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生田信一(ファー・インク)
活版らしさを追求する印刷工房
──バードデザインレタープレス

生田信一(ファー・インク) - 活版らしさを追求する印刷工房──バードデザインレタープレス | 活版印刷研究所

今回は、東京都あきるの市に拠点を持つ、バードデザインレタープレス(Bird Design Letterpress)を訪ね、市倉郁倫さん、市倉淑子さんにお話をお聞きしました。JR五日市線の終点、武蔵五日市駅を降り、徒歩でバードデザインレタープレスに向かうと、道路に沿って走る渓谷からせせらぎの音が聞こえてきます。なんて素敵なロケーションでしょう(写真1〜2)。

お二人はご夫婦なのですが、経歴をお聞きすると以前はお二人とも同じ会社に勤務していたとのこと。市倉郁倫さんは、職場ではDTP の組版・印刷のシステム設計を担当されていました。そして2006年から1年半かけて、バックパッカーで世界一周の旅に出かけたそうです(このお話が最高におもしろかったです)。

お二人の活版印刷との出合いは「独立した際に活版印刷の名刺を妻にプレゼントしてもらったこと」だと話します。その後、ご近所の印刷会社から活版印刷機を譲り受けることになり、現在のお仕事のスタイルにつながっていったそうです。

私の関心は、10数年間のデザイン・印刷業務で培ったノウハウやスキルが、現在の活版印刷のお仕事にどのように結びついているのか、ということでした。お話をうかがうと、お二人が探し求める活版印刷の理想の形を実現するまでには、さまざまな試行錯誤があったことが推察されます。

今回のコラムでは、お二人の歩みをお話しいただきながら、バードデザインレタープレスの活版印刷の取り組みをお伝えします。また、サイトで手軽に印刷発注できるシステムなどもご紹介します。

(写真1)JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

(写真1)

(写真2)JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

(写真2)JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

生田信一(ファー・インク) - 活版らしさを追求する印刷工房──バードデザインレタープレス | 活版印刷研究所

(写真1)JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

(写真1)

(写真2)JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

(写真2)
JR五日市線、武蔵五日市駅を降り、しばらく歩くと秋川渓谷のせせらぎの音が聞こえてきた。

活版印刷らしさとは何か?

私がバードデザインレタープレスの市倉さんと出会ったのは、2017年4月に台湾で行われた「活版今日」展でした。会場では、手キンの印刷機で来場者に活版印刷の実技を懇切丁寧に説明する市倉さんの姿が印象的でした(写真3〜5)。

(写真3)台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真3)

(写真4)台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真4)台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真5)会場には市倉さんのお子さん、理紗ちゃんも同行。とっても明るく元気なお子さんで、参加者をなごませてくれました。

(写真5)会場には市倉さんのお子さん、理紗ちゃんも同行。とっても明るく元気なお子さんで、参加者をなごませてくれました。

バードデザインレタープレスが手がけたカードやカレンダーなどの印刷物を見ると、どれも繊細できれいな印刷で、美しく仕上げられていることに驚かされます。現代の私達が活版印刷に望むのは、あたたかみのある手作り感や、紙のふわっとした優しい感触と文字や線画の力強いタッチとのコントラストではないだろうか思うのですが、市倉さんたちが目指す活版印刷の理想も、おそらく同じものであると思います(写真6〜8)。

(写真6)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真6)

(写真7)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真7)

(写真8)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真8)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

それらを実現するための大切な要素として、市倉淑子さんは次のように説明してくれました。「いくつかの条件が揃っていることが必要です。まず、深い凹みを得るための版、そして正確で充分な印圧をかけられる印刷機、さらに活版印刷と相性の良い紙、そして活版印刷に適したデザインです」

これらの要素をひとつひとつクリアしていくことで、「最近ようやく理想と思える活版印刷ができるようになった」と市倉さんは話します。

(写真3)台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真3)
台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真4)台湾で行われた「活版今日」展で、来場者に活版印刷を説明する市倉さん。ブースではカードやカレンダーなどを展示販売。

(写真4)

(写真5)会場には市倉さんのお子さん、理紗ちゃんも同行。とっても明るく元気なお子さんで、参加者をなごませてくれました。

(写真5)会場には市倉さんのお子さん、理紗ちゃんも同行。とっても明るく元気なお子さんで、参加者をなごませてくれました。

(写真6)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真6)

