平和紙業株式会社
紙に歴史あり その1(前編)
「紙」という世界でも、多くの紙が生まれると同時に、多くの紙がこの世から消えていきます。「紙」の中には、時代の流れに翻弄されながら、時代の隙間を縫うように生き抜いている「紙」があります。
今回ご紹介するのは『MAGカラーN』と『Mag-N』
数奇な運命をたどり、今尚私たちを楽しませてくれるこの紙の波乱万丈の物語です。
1900年代後半から、環境意識が高まり、紙の分野においても、古紙の有効活用が叫ばれるようになってきました。そして、多くの環境配慮型商品が誕生することになります。
2001年9月 雑誌古紙50%+ミルクパック古紙20%+上白古紙30%を原料とした、環境配慮型商品として「グラフィーエコカラー」が誕生します(写真1)。
当時は、環境に配慮した商品が立て続けに市場に登場し、この「グラフィーエコカラー」も、それまで積極的に利用されなかった雑誌古紙を配合することで、グレーシュな落ち着いた色合いで、色数も13色、厚みも70㎏、100㎏の2連量。合計26アイテムと、バリエーションに富み、重ねてエコマーク商品と言うこともあり、人気を博しました。
その翌年11月 雑誌古紙だけを原料に使った国内最初の印刷用紙「Mag100」を市場に投入します。雑誌古紙特有のグレーの色味を活かし、封筒用紙としても活用されました。
もちろんエコマークも取得し、素材感のある肌合いも好評で、多くの方にご利用いただくことになりました。「Mag100」のMagは、Magazine(雑誌)の略です(写真2)。
2003年 グレーだけだった色味に、新色5色を追加し、「Mag100」は更に進化することになりました。
そして、2008年1月 紙業界を震撼とさせる「古紙乖離問題」が発覚します。
その年の年賀状に使われた紙は古紙を多く配合しているはずでしたが、実際にはほとんど古紙が配合されていないことが問題となり、多くの製紙メーカーが同様に実際の古紙の使用量と、公表している使用量に大きな乖離があることが発覚しました。
これまで環境保全=古紙の利用促進としてきた紙業界に激震が走ったのです。
多くの製紙メーカーがこの事実を認め、古紙を使用していると謳いながらも、実際には全く使用していなかったり、公表数字と、実際の利用数字が大きく乖離していたりと、この連鎖は製紙メーカーから、流通、最終ユーザーまで巻き込んだ大問題に発展しました。
先ほどの「グラフィーエコカラー」「Mag100」も同様、調査を進めると、公表配合率とは、大きく異なる結果となり、結果として、正式な古紙配合率への移行とともに、商品自体のコンセプトを大きく変更することとなりました。
「グラフィーエコカラー」は、古紙配合率30%以上となり、「Mag100」は、商品名自体を「Mag」に変更し、雑誌古紙配合率50%以上となり、同時にエコマークも継続できなくなりました。
それでも、この商品達は、自らの意匠性をアピールし、クリエーターに創作意欲を与え続けてきました。しかし、どちらもグレーシュな紙で、環境対応も、よく似たコンセプト。
世の中の環境意識の高まりも徐々に収まり、商品自体の分かり易さを求める時代に移り変わろうとしていました。
「グラフィーエコカラー」13色のうち3色を廃止し、その存続を維持してきましたが、この2つの商品は、時代の流れの中で、姿を消してしまうのか、それとも新たな輝気を取り戻せるのか。大きな岐路に立つことになりました。
こうした状況が続く中、徐々にこの2つの商品は、世の中の他の「紙」に埋もれ始めました。
そこで、それぞれの紙の長所を伸ばし、短所を削って、再び世に放つこととしました。
先ず、「Mag」はそもそものコンセプトである、雑誌古紙を配合した、素朴で落ち着きのあるグレーな紙を際立たせるため、色物5色を切り離すこととし、新たに200kgという厚みを増やすことで、利用価値を高めました。
そして切り離した5色と「グラフィーエコカラー」を合体させ、グレーシュな色物として、再PRをすることとしました。(写真3)
この結果、「Mag」は潔くグレーのみとし、雑誌古紙特有の素材感をメインにし、「グラフィーエコカラー」は、従来の10色に「Mag」の色物5色と、新色3色を加え、合計18色の色揃えとし、古紙配合率30%以上で、新たに名前を「Magカラー」として、蘇ることとなりました。
こうして、再び、「グリフィーエコカラー」も「Mag」も、心機一転、名前や規格も変え、それぞれ「Magカラー」「Mag」として、お互いにいい距離感を保ちながら、再び世の荒波の中へ漕ぎ出すこととなりました。これが2013年10月のことでした。(写真4、5)
しかし、更にこの後、予期せぬ事態が、この2つの商品を待ち受けていようとは、誰が想像したでしょうか。
次回へ続く