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平和紙業株式会社
紙の色名を決める(その2)

前回もお話しした通り、紙の色名は、その紙のコンセプトに沿っていた方が、分かり易く、印象を良くします。
とは言え、コンセプトを大切にするあまり、ちょっと分かりにくい色名をつけてしまうこともあります。

震災によって、多くの方が被害を受け、日本中が下を向いてしまいがちだったあの年、奇しくも日本各地で金環日食を見ることができました。小さな子供からお年寄りまで早朝の東の空を見上げ、太陽と月との天体ショーに酔いしれている姿を見た時、普段当たり前のように見ていた月の存在に感動しました。

日本では、「月」に対する思いが強く、月の満ち欠けとともに人々の生活があり、月は身近な存在でした。
しかし、現代では、空を見上げることすら忘れてしまったような気がします。
もう一度、月を見上げてもらうにはどうしたらいいのだろうか。
あの時、誰もが笑顔で空を見上げているのが印象的で、見上げている月が手の中にあったらと思った瞬間、月の表情を紙の上に再現してみようと思い立ちました。

しかも、できればいつも見ている月の表面ではなく、地球上からは見えない月の裏側を、紙の表面に再現できないだろうか・・・そして「かぐや」という紙が誕生しました。

地球にいる限り見られない月の裏側をイメージした紙の表面 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

地球にいる限り見られない月の裏側をイメージした紙の表面

紙の魅力をブック型の見本帳にまとめました。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

紙の魅力をブック型の見本帳にまとめました。

この見本帳には、次のようなコメントを入れました。

[辛いことや、悲しいことに、打ちひしがれて、うな垂れて、足元を見つめるような時こそ、頭上に青白く輝く、あの星を見上げてみよう。
日々の暮らしの中で、空を見上げる事すら忘れてしまってはいないだろうか。
日々形を変え、私達の生活や文化にも、大きく関わってきたあの星を、最後に見たのはいつのことだろう?
かつてあの星に人類が降り立った時、夢と希望を語り合い、空を見上げたように、意識を飛ばして、あの星の裏側を見に行こう。
きっと、いつかの私達のように、素直な笑顔を取り戻すことができるから。]

「月」をコンセプトにしているので、色名も月をイメージできた方が商品と一体感が生まれる気がして、全10色にそれぞれ月にちなんだ色名を付けることにしました。

その色名は、満月、十三夜、いざよい、上弦、下弦、有明、たちまち、ねまち、三日月、新月の10色です。

10色のカラーバリエーションで、月の存在感を表しています。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

10色のカラーバリエーションで、月の存在感を表しています。

「満月」…白
いわゆる十五夜の満月。気高さすら感じられる青白い月をイメージしました。

「十三夜」…きなり
満月までもう少しの柔らかな白。真っ白な満月になる一歩手前の月。真っ白になりきらない、少し柔らかい白です。

「いざよい」…赤
満月の次の日に昇る月。満月より大きく見えたり、赤く染まって見えたりすることから。

「上弦」…緑
新月から、満月に向かう途中の半月を、上弦の月といいます。
徐々に成長していくことから、生命力溢れる色を表す緑をイメージしました。

「下弦」…青
満月から新月へと向かう途中の半月を下弦の月といいます。
徐々に月が痩せていくことから、静かさを表す青をイメージとしました。

「有明」…茶
新月まであと少しの月。朝焼けの空に鈍く光る月の色です。

「たちまち」…薄鼡
日が沈み、薄暗くなり始めた頃に昇る月。
薄暗さを感じさせる色です。

「ねまち」…濃鼡
日が沈み、すっかり辺りが暗くなってから昇る月。
夜の闇が訪れる前の、微妙な暗さを再現した色です。

「三日月」…黄
明け方、東の空に昇る三日月。
月光仮面も、セーラームーンも、三日月のイメージ=黄から。

「新月」…黒
新月は、月が太陽の光を反射していない状態。
月はあっても見えない。月の影を想像しました。

単純に、赤、青、緑、黄…とした方が、間違いなく分かり易かったのですが、紙の中に月の分身を作り出すためには、必要だった色名だと思っています。
何しろ紙の名前も「かぐや」です。紙の表面に月のクレーターがあったら、色名も月にちなんだ名前にしたいのが人情ではありませんか。

とは言え、分かり難い…。色名を聞いて、その色をイメージしづらいのが難点です。
コンセプトを大切にするあまり、少々わかり難くしてしまった例です。

でも、いい紙ですから、是非一度手に取って眺めてみてください。

「月々に月見る月は多けれど、月見る月はこの月の月」
手の中に月の世界が広がります。

かぐやに、箔押し、ホワイト印刷、抜きなど、加工を施したサンプルを見本帳に入れました。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

かぐやに、箔押し、ホワイト印刷、抜きなど、加工を施したサンプルを見本帳に入れました。

地球にいる限り見られない月の裏側をイメージした紙の表面 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

地球にいる限り見られない月の裏側をイメージした紙の表面

紙の魅力をブック型の見本帳にまとめました。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

紙の魅力をブック型の見本帳にまとめました。

10色のカラーバリエーションで、月の存在感を表しています。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

10色のカラーバリエーションで、月の存在感を表しています。

かぐやに、箔押し、ホワイト印刷、抜きなど、加工を施したサンプルを見本帳に入れました。 | 紙の色名を決める(その2) - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

かぐやに、箔押し、ホワイト印刷、抜きなど、加工を施したサンプルを見本帳に入れました。