(写真7)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真7)

(写真6〜8)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真8)用紙のふわっとした質感、印字の深いへこみ、シャープな印刷は、今日の活版印刷に求められる理想の姿のひとつだろう。

(写真8)

製版・印刷・加工の機材

まず、製版・印刷・加工の機材を見せていただきました。驚いたことにバードデザインレタープレスでは、スタジオ内で製版から印刷(箔押しを含む)、断裁加工の工程のほとんどをこなすことができます。

自動機は、ハイデルベルグプラテン印刷機を2台所有されています(写真9〜11)。1台は箔押しにも対応する印刷機で、構造を詳しく解説していただきました。上部に箔のロールをセットする機構を持ち、版はヒーターで加熱できるようになっています。

印刷機を稼働させるとモーターが回転し、ベルトを伝わって印刷機に複雑な動きを与えます。近くで見ると、精巧な機構に驚かされます(ムービー1、2)。

(写真9)ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真9)

(写真10)ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真10)ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真11)ハイデルベルグプラテンT型、1974年製造。

(写真11)ハイデルベルグプラテンT型、1974年製造。

(ムービー1)

(ムービー2)プラテン機に版をセットし、用紙が送られる動きや構造を説明いただいた。

ご近所の印刷会社から譲り受けた半自動機もあります(写真12)。こちらの印刷機は、主に金属活字で組んだ版で刷る場合に使っているそうです。「半自動機は、ハイデルベルグプラテンと比べてかけられる印圧が低いのですが、その分金属活字の磨耗を抑えることができるので、現在も使用しています」と説明してくれました。

(写真12)半自動の印刷機。紙を手動でセットし、プレスの動作が自動で行える。こちらの機械では、金属活字で組んだ版を印刷する場合に利用しているとのこと。

(写真12)半自動の印刷機。紙を手動でセットし、プレスの動作が自動で行える。こちらの機械では、金属活字で組んだ版を印刷する場合に利用しているとのこと。

手動の手キンの印刷機は2台あります(写真13)。「こちらの2台は、出張してのワークショップで利用することが多いので、移動しやすいようにキャスターを付けた台を自作しています」との説明。

(写真13)手キン印刷機。キャスターが付いた構造。約60kgあるので、移動する際に便利。

(写真13)手キン印刷機。キャスターが付いた構造。約60kgあるので、移動する際に便利。

最初は半自動機で印刷を行なっていたのですが、ハイデルベルグプラテンを導入したことで理想の活版印刷に近づいたと市倉さんは語ります。「ハイデルベルグプラテンを導入しての一番のメリットは、印刷の品質が安定することです。ハイデルベルグプラテンは、正確なインキングと動作で安定した品質の印刷物を作り出すことができます」

(写真9)ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真9)
ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真10)ハイデルベルグプラテンTP型、1972年製造。TP型は箔押し加工も可能のタイプ。箔押しを行う場合は、上部に箔押しのロールを設置し、金属版を加熱するヒーターをセットする。

(写真10)

(写真11)ハイデルベルグプラテンT型、1974年製造。

(写真11)
ハイデルベルグプラテンT型、1974年製造。

(ムービー1)

(ムービー2)プラテン機に版をセットし、用紙が送られる動きや構造を説明いただいた。

(写真12)半自動の印刷機。紙を手動でセットし、プレスの動作が自動で行える。こちらの機械では、金属活字で組んだ版を印刷する場合に利用しているとのこと。

(写真12)半自動の印刷機。紙を手動でセットし、プレスの動作が自動で行える。こちらの機械では、金属活字で組んだ版を印刷する場合に利用しているとのこと。

(写真13)手キン印刷機。キャスターが付いた構造。約60kgあるので、移動する際に便利。

(写真13)手キン印刷機。キャスターが付いた構造。約60kgあるので、移動する際に便利。

ディープレリーフ樹脂凸版

印刷版についてお話をうかがいました。バードデザインでは、入稿データからネガフィルムを出力した後、スタジオ内で樹脂凸版を製作しています(写真14)。

バードデザインでは、活版印刷に使用される一般的な1mm厚の樹脂凸版よりも約1.5倍の厚みがある「ディープレリーフタイプ」と呼ばれる感光性樹脂凸版を独自に調達し、利用しています。版の厚みを増すことで、「印刷面をより深く凹ますことが可能になった」と話します(写真15)。

