三星インキ株式会社
特殊な印刷効果が得られるインキ
蓄光インキと偽造防止用インキ
今回も特殊な意匠性のあるインキをご紹介致します。
蓄光インキ
蓄光インキとは、名前の如く、明るい条件下では浴びた光エネルギーを蓄光顔料に保存し、逆に光がない場所では光エネルギーを放出して自ら発光する効果を有するインキであり、時計の文字盤や非常口などの身近な所で使用されています。
蓄光インキとは蓄光顔料を色材として使用したインキであり、与える光が強いほど良く光ります。なお、この顔料は粒径が粗いほど蓄光効果が高く、最近では粒径の細かな顔料も開発されてきていますが、最も効果的な印刷方式としては大きな粒径顔料が使用できる孔版印刷(スクリーン印刷)が挙げられます。
最近では防災意識の高まりと共に使用用途が増えてきているとの事で、停電時での避難誘導などの安全標識や、消火器・避難具などの所在を示す必要がある所に使用されてきています。
一般的には緑色に光る効果をよく目にしますが、緑以外にも青や赤に光る蓄光顔料も存在しています。ただ、以前の記事(色がもたらす影響や意味合い「緑」 2018.4.30)で書かせて頂いた通り、緑色は人に安心感を与える事ができる色である為、安全標識などには緑色が良いのかなと思っています。
・偽造防止用インキ
先日2024年に新しい紙幣が発行されるとの話しが取り上げられていましたが、同じ紙幣を長年使用していると精巧な偽札が作成される可能性が高くなるとの事で、新紙幣発行の目的の1つとして偽札作成を防止する目的があります。
現在(2019年時点)流通している紙幣も多種多様な技法(偽造防止)が施されており、日本の紙幣は世界的に非常に偽造しにくい紙幣であると言われています。その中の一つに、通常の光源下では分からないのですが、ブラックライト(紫外線)を当てると絵柄が浮かび上がってくる技法があり、特殊発光インキ、あるいはブラックライト発光インキ等と呼ばれるインキが使用されています。また、このインキは紙幣や証券、パスポートといった真偽を識別する方法に使用される事が多いので、一般的に偽造防止用インキと呼ばれる事が多いです。
この偽造防止用インキは紫外線を浴びる事で色材が発光するという仕組みですが、同様に紫外線を浴びる事で発光する蓄光インキとは全く色材が異なります。
偽造防止インキに使用されている色材は蛍光増白剤とも言われており、皆さんの身近にも多く使用されています。使用例としては衣類洗剤などに使用されており、洗濯時に衣類に付着した蛍光増白剤が光を浴びる事で発光し、衣類自体が光る事で白くなったように見えるという目的で使用されています。同様に白く見せる目的で用紙等にも蛍光増白剤は使用されており、紙(特にコート紙)にブラックライトを照射すると紙自体が青く光る事が多いです。その為、偽造防止用インキを使用する場合は、使用する原反(紙)がブラックライトで光らない方が意匠性の効果は高くなりますので、用紙自体が光るかどうかあらかじめ確認される事をお薦め致します。
偽造防止用インキは前述の通り、通常光源下では発光しないので透明である為、真偽確認の他にもハガキに住所などのデータをバーコード化して印字する際に使用されたり(ハガキは真偽確認の必要はありませんが、バーコードをハガキに見える状態で書き込むと重なった所が見えなくなったり、汚れていると思われる事がある為にワザと見えなくしているそうです)、ブラックライトを当てると通常光源下で見る模様とは異なる絵などが浮かび上がるアート作品等にも使用されています。
以上、今まで特殊な印刷効果が得られるインキを紹介させて頂きました。
次回はまた別の特殊インキを紹介します。