生田信一(ファーインク)
じゃばら型システム手帳リフィルカレンダー
「じゃばらんだ」
今回と次回の2回にわたって、株式会社あたぼうが手がける文具アイテムを紹介します。
今回は手帳ユーザーに人気の高いシステム手帳用カレンダーリフィル「じゃばらんだ」を取り上げます。「じゃばらんだ」は、一昨年よりネットショップで発売開始、両年とも発売後数日で完売となるほどの人気商品になりました。今回のコラムは2023年版発売を9月1日に控え、来年度版の最新情報をいち早くお届けし、さらに人気の秘密を探っていきます。
持ち歩いて、一年間を見通せる「じゃばらんだ」
「じゃばらんだ」は東京都日野市にある株式会社あたぼうが企画、設計、販売している、システム手帳用カレンダーリフィルです。株式会社あたぼうの代表・佐川博樹さんは、同社のホームページで文房具の開発販売の経緯を以下のように語っています。
「当社は、私が保有している中小企業診断士の資格を活用して、中小企業のコンサルティングを事業として運営しています。その中で、自分自身の時間管理のために、数年かけて『スライド手帳』を産み出しました。そして、文具好きであることもあって、さまざまな人にスライド手帳を見せたところ、『事業にしてみたらどうか』というアドバイスをいただき、その気になってはじめました。それが2009年のことです」
「じゃばらんだ」のユニークな響きのネーミングは、形状のじゃばら折り+アジェンダ(予定表)から想起されたものです。一枚の長い紙の裏表に年間のカレンダーが印刷されており、表面・裏面で一年間を見通すことのできる、一覧性に優れたレフィルとなっています。
サイズは5種類あります。A5スリム、バイブルのほか感度の高い女性手帳ユーザーに近年人気の高い小さめのミニ6、マイクロ5(ミニ5)のシステム手帳用サイズがあります。残りの1種類「フィールド」はロングセラーとして愛用者の多い「測量野帳」(株式会社コクヨ)にフィットするサイズです。
一年間のスケジュールを書き込むことができる横長の用紙に表裏印刷され、用紙はじゃばら折りに加工されているので、折りたためばシステム手帳に挟んでコンパクトに携帯できます。
じゃばらんだの商品仕様
じゃばらんだの商品仕様は以下の通りです。
・用紙:淡クリームキンマリ
書籍の本文用紙として定評ある上質紙。退色しにくく、文字も美しく印刷され、長時間多くの文字を読んでも目が疲れにくい。なめらかで適度にひっかかりがあるので、筆記しやすい紙として文具ファンにも人気です。一年間の耐久性を考え、手帳用としては少し厚めのものが選ばれています。
※筆記品質が保証されていない紙のため、万年筆などの裏抜け等について保証できないとしています。推奨ペンは、水性のゲルインクボールペン類。
・印刷:オフセット2色
2023年版は数字や文字を株式会社あたぼうのコポレートカラーでもある深緑に変更。祝祭日は赤文字。
・折り:片面10面・9折り(フィールドサイズのみ片面11面・10折り)
・紙面構成:表面/当年の全体カレンダー、27週(1面3週×9面)
裏面/27週(1面3週×9面)、来年の全体カレンダー
・罫線:方眼罫(※マイクロ5は除く)
2023年版 じゃばらんだ各種のサイズと仕様・価格は以下の通りです。
名称/型番/全体サイズ/1マスサイズ/方眼サイズ/穴の数/価格
じゃばらんだ A5スリム 2023/JB-0020/210×116/27x32/5.5/6穴/1,450円(税別)
じゃばらんだ フィールド 2023/JB-0021/158×89/20x28/4/なし/1,400円(税別)
じゃばらんだ バイブル 2023/JB-0022/171×95.5/22x26.5/4.5/6穴/1,400円(税別)
じゃばらんだ ミニ6 2023/JB-0023/126×79/16x22/3/6穴/1,350円(税別)
じゃばらんだマイクロ5 2023/JB-0024/105×62.5/13.5x17/なし/5穴/1,350円(税別)
※サイズはすべてmm
商品イメージは(写真1、2)を参照してください。
「じゃばらんだ」メイキングストーリー
長期間の予定を把握するため自作されたカレンダー
このカレンダーの設計をしたのは、デザイナーのhoririumさんです。20年以上前、長期スパンで全体の流れを把握する必要のある業務を担当した際、スケジュール管理にフィットするソフトウェアがなかったとのこと。そのとき紙での管理にメリットを感じて、カレンダーを自作されたのが誕生のきっかけだそうです。
設計者のこだわり
じゃばらんだの特長は、形状や折りに加え紙面のデザインにも細かな工夫、配慮が施されている点です。設計者hoririumさんのこだわりのポイントは以下の通り。