(写真14)露光と現像の機能が一体になった製版機。下部の引き出しに版をセットし紫外線で露光、上部の水洗台で版の現像を行う。

(写真14)露光と現像の機能が一体になった製版機。下部の引き出しに版をセットし紫外線で露光、上部の水洗台で版の現像を行う。

(写真15)ディープレリーフ樹脂凸版の拡大写真。

(写真15)ディープレリーフ樹脂凸版の拡大写真。

しかし一方で、版厚の高い樹脂凸版を使用すると、細かなドットやラインが欠けやすくなるという悩みも生じるそうです。「小さな文字サイズは基本的に最小6ptまで、罫線は単独で存在する罫線は0.5pt以上の太さ、二重罫線や密集している線幅は0.25pt程度の太さまでであれば大丈夫」とのことです。

細かな絵柄の作品例として、安西水丸さんの作品集『ON THE TABLE』刊行時に作成したポストカードを見せていただきました(写真16〜20)。「背景の細かな粒状のドットは、印刷再現がとりわけ難しい部分でした」と市倉さん。

(写真16)安西水丸作品集『ON THE TABLE』。発行:Baci。書籍の詳細はBaciサイトを参照。

(写真16)安西水丸作品集『ON THE TABLE』。発行:Baci。書籍の詳細はBaciサイトを参照。

(写真17)

(写真17)

(写真18)

(写真18)

(写真19)

(写真19)

(写真20)

(写真20)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。

(写真14)露光と現像の機能が一体になった製版機。下部の引き出しに版をセットし紫外線で露光、上部の水洗台で版の現像を行う。

(写真14)露光と現像の機能が一体になった製版機。下部の引き出しに版をセットし紫外線で露光、上部の水洗台で版の現像を行う。

(写真15)ディープレリーフ樹脂凸版の拡大写真。

(写真15)ディープレリーフ樹脂凸版の拡大写真。

(写真16)安西水丸作品集『ON THE TABLE』。発行:Baci。書籍の詳細はBaciサイトを参照。

(写真16)安西水丸作品集『ON THE TABLE』。発行:Baci。書籍の詳細はBaciサイトを参照。

(写真17)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。

(写真17)

(写真18)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。

(写真18)

(写真19)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。

(写真19)
(写真16〜20)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。
写真をクリックすると拡大されます。

(写真20)安西水丸『ON THE TABLE』のオンラインストア購入特典である活版印刷オリジナルポストカードは、ディープレリーフ樹脂凸版にて印刷された。細かなドットやラインの印刷再現を確認してほしい。

(写真20)

活版印刷と相性のよい紙

続けて、活版印刷と相性のよい紙について、お話を伺いました。市倉さんが目指す活版印刷の見本として、アメリカ、ミネソタ州、セントポールにあるStudio On Fireの作品集『Iron Beasts Make Great Beauty』を紹介していただきました。英語版の書籍ですが、繊細でありながら活版印刷特有の力強い印刷表現の作品を紹介した作品集です(写真21)。

(写真21)書籍『Studio on Fire: Iron Beasts Make Great Beauty』、発行:Die Gestalten Verlag。美しい活版印刷の作品例を見ることができる。

(写真21)書籍『Studio on Fire: Iron Beasts Make Great Beauty』、発行:Die Gestalten Verlag。美しい活版印刷の作品例を見ることができる。

バードデザインレタープレスでは、活版印刷に相性の用紙として、ハーフエア 180kg、レトラ 199kg、特Aクッション 0.6の銘柄を選んでオーダーできるようになっています(写真22〜24)。印刷見本を拝見すると、活版らしい印刷仕上がりで、文字もシャープです。

