図書館資料保存ワークショップ
京都大学経済学部図書室・企画展示
「上野文庫と新聞資料」展に行って来ました!
昔の新聞にご興味ありませんか?
上野精一氏は、朝日新聞創立者の一人である上野理一氏の長男として、1882年10月28日に生まれ、自身も朝日新聞社主を務められ、新聞研究に熱心に取り組まれた人物です。
私たち資料保存WSの活動する京都大学の経済学部図書室には、この上野精一氏が生前研究のため収集されてきた寄贈新聞・雑誌・図書約27,000冊からなる上野文庫があります。
今回は、その上野文庫の中から選りすぐりの雑誌・新聞が展示されている
現在開催中の企画展
「上野文庫と新聞資料」展
をちょっとリポートします。
案内頂いたのは、経済学部図書室の職員・Yさん。
Yさんは、何を隠そう、かれこれもう5~6年ほど前からの資料保存WSメンバーの一人です。
展示スペースは、経済学部図書室の入口を入ってすぐ。
青いシートの敷かれた展示台の上で、状態の良い資料が映えます。
展示資料でまず目に留まったのは、
「赤い鳥」
ーーー 1882年生まれ広島県出身の小説家・児童文学者の鈴木三重吉氏によって創刊、1918年~1936年までの間(1929年~1930年は休刊)発行された児童文芸雑誌。
執筆者には、森鴎外、島崎藤村、芥川龍之介、ほかに小川未明、北原白秋なども。ーーー
子供をモチーフにしたやさしく彩りよい表紙絵がとても美しい!
それから、中央に展示の
「新思潮」
ーーー 1907年劇作家の小山内薫氏によって創刊、その後帝大生らが復刊。
山本有三、芥川龍之介、菊池寛、久米正雄らは「新思潮派」と呼ばれるようになった。
後に日本で初めての雑誌専門図書館を創設する、大宅壮一も参加していた。ーーー
大正6年3月15日刊の「漱石先生追慕號」には、芥川龍之介が「葬儀記」として、夏目漱石の葬儀の様子を書いている。
淡々と。自身の悲しみが広大過ぎて気が付いていなかったかのような様子が印象的。
この2タイトルの雑誌はYさんもお勧めされていますが、
中でも
「滑稽新聞」
ーーー ジャーナリストで文化史家の宮武外骨氏により1901年に発行開始された政治批判の風刺新聞 ーーー
毒っ気とユーモアあふれる個性的な風刺画多く「ビジュアル的にも大変オモシロイものです!」とYさんイチ押し。
私もすっかり宮武外骨氏に興味津々。
他にも婦人解放をテーマにした新聞「世界婦人」や上野文庫唯一の風刺画が有名なイギリスの新聞「Punch」など。
どれも復刻版で状態は非常に良く、手に取って閲覧できるのがうれしいです。
ジャンルは多岐に渡り、社会・経済・文化・思想と上野氏が幅広く研究されていたことがうかがえるものでした。
ポスターやキャプションも職員の手作り。
書影や肖像に使用しているのは、著作権保護期間の満了されたものを国会図書館の画像サイトなどから選んで使用していて、週替わりで展示資料のキャプションを変えておられるとのこと。私の訪れた11月5日は「新思潮」についてのキャプションでした。
上野文庫には、今回の展示の他にも貴重書扱いのイエズス会宣教師の書簡集や東インド会社関係の報告書などもあります。
Yさんは、
上野文庫の存在を知ってもらいたい。
また、普段あまり表に出されない新聞資料を見てもらいたい。と仰っていました。
展示コーナー横には、展示目録の他に京都大学所蔵の新聞の探し方についての説明書も一緒に置かれています。
経済学部図書室の資料を周知し、さらに多くの方へ利用して頂けるよう
今後もできれば企画展示を開催したいと考えているそうです。
「上野文庫と新聞資料」展は、11月22日(木)まで。
お越し頂きました際は、アンケート用紙と提出ボックスも設置されてますので、ぜひご記入をお願いします!
読書の秋は知の森へ。
先人達の愛した書物を紅葉狩りでもするかのように散歩にいらしてみてはいかがでしょう。
・参考文献:「上野文庫と新聞資料」展 展示キャプション
資料保存WS
小梅(永田千晃)