生田信一(ファーインク)
市谷の杜本と活字館に行ってきました(第4回)
2021年2月にオープンした、市谷の杜本と活字館に行ってきました。建物は、東京都新宿区のJR市谷駅から近く、大日本印刷株式会社の敷地の一角にあります。
館内の様子をお伝えする連載コラムの4回目。最終回の今回は、2階の制作室・購買と「時計台の修復・復元」の展示の様子を紹介します。
2階─制作室・展示室
2階には順路はなく、自由に見学できます。制作室には卓上活版印刷機(テキン)のほか、最新のデジタル印刷機や加工機器が並び、壮観です。これらの機器は、今後企画されるワークショップで利用されるそうです。
どの機器も、現在の印刷・加工現場で使われているもので、これだけの機器を一同に集めたワークショップスペースは珍しいです。以下では、主な機器を紹介します(写真1〜11)。
2階の制作室で作られた様々なグッズが展示されていました(写真12)。
2階の一角にかわいい「しおり」と「はがき」が展示されていました(写真13、14)。これらは2階の制作室で作られているそうです。来館した人には、おみやげでいただけるとのこと。
2階─購買
購買のスペースには、活版印刷で作られたグッズや印刷・製本に使われる資材や道具、参考書籍などを購入することができます(写真15、16)。
紙の販売コーナーがあります。こちらではワークショップで使用する紙を購入することができます(写真17)。
また、製本道具や資材などが購入できます。手作りで本を作るときに便利そうなツールが多数取り揃えられています。製本の道具や材料がこれだけ揃っているのは珍しいです。どのようなものが購入できるのか紹介しましょう(写真18〜22)。
展示室「時計台の修復・復元」企画展
「時計台の修復・復元」の展示風景
2階の展示室では、「市谷の杜本と活字館」のシンボルになっている時計台の修復・復元の過程を記録した展示を見ることができました(写真23、24)。館の復元・改修が壮大なプロジェクトであったことが伺えます。一部を紹介しましょう。
館のシンボルになっている時計台の時計の文字や正面玄関に掲げられた看板の復刻の資料を見ることができました(写真25、26)。時計盤については次の解説があります。
「時計台のシンボルである時計に関しては残っている資料がなく、現存するモノクロ写真よりスケッチを起こし、1〜12の数字をフォント化。写真自体がクリアではないため、細部が判然としない数字もあり、既存のフォントの傾向や写真から感じ取れる全体の雰囲気を吟味しながら理想の形に近づけていった。」(展示の解説より)
遠くからでもくっきり見える数字は視認性、可読性がよいのが特徴ですね。文字デザインの工程も披露され、興味深く拝見しました。
「本と活字館」のロゴ・サイン計画
ロゴやサインに使われている金属活字のシンボルを制作するために、実際に金属活字のモデルが製作されました。作られた活字をルーペで拡大して見ることができました(写真27、28)
また、ロゴを使った封筒や便箋のステーショナリーが試作され検証されたとのこと(写真29)。
館内のサイン計画
館内のサインに使われているオブジェが素敵でした。まるで金属で作られたような質感です(写真30〜32)。
「時計台の修復・復元」企画展の展示は終了し、現在(2021年12月時点)は「秀英体111 秀英体ってどんな形?」の企画展が催されています。
「時計台の修復・復元」企画展の詳細は、2021年05月7日、オンライントークイベント「市谷の杜本と活字館ができるまで」が開催され、イベントの模様をムービーで視聴することができます。ご覧になりたい方は、以下から配信用のムービーにアクセスしてください。
「市谷の杜本と活字館ができるまで」
URL:https://www.youtube.com/watch?v=OKW8aV6bNhw
また、展示室では2021年11月11日より「秀英体111 秀英体ってどんな形?」の企画展が催されています。詳細は以下のURLを参照してください。
「秀英体111 秀英体ってどんな形?」
会期:2021年11月11日(木)~2022年02月27日(日)
URL:https://ichigaya-letterpress.jp/gallery/000219.html
4回にわたって「市谷の杜本と活字館」を案内しました。いかがでしたでしょうか。
金属活字を使って本や印刷物を作ることは、今日では贅沢なことのひとつになっています。活版印刷は金属という物質を使って物理的に紙面をデザイン・レイアウトするわけですから、デジタルとアナログの作業工程の違いと言い換えることができると思います。「市谷の杜本と活字館」は、こうした技術や知識を後世に伝える役割を担う理想的な施設だと思います。お時間のあるときや、近くにお越しの折には、ぜひのぞいてみてください。
では、次回をお楽しみに!
市谷の杜 本と活字館
住所 162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1-1-1 大日本印刷内
電話 03-6386-0555
開館 平日/11時30分〜20時
土日祝/10時〜18時
休館 月・火(祝日の場合開館)
入場無料
URL https://ichigaya-letterpress.jp/