(写真22)ハーフエア 180kg。色名(左から):コットン/ヘンプ/コルク。厚み具合も、色のバリエーションとしても名刺として使いやすい活版印刷名刺定番の紙。 特に片面印刷の場合は、ディープレリーフ樹脂凸版、活字組版共にパリッと洗練された印象に仕上がりやすい用紙。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真22)ハーフエア 180kg。色名(左から):コットン/ヘンプ/コルク。厚み具合も、色のバリエーションとしても名刺として使いやすい活版印刷名刺定番の紙。 特に片面印刷の場合は、ディープレリーフ樹脂凸版、活字組版共にパリッと洗練された印象に仕上がりやすい用紙。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真23)レトラ 199kg。色名(左から):スノーホワイト/オフホワイト。活版印刷用に開発された米国製のコットンペーパー。 嵩高でしっとりとした手触りがあり、紙のよれが出にくいため、大きめの図柄を印刷する場合にも印圧に負けないしなやかさを持っている。 基本的には片面印刷向きで、図柄が重ならず文字主体の印刷であれば、両面印刷にも対応できる。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真23)レトラ 199kg。色名(左から):スノーホワイト/オフホワイト。活版印刷用に開発された米国製のコットンペーパー。 嵩高でしっとりとした手触りがあり、紙のよれが出にくいため、大きめの図柄を印刷する場合にも印圧に負けないしなやかさを持っている。 基本的には片面印刷向きで、図柄が重ならず文字主体の印刷であれば、両面印刷にも対応できる。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真24)特Aクッション 0.6。色名:白。両面印刷にも向くしっかりとした約0.6mmの厚みがあり嵩高でコシのある用紙で、大きめの図柄でも両面印刷可能。コースター用の紙としても使われている。表面的には硬めの紙だが、密度が低いため、しっかりとした凹みが出る。

(写真24)特Aクッション 0.6。色名:白。両面印刷にも向くしっかりとした約0.6mmの厚みがあり嵩高でコシのある用紙で、大きめの図柄でも両面印刷可能。コースター用の紙としても使われている。表面的には硬めの紙だが、密度が低いため、しっかりとした凹みが出る。

(写真21)書籍『Studio on Fire: Iron Beasts Make Great Beauty』、発行:Die Gestalten Verlag。美しい活版印刷の作品例を見ることができる。

(写真21)書籍『Studio on Fire: Iron Beasts Make Great Beauty』、発行:Die Gestalten Verlag。美しい活版印刷の作品例を見ることができる。

(写真22)ハーフエア 180kg。色名(左から):コットン/ヘンプ/コルク。厚み具合も、色のバリエーションとしても名刺として使いやすい活版印刷名刺定番の紙。 特に片面印刷の場合は、ディープレリーフ樹脂凸版、活字組版共にパリッと洗練された印象に仕上がりやすい用紙。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真22)ハーフエア 180kg。色名(左から):コットン/ヘンプ/コルク。厚み具合も、色のバリエーションとしても名刺として使いやすい活版印刷名刺定番の紙。 特に片面印刷の場合は、ディープレリーフ樹脂凸版、活字組版共にパリッと洗練された印象に仕上がりやすい用紙。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真23)レトラ 199kg。色名(左から):スノーホワイト/オフホワイト。活版印刷用に開発された米国製のコットンペーパー。 嵩高でしっとりとした手触りがあり、紙のよれが出にくいため、大きめの図柄を印刷する場合にも印圧に負けないしなやかさを持っている。 基本的には片面印刷向きで、図柄が重ならず文字主体の印刷であれば、両面印刷にも対応できる。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真23)レトラ 199kg。色名(左から):スノーホワイト/オフホワイト。活版印刷用に開発された米国製のコットンペーパー。 嵩高でしっとりとした手触りがあり、紙のよれが出にくいため、大きめの図柄を印刷する場合にも印圧に負けないしなやかさを持っている。 基本的には片面印刷向きで、図柄が重ならず文字主体の印刷であれば、両面印刷にも対応できる。※写真はディープレリーフ樹脂凸版での活版印刷

(写真22〜24)写真をクリックすると拡大されます。

(写真24)特Aクッション 0.6。色名:白。両面印刷にも向くしっかりとした約0.6mmの厚みがあり嵩高でコシのある用紙で、大きめの図柄でも両面印刷可能。コースター用の紙としても使われている。表面的には硬めの紙だが、密度が低いため、しっかりとした凹みが出る。

(写真24)特Aクッション 0.6。色名:白。両面印刷にも向くしっかりとした約0.6mmの厚みがあり嵩高でコシのある用紙で、大きめの図柄でも両面印刷可能。コースター用の紙としても使われている。表面的には硬めの紙だが、密度が低いため、しっかりとした凹みが出る。

