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アミリョウコ
メヒコのお盆・Día de muertos

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

Nobiembre(11月)

こんにちは、アミリョウコです。気が付けば今年ももう11月までやってきました。月日が経つのは早いと本当に感じます。日本にいたら四季があるので季節が変わりゆく様子を見ることができるので季節感というものを味わいながら1年が過ぎていくのですが、ここオアハカでは常春のような気候なのでぼんやりとしているとあっという間に1年が過ぎています。

一応四季はあるといいますが、「過ごしやすい・暑すぎる・ちょっと寒い」という小さな変化くらいで季節と呼ぶには何か足りない感じがします。目に見えてわかるのは雨季と乾季の違いです。大体4月くらいから10月くらいにかけて雨が降ります。死者の日を迎える10月の末くらいは一年の中でも一番空が青く感じる季節で、その青さは日本では見たことがないような濃い青で吸い込まれてしまいそうです。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

Día de muertos

メヒコには「死者の日」のお祭りがあるというのは先月のコラムでも少し触れました。先日がその死者の日で、街の中が特ににぎやかになっていました。日本でも近年ではメヒコの雑貨や刺繍などが注目を浴びていると思うので耳にしたことがある人があるかもしれません。

今回のコラムでは活版印刷とは少し離れますが、メヒコからのお便りということなので「死者の日」のことを紹介したいと思います。

一言で言ってしまえば「お盆」です。メヒコでも死者が戻ってくると考えられていて、ご先祖さまを迎えるためにお供え物を用意したりお墓参りをしたりします。ここまで文字で書くと「日本と一緒だなぁ」と感じるのですが、どっこい。ここはメヒコです。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

祭壇を設置したりお墓をきれいに掃除するだけではなく、街の中がカラフルに彩られます。「コンパルサ」と呼ばれる仮装行列もこの時期にはたくさん行われていて、街を一歩歩けば音楽に合わせて踊りながら歩く集団に遭遇したりしました。街の中に骸骨のメイクをしてくれるアーティストも出現したりして、町中ガイコツの顔をした人が練り歩いていて、お盆というよりももはやお祭り騒ぎです。ちょっとハロウィーンの影響が伝統を侵食しているように感じられるところもあってそれは本当に何とも切ない気持ちになります……。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

オアハカは、メヒコの中でも特に盛大に死者の日がお祝いされる街としても知られているので、それを目当てにやってくる外国人観光客も多いです。メヒコでは死は忌み嫌われるものではなく人生の一部だと考えられているので、湿っぽさや暗さは一切ありません。ガイコツたちも満面の笑みです。ギターを弾いたりお酒を飲んだり、何でもありです。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

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黄色い花はセンパスチル(日本ではマリーゴールドとして知らています)という花で、日本で菊を供えるように死者の日の花として飾り付けられます。祭壇だけではなく店の中やもんや、とにかくいたるところに飾られるので街の中を歩いただけで、ふんわりと花のいい香りが漂ってきていました。

この「死者の日」をテーマにしたピクサーの映画「Coco」(邦題:「リメンバーミー」)が、日本では来春に公開予定だそうです。私はまだ観ていないのですが、観た人によるとかなりいいそうなのでメヒコやオアハカのことを映像で観て身近に感じてもらえればうれしいです。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

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メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

「死者の日」にまつわる印刷の話

上にも書いたとおり、メヒコでは死は人生の一部と考えられていたり、あるいは死んでしまったら金持ちも貧乏も誰でも同じガイコツなんだと皮肉ったり笑い飛ばしたりするという文化があります。

そんな文化を背景に「Calaveras Literarias(カラベラス・リテラリアス、通称カラベラス)=骸骨の文学」というものがあるのだと活版印刷工房のマエストロに教えてもらいました。

カラベラスは死者にむけて送られる碑文に刻む散文のようなもので、主に死者の日が近づくころに作られることが多く1879年に新聞に載ったのが起源なのだそうです。まだ実際に生きている人に向けても送られ、その矛先は主に政治家に向けられることが多いようです。その人に向かって、普段は言えないような不満や皮肉をいってからかったりするという、非常にメヒコ的な文化だと感じます。

このように、死者の日が近づくと新聞には時の政治家たちの顔がガイコツになって登場し揶揄されているのを見て、それはみんなが思っていることを代弁したようなものなので読んだ人もふっと笑うのでしょう。その人を死者と見立てて皮肉るというのは、今を切り取って風刺するのとはまた違っていて独特ですね。

マエストロが若いころは、これらのカラベラスを新聞で刷っていたそうです。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像a)

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像b)

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像c)

(画像a)と(画像b)はホセグアダルーペポサダのカラベラ。(画像c)は現代版。去年(2016年度)のものを見つけました。

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像a)

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像b)

メヒコのお盆・Día de muertos - アミリョウコ | 活版印刷研究所

(画像c)

おわりに

今回は、オアハカの文化とそれにまつわる印刷物のことを紹介しました。死者の日が終わって町はあっという間にクリスマスムードです。

Hasta la próxima!(それではまた次回でお会いしましょう!)