平和紙業株式会社
良く分からない紙の世界 -「紙」と「板紙」①-
一口に「紙」と言っても、大きく分類すると「紙」と「板紙」に分類されています。
分類されてはいるものの、この2つの定義はと言うと、これがまた良く分からないのです。
JIS(日本工業規格)では、「紙」「板紙」を、どう定義しているのかと言うと、
JIS P0001 4001「板紙」木材パルプ、古紙などを原料として製造した厚い紙の総称。
JIS P0001 4004「紙」植物繊維その他の繊維を膠着(こうちゃく)させて製造したもの。
なお、広義には、素材として合成高分子物質を用いて製造した合成紙のほか、繊維状無機材料を配合した紙も含む。
しかも、「一般的な概念として、「紙」という名称を4004及び4001で定義した紙、板紙の両方を指すために用いることもある。」とも書いてある。
つまり、そんなに区別しなくてもいいよってことかと、思えてきます。
更に、「目的によっては、坪量225g/㎡未満を紙、225g/㎡以上を板紙とみなすことがある。
しかしながら、紙と板紙の区別は、主としてその材料の特性、場合によっては、用途に基づいて行っている。折畳み箱用板紙及び段ボール原紙といった材料の多くは、坪量が225g/㎡未満でも“板紙”とみなされているし、225g/㎡以上でも、吸取紙、フェルト紙及び図画用紙は、一般的には“紙”とみなされている。」とも書かれています。
つまり、大雑把に解釈すると、紙には「紙」と「板紙」という区別がありますが、別段、明確に区分けしている訳ではないので、ひっくるめて「紙」と呼んでもいいし、区別するなら、米坪225g/㎡をセンターにして、それより厚いのが「板紙」で、薄いのが「紙」としてください。
とは言え、用途や目的によって、必ずしもこれが当てはまるものではないので、あとは自由に使い分けてね。ってことらしい。
更に、紙業界では、「紙」は単層抄き、「板紙」は多層抄きとも言われ、何層も重ねて紙を作ると厚い紙が出来るので、多層抄きを「板紙」とし、重ねずに一層だけで紙にしたものを「紙」と呼ぶと言われてきました。
しかし、単層抄きでも厚い紙ができたり、多層抄きでも薄い紙が出来たりするので、必ずしもこれが正しいとも言い切れません。
更にここからが良く分からない話です。
紙の寸法を良く見ると、印刷用紙など比較的薄い紙、所謂「紙」の代表的な寸法は、四六判(788×1091㎜)とか、菊判(636×939㎜)とかが、一般的だと思います。
しかし、パッケージ用途など比較的厚い紙、所謂「板紙」の代表的な寸法は、L判(800×1100㎜)、K判(640×940㎜)とかが、一般的ではないでしょうか。
「紙」と「板紙」では、同じような寸法だけど、微妙に違います。
「板紙」の方が、「紙」より、若干大きい。
明らかに、「紙」と「板紙」を区別しているし、区別する必要がどこかにあるに違いありません。
以前聞いたことがあるのは、厚い紙は、紙を作って仕上げる時に、ミリ単位の精度が出せないので、切りのいい数字にまとめたと言うもの。特にK判(640×940㎜)と菊判(636×939㎜)では、縦横の差は、わずか1㎜です。更に「板紙」の見本帳をあれこれ見ていると、四六判でも、L判でもない、790×1090㎜という寸法があることに気づきます。
四六判(788×1091㎜)と、短い辺が2㎜、長い辺が1㎜違うだけです。
確かに寸法精度によるものだとすれば、何となく納得もできます。
しかし、正確なことは分からないままです。
とは言え、「板紙」の中にも四六判や、菊判の寸法のものもあり、「紙」と「板紙」の明確な区分はありません。
「紙」と「板紙」は区別されていながら、その境界線が曖昧で、混沌としています。明確でないが故に、奥深いと言えば奥深いし、あやふやといえばあやふやです。
しかし、寸法、厚さ、重さの関係の中で、せめぎ合う「紙」と「板紙」は、あるところで共存し、あるところで反発する好敵手でもありそうです。
次回もまた、この「紙」と「板紙」の曖昧模糊とした、良く分からない紙の話を続けます。