株式会社 オオウエ
機械抄き和紙と手漉き和紙の違い
こんにちは、大上です。
今回は、機械抄き和紙と手漉き和紙の違いについてお話しします。
機械抄きはその名の通り、機械で紙を抄いていきます。
なので、数がたくさんできたり、均質性が上がります。
機械にも、調整をしたり原料バランスを見たり、職人的な知恵がもちろん必要ですが、誰がやっても同じ紙になるように、数値の管理などを徹底しています。
手漉きの場合ですと、やはり職人さんの熟練度がモノを言います。
安定して同じ品質を保って作り続けるのは、やはり職人さんの知恵と技術の結晶です。
あと、大きな違いとしては、機械抄きは、紙がロールで出来上がります。
和紙の耳の部分をご覧になったことがある方も多いと思います。
四方がまっすぐではなく、ちょっともやもやした感じのものです。
これは、実は機械抄きでも出来るんです。
ただ、ロールにして大きな紙をまずは作るので、仕上げ工程で落としてしまうのです。
なので、耳付き和紙=手漉き和紙、耳のないものは機械抄き、というのは少し短絡的です。
ロールになっていると、後加工の幅が増えるのも特徴の一つです。
ラミネートをかけたり貼り合わせたりも、大量に行う場合は、ロール紙通しで行います。
この辺りは、手漉きでは出来ないことですね。
片や、機械抄きが不得意なことは何かというと、繊維の絡みの部分です。
機械抄きの場合は、原料が機械の中をベルトコンベアのように駆け巡ります。
その工程で、ゆすりをかけたりしながら、繊維を絡ませていきます。
手漉きですと、簀の上で何度も同じ個所を繊維が前後左右にいきかいます。
そうすることで、繊維同士が良く絡み、薄くても強靭なものに仕上がるのです。
機械の方が、絡みを付けられる機会が減りますので、やはり強さは劣ります。
そのほか、機械抄きの場合は配管に楮などの長い繊維が詰まりやすくなるので、基本的にはパルプのような繊維の短いものを得意とします。
(メーカーによっては、改良を重ね、長い繊維でもへっちゃらな機械仕様にしているところもあります)
原料の前処理に関しては、手漉きの方が丁寧で、機械抄きは薬品などで簡単に済ませる、という認識があると思います。
概ねそういうことが多いのですが、実はこれは手漉きなのか機械なのかということで割り切れることではありません。
写真のように、雲竜紙の雲竜の部分の楮は、すべて手で処理しているメーカーもあります。
紙の原料を作るステップは、機械も手もほとんど変わりません。
楮などを使う場合には、丁寧にチリを取ってあげたり、人の手がかかることも、機械抄きでも行われます。
大切なのは、どんな場面で、どんな効果をその和紙からもたらしたいのか。
色々と選択肢がありますが、適切な和紙を選べることが大事で、どちらが上でどちらが下ということはありません。
ちなみに、機械「抄」きと、手「漉」きと、おなじ「すく」でも、漢字を使い分ける場合があります。
なぜなのかはよくわかりません。私の仮説は、手でやることを少なくしたから、「抄」くなのかなあと思っています。