金属活字、デジタルフォントのこと

活版印刷において、文字は金属活字で組んだものをそのまま利用する方法と、パソコンで文字組みしたデータから樹脂版を作る方法とがあります。以前の樹脂版は文字が鮮明ではなかったので、挿絵やロゴなどに使われることがほとんどでしたが、近年は精度が向上し、文字も鮮明に印刷できます。

金属活字で印刷されたものには、独特の味わいがあることは皆さんもご存じかと思います。昔の印刷物を見ると、印圧のムラで文字の一部がかすれていたり、強くプレスした箇所は太っていたりします。私達は、そうした印字の際に生じる“ゆらぎ”を含めて金属活字の魅力と感じているのかもしれません。

近年では、デジタルフォントにおいても往年の金属活字のデザインを復刻したものが開発され、利用できるようになっています。たとえば築地体(SCREEN GP)や秀英体(大日本印刷)のデジタルフォントは、明治〜昭和期に開発された金属活字のデザインを元に作られています(写真25)。

(写真25)現在市販されている築地体と秀英体のフォント。これ以外にもいくつかのフォントメーカーから金属活字を元にデザインしたフォントが開発・発売されている。

(写真25)現在市販されている築地体と秀英体のフォント。これ以外にもいくつかのフォントメーカーから金属活字を元にデザインしたフォントが開発・発売されている。

「デジタルフォントは、金属活字では不可能だったグラフィックデザインを飛躍的に進歩させて、現在、普段目にする印刷物のほとんどで利用されています。対して金属活字はその進歩の波から取り残されてしまいましたが、現在の私たちにはどこかノスタルジックな雰囲気を感じさせます」と市倉さんは話します。

「活版印刷という印刷方式において、金属活字に使われている書体のデザインは理にかなっていると思います。ただ鉛合金というものは活版印刷用の素材としては柔らかく、現在ではデジタルフォントとディープレリーフ樹脂凸版との組み合わせがベストだと感じています」と市倉さん。(写真26)は、金属活字とデジタルフォントで組んだ活版印刷の名刺を並べて比較してみました。印刷原稿を作る際の参考になると思います。

活版印刷においては、文字を組んだ後の製版、印刷までの工程すべてが、印字の品質に関わってきます。印圧の加減や用紙の種類によって文字の表情が変わります。私たちが活版印刷用に原稿を作る際には、そうした点も考慮しながらフォントや文字サイズを設定する必要がありますね。

(写真26)金属活字とデジタルフォントの比較。上の名刺は金属活字で組んだもの、下の名刺はデジタルフォントで組んでディープレリーフ樹脂板で刷ったもの。

(写真26)金属活字とデジタルフォントの比較。上の名刺は金属活字で組んだもの、下の名刺はデジタルフォントで組んでディープレリーフ樹脂板で刷ったもの。

バードデザインレタープレスでは、正楷書という筆で書いたような金属活字を所蔵しています。(写真27~29)。

(写真27)和文活字、正楷書体 四号(約13.75pt)。

(写真27)和文活字、正楷書体 四号(約13.75pt)。

(写真28)出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真28)

(写真29)出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真29)出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真25)現在市販されている築地体と秀英体のフォント。これ以外にもいくつかのフォントメーカーから金属活字を元にデザインしたフォントが開発・発売されている。

(写真25)現在市販されている築地体と秀英体のフォント。これ以外にもいくつかのフォントメーカーから金属活字を元にデザインしたフォントが開発・発売されている。
写真をクリックすると拡大されます。

(写真26)金属活字とデジタルフォントの比較。上の名刺は金属活字で組んだもの、下の名刺はデジタルフォントで組んでディープレリーフ樹脂板で刷ったもの。

(写真26)金属活字とデジタルフォントの比較。上の名刺は金属活字で組んだもの、下の名刺はデジタルフォントで組んでディープレリーフ樹脂板で刷ったもの。
写真をクリックすると拡大されます。

(写真27)和文活字、正楷書体 四号(約13.75pt)。

(写真27)和文活字、正楷書体 四号(約13.75pt)。

(写真28)出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真28)
出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真29)出張ワークショップ用の欧文活字、Century Old 8pt。出張ワークショップ用にコンパクトな活字ケースを作成したとのこと。

