三星インキ株式会社
UVインキについて⑤
今回はLEDを光源とした硬化方法について説明致します。
おさらいになりますが、一般的なUVランプの光源は波長が270-400nmという様々な波長を有する光を集合させて発光させるのに対して、LEDランプの光源はある特定の波長だけを有する光を発光させます。
前回のコラムでも書きましたが、波長が短い光ほど透過性は増しますが、周りに与えるダメージは大きく、物体を攻撃して劣化や変化などを引き起こす原因にもなります。
つまり一概に紫外線と言っても、X線などに近い270nmの波長を有する紫外線と、可視光線に近い400nmの波長を有する紫外線では、それぞれの光の有する特性は異なるのです。
この紫外線の内、できるだけ人体や環境に影響を与える可能性のある波長の光を取り除き、特定の波長(単波長)の紫外線だけを照射させる方法、それがLED光源と呼ばれています。
そしてLED光源を印刷物に照射させる事で硬化する方法がLED印刷と呼ばれています。
一般的にLED印刷に使用されるLED光源には、365nm、385nm、395nmのいずかれの波長を有する光を発光する事ができる光源(LEDランプ)が使用されております。
今までコラムを読んで頂いた方は、このような波長の光で大丈夫なの?と思われる方がいらっしゃると思います(居て下さると嬉しいですが・・・)。
これらの波長は非常に可視光線に近い波長の光であり、透過力はもっと短波長の光に比べると弱くなります。
つまりLED印刷に使用される光源は、UV印刷に使用される光源に比べて反応性が低く、架橋反応を起こしにくいのです。
従って、LED光源でも皮膜を形成させる為に、インキ面での対応が必要となったのです。
つまり、インキメーカーによって方法は異なりますが、一言でいえばインキの反応性(感度)を高める事を目標としたのです。
簡単に言うと、光反応開始剤の添加量を増やす、架橋の基となる官能基を多く有するモノマーやオリゴマーを使用する と言った方法が挙げられます。
以上の通り、インキ面の反応性を高める事で、LED光源でも皮膜を形成する事ができるようになったため、UV印刷からLED印刷に徐々に置き換わってきています。
UV印刷がLED印刷に置き換わる事によるメリットとしては、以下の様な点があります。
UV印刷 | LED印刷 | |
ランプ寿命が長い | 1,000時間程度 | 15,000時間程度 |
原反の選択 | UV光源は様々な波長の光が出ているため、光だけではなく熱も発生するため、熱に弱い原反は使用できない | LED光源は短波長のため、熱の発生もほとんどなく、熱に弱い原反も使用できる |
設置が簡易 | 短波長の紫外線は空気中の酸素(O2)を攻撃してオゾン(O3)を発生させ、かつ上記の通り、熱の発生もある事からダクト等を設置して排出させる必要がある | オゾンを発生させる波長を含まないので、オゾン及び熱の発生がないのでダクト等を設置する必要はなく、照射機のみの設置で対応可。但し価格は高価である |
待機電力 | UV光源は瞬間的なオンオフの切替ができず、印刷の付帯作業中、継続して稼働させていなければならない | LED光源は瞬間的なオンオフの切替が可能であるので、照射させる寸前までオフ(通電していない)状態にできる |
このように新しく印刷機に設置する場合等は、初期投資はLED光源の方がかなり高くなりますが、長期的な目で見るとメリットもあると考えられます。
ただ、前述の通り、LED光源はUV光源に比べてインキを硬化(架橋)させる能力が弱い事が分かっており、インキメーカーからの視点として、LED印刷する際は以下の点に留意して頂ければと思います。
①インキはできるだけ反応性の高いインキを使用する(メーカーによってLED対応や高感度型等というように呼び方が異なりますので確認の上、ご使用して下さい)。
②高濃度の印刷効果を再現する際は、厚盛りで1度印刷するのではなく、標準盛りを重ね刷りして再現する。
③印刷速度はできれば少し落として
また、墨・金・銀インキは他の色インキに比べると硬化性が劣る傾向にありますので、使用する際は上記に点について特に留意して下さい(これはUV光源でも同様の事が言えます)。
※)墨インキ:色材であるカーボンブラックが光を吸収する
金・銀・インキ:色材が金属(金:真鍮、銀:アルミニウム)であるため光を反射する
なお、弊社もUV光源及びLED光源で硬化するインキを製造・販売しておりますので、ご興味があればご連絡頂ければと存じます。