平和紙業株式会社
新しい日本銀行券
「日本銀行券」いわゆる「お札」が2024年7月3日に改刷されます。
20年ぶりの改刷となり、一万円札、五千円札、千円札全てが肖像画を入れ替え、紙面も一新することとなりました。
今更ながらですが、日本のお札は、「紙」で出来ています。「紙」ですが、一般の紙のように、製紙メーカーが抄造しているわけではありません。ご存知「国立印刷局」の中で作られています。
大原則として、模造、模倣されることのないよう、原料の配合など全て外部秘となっていますが、和紙の原料でお馴染みの「三椏(みつまた)」、アバカ(マニラ麻)などを原料としているようです。
三椏(みつまた)は、和紙の原料としても重要で、樹皮は繊維質が強く、こすれや折り曲げに強い特性があります。
アバカは、マニラ麻とも呼ばれていますが、麻ではなく、和名を糸芭蕉と呼ばれています。アバカの繊維は、柔軟でありながら、硬く強い強靭な繊維で、水にも強いのが特徴です。
また、麻の半分以下の比重で、非常に軽く、軽くて強い紙を作るには、必要不可欠な繊維です。
お札には、人の手を渡り、機械に通され、折り畳まれたり、水に濡れたりしながらも、破れたり、縮みにくいことが条件になります。必要な強度や柔軟性と共に、軽くて水にも強い特性は、こうした原料の適切な配合があってこそのものです。
更に、昨今では、昔と比べて、キャッシュディスペンサーや、自動販売機など、お札を機械に通して使用する場面が多くなっています。
機械で処理されることを念頭に置いて、こうした機械処理適性も求められています。
機械処理と言えば、現在発行されているお札の縦の寸法は、現行のお札の一世代前のお札から、76㎜に統一されています。(表1)。
これは、1970年以降、ATMなどが開発され、機械処理が始まったこともあり、1984年に発行されたお札から、この寸法に定着しています。
ただ、何故76㎜なのか、その根拠は、謎のままですが・・・・。
二世代前の一万円札の肖像は、あの「聖徳太子」です。お札の大きさも84×174㎜と、かなり存在感のある大きさで、インパクトのあるお札でした。
千円札だって、今の一万円札より、若干大きい!
かの三億円強奪事件(1968年)の時の、ジュラルミンケースに入っていたのが、この聖徳太子でした。
さて、強靭なお札ですが、一万円札の平均寿命は、約4~5年、五千円・千円札は、1~2年程度と言われています。如何にお札が酷使されているのかが分かります。
使い古されたお札は、市中の銀行から日本銀行に戻され、細かく裁断された後、住宅用の建材や固形燃料、トイレットペーパー、事務用品などにリサイクルされたり、廃棄されたりします。
以前、この裁断されて廃棄されるお札を、紙に抄き込んで、ちらほらとお札が見えるファンシーペーパーにアップサイクルできないものか思い、日本銀行から裁断されたお札をもらい受け、紙に抄き込むテストを行ったことがあります。
紙に抄き込むためには、細かく裁断されたものを、更に細かく裁断し、先ずは洗浄する必要がありました。
人の手から手へと渡ってきたこともあって、お札自体がかなり汚れていたからです。
そして、細かに裁断されたお札を、パルプに混ぜて紙を作るのですが、お札の強度が強すぎて、上手くパルプの繊維とからみ合わず、結果、思っていたような紙にすることが出来ませんでした。繊維と絡めるためには、お札だと分からなくなるくらい、細かく粉砕しないと、難しいことが分かり、「バンクペーパー」という名前まで考えていたのですが、お蔵入りの案件となり、ちょっと残念な思い出です。
ペーパーレスや、キャッシュレスが進む時代ですが、お札が新しくなると聞いて、何だかワクワクするのは私だけでしょうか?
新しく改刷されるお札については、国立印刷局が、詳しく紹介していますので、一度HPを覗いてみてはいかがでしょうか。