(写真29)

活版印刷の名刺をオーダーしてみよう

活版印刷で名刺を作ってみたいという方は、バードデザインレタープレスのサイトにアクセスしてみてはいかがでしょうか。スマホからでもアクセスが可能で、手軽にオーダーすることができます。サイトは、活版印刷の発注が初めての方でも、ベテランの方でも、オーダーしやすい様式になっています。

以下に名刺のオーダーシステムを紹介します。

●データや手書き原稿から注文の場合

データ、もしくはレイアウト原稿を添付で送付し、オーダーする活版印刷名刺。印刷方式は、ディープレリーフ樹脂凸版、あるいは活字組版のいずれかを指定します。ご自身でデータ作成を行う場合は、テンプレートデータをダンロードし、印刷領域内にデザインします(写真30)。手書き原稿でレイアウト指定しオーダーする場合は、印刷指示書をダウンロードして利用できるようになっています(写真31)。

レイアウトを手書きで指定した場合は、PDFで校正データが送られてくるので、印刷前にチェックすることができます。また、金属活字で組版指定を行なった場合でも、事前に文字組みをシミュレーションしたPDFデータで確認できるそうです。

(写真30)Adobe Illustratorのテンプレートデータ。4ミリの余白のガイド線の内側にレイアウトを作成し、データを送付してオーダーする。

(写真30)Adobe Illustratorのテンプレートデータ。4ミリの余白のガイド線の内側にレイアウトを作成し、データを送付してオーダーする。

(写真31)印刷指示書をダウンロード、プリントして、手書きでレイアウトの指示を書き込み、FAXでオーダーすることもできる。

(写真31)印刷指示書をダウンロード、プリントして、手書きでレイアウトの指示を書き込み、FAXでオーダーすることもできる。

●レイアウト例から注文する場合

数種類のレイアウト例から、希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができます(写真32、33)。印刷方式は、ディープレリーフ樹脂凸版、あるいは活字組版のいずれかを指定し、名前や住所等の文字要素を指定します。

(写真32)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

(写真32)

(写真33)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

(写真33)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

オーダーする際の画面は、わかりやすい設計になっています。印刷費用は、ポップアップメニューで印刷仕様を指定するだけで自動計算されて表示されるので、とても使いやすいです(写真34、35)。

(写真34)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。

(写真34)

(写真35)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。

(写真35)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。

このほかにも、年賀状や暑中見舞いなどのハガキ、コールミーカードなどを活版印刷でオーダーすることもできますし、A4サイズ以内であれば、カスタマイズでオーダーすることもできます。また、裁ち落としでの印刷、用紙を取り寄せての印刷、10cm×10cmまでの箔押しも可能です。不明な点があれば問い合わせフォームから確認してください。

 

取材を終え、デジタルに精通したお二人が、アナログの活版印刷に取り組む姿はとても印象的で、うらやましく思いました。これからも若い人達に活版印刷の魅力を伝え続けてほしいです。市倉さんは、全国各地の活版印刷のワークショップに出かけることも多く、お見かけする機会も多いと思います。お話しすると、とても楽しいですよ。気軽に声をかけてみてはいかがでしょうか。

ではでは。次回をお楽しみに。

(写真30)Adobe Illustratorのテンプレートデータ。4ミリの余白のガイド線の内側にレイアウトを作成し、データを送付してオーダーする。

(写真30)Adobe Illustratorのテンプレートデータ。4ミリの余白のガイド線の内側にレイアウトを作成し、データを送付してオーダーする。
写真をクリックすると拡大されます。

(写真31)印刷指示書をダウンロード、プリントして、手書きでレイアウトの指示を書き込み、FAXでオーダーすることもできる。

(写真31)印刷指示書をダウンロード、プリントして、手書きでレイアウトの指示を書き込み、FAXでオーダーすることもできる。
写真をクリックすると拡大されます。

(写真32)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

(写真32)

(写真33)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

(写真33)
(写真32、33)数種類のレイアウト例から希望のデザインパターンを選んでオーダーすることができる。

(写真34)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。

(写真34)

(写真35)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。

(写真35)
(写真34、35)レイアウト例の画面。レイアウト例をクリックすると注文内容を入力する画面に切り替わる。
写真をクリックすると拡大されます。