生田信一(ファーインク)
SHIBUYA TSUTAYAと東京デザイン専門学校がコラボしたZINEフェア
今回のコラムは、東京・渋谷のSHIBUYA TSUTAYAで2020年11月3日〜30日まで開催された「MEETS YOU-ZINE SCRAMBLE」と題された学生たちの作ったZINEフェアのイベントの様子をお伝えします。
このイベントは、東京・原宿にある東京デザイン専門学校の産学協同プロジェクトの取り組みの1つで、同校のビジュアルデザイン科3年生の学生たちが作ったZINEをSHIBUYA TSUTAYAの7Fフロアで展示販売する催しです。筆者は同校に勤務する者ですが、プロジェクトの全体を見ることができました。ZINEの企画・制作やイベントの開催までを報告しますので、お楽しみください。
SHIBUYA TSUTAYAで展開された、ZINE販売の特設スペース
学生たちが作成したZINEを直接届けることができるこのイベントは昨年も実施され、今年は2回目の試みになります。昨年のレポートは「SHIBUYA TSUTAYAと東京デザイン専門学校の産学連携企画──眠らない、眠れない、学生たちのZINEのマーケット『Stay up Market』を開催」を参照ください。
ZINEを企画し、紙面を制作し、製本までを行う授業課題は同校の恒例になっています。自分の思いを出版物の制作を通じて身近に体験できるので、学生にとっても講師にとっても、毎回スリリンググで楽しい課題の1つです。ZINEは主に個人的に好きなものを収めた冊子を指すのですが、読者を想定し情報を届けるという意味では、一般書籍と同じです。ましてや部数を作成し、販売するわけですから、造本や編集の知識や技量も求められます。私はこの課題が大好きです。若い人が作るZINEはとてもフレッシュで大いに刺激を受けます。思いがけない発想やアイデアにも出会うこともしばしばで、毎回楽しみにしています。
昨年は夏休み期間に開催されましたが、今年はコロナ禍の状況を見ながら、秋に開催することが決定しました。学生たちは夏休み前にプランを練り、9月〜10月で実制作を行い、10月末に搬入、11月3日にすべてのZINE作品がお披露目することになりました(写真1参照)。
展示のバナー(垂れ幕)やPOPカードのデザインも学生たちが手がけました(写真2〜4)。
ロゴ、ポスター、キャラクター、POPを学生たちが企画・プレゼン
ZINEフェアのイベントのためのタイトル、ロゴ、ポスター、POPカードのデザインは学生たちが各自考えて、ビジュアルを試作しました。考えたプランを発表するプレゼンテーションの場では、SHIBUYA TSUTAYA 森下朗義氏、アートデレクターの守田篤史氏をお招きし、講評をいただきました。
プレゼンテーションは筆者も同席させていただきました。さまざまなプランが披露され、白熱した場となりなりました。プレゼンテーションの様子を一部紹介させていただきます(写真5〜8)。
最終的にZINEフェアのタイトルは「MEETS YOU×ZINE SCRAMBLE」に決定しました。コンセプトは以下の通りです(写真9)。
「MEETS YOU×ZINE SCRAMBLE」
わたしたちが、自由な発想で、自由な表現でのびのび作ったZINEたち。
そんなZINEを手に取ってもらえたら、
言葉を交わすよりも、わたしたちの個性が伝わるのではないでしょうか。
「あなたのお気に入りのZINEを見つけてもらう=あなたと波長の合う友人と出会う」
そんなイメージで手にとって楽しんでいただけたらいいな。
そんなコンセプトの企画です。
タイトルのロゴやキャラクターが提案され、これらを元にした垂れ幕、ポスター、POPカードのデザイン案も提案されしました(写真10、11)。
展示作品のZINEから一部をピックアップ
出来上がったZINEは総数27作品、11月3日〜30日の期間、SHIBUYA TSUTAYA 7Fの特設ブースにて展示・販売されました。以下に作品の一部を紹介しましょう。
『秘匿文庫』日の下たまこ 著。本の中身が見えない袋とじの仕様。読む前に期待が膨らみ、心が揺さぶられました。この場でしか買えないという希少価値もZINEの大きな魅力で、筆者は思わず買っちゃいました(写真12、13)。
『鳥×お菓子』福永南朋子(ふくながなおこ) 著。かわいく仕上がったアートブック。鳥とお菓子のイラストのタッチが絶妙です(写真14、15)。
『メタモルフォ〜ゼ』うめざわななみ 著。ページの中に光る素材を埋め込むというのも、ZINEならではの楽しさです(写真16、17)。
『北京チェックイン』巫雲 著。情報量で圧倒されました。ジャバラ折の仕様で、特大のリーフレット仕様になっています(写真18、19)。
『CATZINE ネコの遊び日常』王霓(おうげい) 著。ネコをモチーフにした作品集。ネコは手書きタッチのイラストで描かれ、風景写真と合成する手法が素敵でした。ポストカードとシールがおまけで付属します(写真20、21)。
『MONO OMOU – ものおもう -』タナカハルキ著。日常の当たり前のことを綴ったエッセイ&アートブック。肩肘張らないナチュナルなテキスト、イラストが素敵です(写真22、23)。
『MIZUHIKI ART BOOK』神部彩香 著。今年から非常勤講師として勤めている神部彩香さんの水引アートブック。神部彩香さんが8年前に卒業制作で作成した水引アートに卒業後に制作した最近作を加えた作品集です。中綴じの糸は水引の材料である和紙の紐を使っています(写真24、25)。
駆け足で学生たちが手がけたZINEフェアの企画・制作、展示・販売の様子を見てきました。ZINEという自由な印刷媒体に学生たちの各自の思いが込められた冊子が出来上がりました。授業では、ZINE作りのプランニングの段階で、アイデアやコンセプト、表現手法をしっかり練って実制作に取り込んだ様子が伺えます。何事にも言えることですが、「考える」ということがとっても大事なような気がします。学生たちにとっても、本づくりの醍醐味や楽しさが実感できたのではないかと思います。
では、次回をお楽しみに!
東京デザイン専門学校
1966年創立。原宿にキャンパスを構えるデザイン・アート・マンガ・アニメを学べる総合デザイン専門学校。地元原宿と連携した 「原宿デザインカリキュラム」や企業と連携する「企業コラボカリキュラム」など独
所在地:
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-62-8(1号館)
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-11(2号館)
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-8-16(3号館)
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-8-7(学生サービスセンター・5号館)
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-5-16(図書室・自習室)
URL:https://www.tda.ac.jp/
SHIBUYA TSUTAYA
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