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平和紙業株式会社
名刺…原尞さんとの思い出

2023年5月10日(水)、私にとってはショックなニュースが飛び込んできました。
敬愛する作家の「原尞(はら りょう)」氏が亡くなりました。

1989年「私が殺した少女」で、第102回直木賞を受賞。この本を読んで以来、私は、原さんの描く世界感にどっぷりとはまっていきました。

すべての小説の主人公は探偵の「沢崎」で、現実の世界では考えられないほど、クールな主人公です。年季の入ったブルーバードを乗り回し、両切りピースをくゆらせ、携帯も持たない。名字の「沢崎」以外に、名前は不明、身長も体格も、年齢も不明。絶えず反社勢力と警察組織と対峙し、読み手側に、ありとあらゆる想像の余地を与えてくれる、本格的なハードボイルド小説です。

ただし、「超」の字が付くほど遅筆で、1988年「そして夜は甦る」でデビューし、翌年1989年「私が殺した少女」、6年後の1995年に「さらば長き眠り」、9年後の2004年に「愚か者死すべし」そして14年後の2018年「それまでの明日」と、生涯長編小説はこの5冊だけです。

思い返せば2018年の1月初旬に、14年ぶりとなる新作を、3月1日に発刊する旨の案内があり、同時に、3月2日に新刊刊行記念として、東京の明治記念会館で原さんの講演会が開催されるとの告知がありました。講演会は申し込み後抽選での参加となりますが、もちろんすぐに申し込み、この14年の空白を埋めるべく過去の作品をすべて読み返し、新刊の発売を心待ちにしていました。

そんな中、新刊発売日の3月1日に、出版元の早川書房1階にある「カフェ・クリスティ」に、原さんが来店され、サインをもらえるかもしれないとの情報を得ました。

これは行かなければいけないと言うことで、当日は、会社が終わるや否や駆けつけました。
カフェでは新刊も発売しており、もちろん購入。コーヒーとサンドウィッチを注文し、原さんが現れるのを、ワクワクしながら待ち構えていました。
カフェには私の他、20名ほどのファンが私と同じように原さんを待つ中、午後6時過ぎにいよいよ原さんの登場です。

原さんは、私の席のすぐ横に座って、来場した方、一人一人と言葉を交わし、サインをし、写真を撮っていきます。
私も自分の順番が来るのを今か今かと待ち構え、ついに原さんの前に!

そして、目の前の原さんに、これまでずっと作品を読み続けてきたことと、作品に巡り合えたことに対する感謝を述べ、新刊の他に、持参した本すべてに丁寧にサインをしていただき、一緒に写真も撮ってもらうという、夢のような時間を味あわせていただきました。

翌日の3月2日は、運よく抽選にも当たった、明治記念館の講演会にも出向くことができました。
当日、公演前に、会館の1階にある、喫煙所のそばで所用の電話をかけている時、原さんが一人で、喫煙所にやってきました。慌てて電話を切り、原さんが2本のタバコを吸う間、二人きりとなった空間で、興味深い話を聞かせていただき、最新刊の表紙には弊社の紙(エコラシャ 黒 100㎏)が使われていることをお伝えし、次回作を早めに書いてくださいとお願いもしました。

講演会でも貴重な話をお聞きし、私にとってこの二日間は、忘れられないものとなりました。

さて、本題の名刺です。
新刊刊行を記念して、表面には「沢崎」の名前、裏面には「原尞」の名前が刷られた名刺が、カフェと講演会場で配られていました。
私の中では、最も価値ある名刺だと思っています。

たかが名刺、されど名刺です。
原さんは亡くなってしまいましたが、私の中では「沢崎」と共に忘れられない存在となっています。
「原尞」という作家に出会えたこと、「沢崎」に巡り合えたこと、作家と貴重な体験をさせていただいたこと、思い返せば「本」という媒体あっての事です。

そして、この名刺を見返す度に、これまでの思いを、あらためて思い起こすことになり、「原尞」「沢崎」は、私の中で、これからも生き続けるのです。

あらためて心より、原尞さんのご冥福をお祈りいたします。

(写真1) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

原尞の本です。長編は生涯で5冊のみですが、原尞のファンにとっては、貴重な5冊です。
ちなみにこの長編5冊と短編集1冊のタイトルは、「そして夜は甦る」」「私が殺した少女」「さらば長き眠り「愚か者死すべし」「それまでの明日」「天使たちの探偵」。
すべて7文字のタイトルです。

(写真2) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

早川書房1F「カフェ・クリスティ」での一枚。
あこがれていた作家との記念写真に、少々緊張しています。

(写真3) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

「カフェ・クリスティ」で最新刊「それまでの明日」にいただいたサインです。この他にも3冊にサインをしていただきました。感謝感謝です。

(写真4) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

最新刊の装丁をしたのが、早川書房デザイン室の大滝謙一郎さん。
後日、大滝さんとお会いした際に、署名サインをいただきました。
作家と、ブックデザイナーのサインの入った、貴重な一冊です。

(写真5) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

表面に「沢崎」、裏面に「原尞」の名前の入った名刺です。
「沢崎」ファン垂涎の名刺です。

(写真1) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

原尞の本です。長編は生涯で5冊のみですが、原尞のファンにとっては、貴重な5冊です。
ちなみにこの長編5冊と短編集1冊のタイトルは、「そして夜は甦る」」「私が殺した少女」「さらば長き眠り「愚か者死すべし」「それまでの明日」「天使たちの探偵」。
すべて7文字のタイトルです。

(写真2) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

早川書房1F「カフェ・クリスティ」での一枚。
あこがれていた作家との記念写真に、少々緊張しています。

(写真3) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

「カフェ・クリスティ」で最新刊「それまでの明日」にいただいたサインです。この他にも3冊にサインをしていただきました。感謝感謝です。

(写真4) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

最新刊の装丁をしたのが、早川書房デザイン室の大滝謙一郎さん。
後日、大滝さんとお会いした際に、署名サインをいただきました。
作家と、ブックデザイナーのサインの入った、貴重な一冊です。

(写真5) | 名刺…原尞さんとの思い出 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

表面に「沢崎」、裏面に「原尞」の名前の入った名刺です。
「沢崎」ファン垂涎の名刺です。