリーは「板紙」の分類になります。
ケントもアイボリーも厚みに関しては、かなり曖昧な部分があり、明確に厚さが規定され分類されているわけではありません。
そのため、ケント紙は、筆記・図画用紙であるように、比較的薄い紙で、アイボリーが紙器用に使われる比較的厚い紙ということになります。

では、ケント紙が厚くなれば、アイボリーになり、その逆にアイボリーが薄くなればケント紙になるのか?
実際に「北雪」はケント紙でありながら90kg~360kgまで9つの幅広い厚みを持ち、「HSKアイボリー」は、180kg~400kgまで6つの厚みの幅を持ちます。
つまり、180kg~360kgまでは、お互いに同じ厚みを持つことになりますが、あくまでその紙が、どんな用途を主目的として作られたかが大切な部分だと言うことです。

時々、「アイボリーケント」と言う名前を聞きますが、概ね厚手のケント紙の事をこのように呼ぶようですが、ケント紙の厚いものという意味合いであったり、アイボリーの薄いものという意味合いだったりするところからも、ケント紙とアイボリーの境目は、非常に微妙なものだということになるのではないでしょうか。

ケント紙は「紙」に、アイボリーは「板紙」に分類上区別されていますが、紙と板紙は明確な区分がありません。JISの規格(JIS P 0001 4004)にも、
「3. 目的によっては,坪量225g/㎡未満を紙,225g/㎡以上を板紙とみなすことがある。
しかしながら、紙と板紙の区分は、主としてその材料の特質,場合によっては用途に基づいて行っている。
折畳み箱用板紙及び段ボール原紙といった材料の多くは、坪量が225g/㎡未満でも“板紙”とみなされているし、225g/㎡以上でも、吸取紙,フェルト紙及び図画用紙は、一般的には“紙”とみなされている。」とある通り、厚みによる単純な区分は難しいとされています。

さて、白さに定評のあるノーコートアイボリーの「HSKアイボリー」は、今回、新たに「HSKアイボリーN」として生まれ変わりました。規格は、従来の「HSKアイボリー」と同じで、色味も極力近くしました。長い歴史のある紙の第2幕の幕開けです。

余談ですが、弊社の商品の中で、「HSK」を冠する商品は、アイボリーの「HSKアイボリーN」以外に、コースター用紙の「HSKクッションF」、抗菌性を持たせたケント紙の「HSK抗菌ケントCoC」がありますので、ご参考までに。

【HSKアイボリーN商品詳細】
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/1000670.html

写真1 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)HSKアイボリーN:従来の商品と同等のスペックで、使い勝手はそのままに、「HSKアイボリー」から「HSKアイボリーN」へと生まれ変わりました。
印刷用途からパッケージ用途まで、幅広く対応します。

写真2 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)HSK3種:平和紙業の名前「HSK」を冠した商品は、現在3種類。
今後もこの「HSK~」という商品が登場するのかどうかは分かりませんが、弊社を代表するような商品に育ってもらえたらと、願うばかりです。

図1 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

図1

図2 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

図2

写真1 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)HSKアイボリーN:従来の商品と同等のスペックで、使い勝手はそのままに、「HSKアイボリー」から「HSKアイボリーN」へと生まれ変わりました。
印刷用途からパッケージ用途まで、幅広く対応します。

写真2 | 紙の白さを考える④ - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)HSK3種:平和紙業の名前「HSK」を冠した商品は、現在3種類。
今後もこの「HSK~」という商品が登場するのかどうかは分かりませんが、弊社を代表するような商品に育ってもらえたらと、願うばかりです。