・半年ごとに長期間の予定やスケジュールの流れが把握できる一覧性の良さ
・月末月初がシームレスなレイアウト、月をまたぐ予定も確認しやすい
・書きこみやすい方眼罫入り(マイクロ5サイズ以外)
・今週は一年の何週目か、今日が何日目で、残りは何日かを明記
(画像3、4を参照)
流通関連、総務など毎年、定例化された業務がある方には使い勝手の良いカレンダーです。見開きごとに約1カ月を見ることができるレイアウトで、折りたたんで必要な月だけ開くと、通常のマンスリー手帳のようにも使えます。前月から、次月への継続予定も確認しやすいです。
経過日数と残日数は、納期までの日数把握に役立つとhoririumさん。たとえば今日が124日目、納期が6月4日(154日目)とすると、154ー124=30日後、という計算にも使えるそうです。
手帳ユーザーに無料配布、そして販売へ
hoririumさんは使いながら自作カレンダーを改良、手帳のコミュニティのメンバーに無料配布。このカレンダーを見た株式会社あたぼうの佐川さんが販売を提案されました。佐川さんご自身も学生時代から熱心な手帳ユーザーで、自作のバインダーやレフィル「スライド手帳」を企画・販売しています。
「じゃばらんだ」は2015年頃から販売を開始。ユーザーにSNS等で拡散され各メディアでも紹介されて認知度が上昇。システム手帳人気の再燃もあり「使ってみたい!」というユーザーが増え始めました。
2021年版より機械折りで量産体制に
人気が上がり「じゃばらんだ」は発売開始、数日で売り切れる人気アイテムに。そこで2021年版からは機械折り加工に切り替えたのだそうです。
身近で地図やフロアマップ、DMなどじゃばら折り加工された印刷物をよく見かけますが、印刷の後加工の作業面から見ると、長い紙を折数の多いじゃばら折にする工程は、実は簡単なことではありません。量産によりコストを抑えるためには、折り加工に専用の機械を使いますが、一般に利用されている折機は性能によって折ることのできる紙のサイズ、折りの数、紙の厚み等が決まってきます。
「じゃばらんだ」の用紙は手帳で使うには、わりと厚めで腰のあるタイプ。この紙を機械折りで9折りのじゃばら折りに加工をしてくれる企業を探したところ、東京都江東区にある有限会社篠原紙工が協力を申し出てくれました。篠原紙工は製本・加工を手がける製本会社。マジック折りやフラップ折り、いいかげん折りなど、オリジナリティーあふれる折り加工を開発。加工工程に工夫を施し、特殊な折りも製造ラインにのせ、量産体制を実現してきた実績があります。
「じゃばらんだ」の折り加工を撮影した参考動画をご覧ください。一般の折り加工機をカスタマイズして、9折りのじゃばら折りを実現しています(ムービー1)。
じゃばらんバサダーの活動
あたぼうのサイトでは、数々のじゃばらんだの使用例を紹介しています。
→じゃばらんバサダーの活動の記録
ここでは仕事やプライベートの予定、日記、天気や気温の記録などじゃばらんだユーザーたちのさまざまな活用法を見ることができます。筆記具を変えて印象的な見栄えにしたり、毎日イラストを書き込んだり、シールを貼ったり、スタンプを押したりと使い方はさまざまです。毎日のコマに緻密なイラストを書き込んでアート作品に仕上げている事例も紹介されていました。
新登場の「じゃばらんだ・ガントチャート」
じゃばらんだの新シリーズとして、ガントチャートが6月1日に発売されました(写真5、6)。ガントチャートは、プロジェクトのスケジュール管理などに使われる表です。
最近では、プライベートでの習慣化の定着に役立つ記録として、ハビットトラッカーにもよく利用されます。たとえばウォーキングやストレッチなど、自分の毎日に良い習慣を根付かせるため、行った日をチェックするという使い方です。
「じゃばらんだ 2023年版」はいよいよ2022年9月1日発売予定。私もおしゃれなカバーのM6システム手帳を新調して「じゃばらんだ」を使ってみたいと画策しています。
株式会社あたぼうには、ほかにも思わず使いたくなる文具があります。次回は「飾り原稿用紙」について、ご紹介できたらと考えています。
では、次回をお楽しみに。
(TEXT:酒井さより、編集:生田信一)
株式会社あたぼう
2009年設立、東京都日野市、代表取締役・佐川博樹氏。経営コンサルティング、IT導入コンサルティングのほか、時間管理や文具業界にも造詣が深く、オリジナルのスライド手帳やリフィル、飾り原稿用紙(「碧翡翠」は2016年日本文具大賞デザイン部門グランプリ)など個性的な文房具の開発・販売を行っている。
住所:〒191-0052 東京都日野市東豊田1-53-16
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