アミリョウコ
日本語の活字をオアハカで印刷するプロジェクト①
Septiembre(9月)
オラー、こんにちは。オアハカよりアミリョウコです。
あれは7月のある日でした。最近足の遠のいていたマエストロキンタスのところへ行った時です。
「久しぶりやな、元気にしてたんか?」
とマエストロといつものように雑談をしていると、最近印刷したといってカレンダーを見せてくれました。
パペルチナという紙に印刷されたカレンダーは風になびくとしゃりしゃりという音を立てながら揺れるような薄い紙なのに黒いインクがしっかりと印字されていて、めちゃくちゃに渋い雰囲気を醸し出していて
「うわーーーー!!!めっちゃいいじゃないですか、マエストロ!!!」
と思わず叫んでしまいました。すると、
「お前もカレンダー作るか?」
とマエストロが提案してくれて、迷う時間などなく気が付けば「もちろん」と首を縦に振っていました。
いろいろ話をしているうちに、「日本人にも向けるとしたら、スペイン語表記(曜日など)だと困るなぁ。」ということに気が付きました。
じゃあ、英語表記にしようか。でも、スペイン語ユーザーと日本語ユーザーの私たちが作るのに結局英語に落ち着くってなぁ……、話せば話すほど日本語で作れたら面白いのにという気持ちがたまるばかりです。
そこで活版印刷研究所に相談してみることにしました。
「日本語の活字をいくつか貸していただけないだろうか」と。
すると、二つ返事で「おもしろいですね!」と言っていただき日本語の活字を借りることに相成りました。
マエストロに報告に行くと、「なんと!!!」と目を丸くして驚いてくれました。
マエストロは6歳の時から印刷工房で働き、印刷一筋で現在75歳を超えておられるのですが現役バリバリで活躍している方です。そんなマエストロでも日本の活字は見たことがなく、日ごろから興味があるという話をしていたので実際に手に取ってみることができるということで、わくわくしながらその到着を待ちました。
活字の大きさを指定する段になって知ったことは、メヒコや海外で標準になっているサイズの単位と日本で使われている単位が違うということです。
日本では独自のサイズを表す「号」という単位があることをマエストロに伝えると驚いていましたが、活版印刷研究所によると、日本国内でも大きさが微妙に違って存在するとのことで、文字を組むのが大変だろうなぁと想像しました。
8月に入り、私の友だちが日本から遊びに来てくれるついでに活字も一緒に持ってきてくれました。上記はそれをマエストロに届けに行った時の写真です。
初めて見る日本語の活字にうれしさが隠せない様子は、新しいおもちゃを手にした子どものようでマエストロが本当に印刷が好きなんだなというのが伝わってきてじいんとしてしまいました。膨大な経験と知識をもっているのになお失っていない好奇心は本当に素敵だなと感じます。
オアハカでは、このように職人さんや手仕事をされる方に多く知り合ってきましたが、彼らの仕事に対するまっすぐすぎる愛を見た時にいつも心が動きます。
月、火、水、木、金、土、日、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十
読み方や意味を教えると、「へえ……」と感心しながら「まさか日本の活字を使って印刷できる日が来るなんてなぁ」とうれしそうです。
このようにして、日本の活字をオアハカで印刷してみようというプロジェクトが始まりました。
(来月に続く)