web-magazine
web-magazine

三星インキ株式会社
UVインキについて⑨
UVインキが苦手とする印刷方式

UVインキが苦手とする印刷方式 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

前回は湿し水を使用して印刷する方法(平版印刷)でのUVインキに関する問題を書かせて頂きました。
現在UVインキを使用した印刷方式として、平版印刷以外ではフレキソ(凸版)印刷、インクジェット(無版)印刷などがあります。
しかし、グラビア(凹版)印刷、スクリーン印刷用のUVインキというのはあまり耳にしないのではないでしょうか。

これはいったいなぜなのでしょうか?
考えてみます。

UVインキが苦手とする印刷方式 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

まずはグラビア印刷から

一般的にグラビア印刷は、他の印刷方式と比較すると、以下の特徴が挙げられます。
①印刷速度が速い(100~200m/min程度)
②インキ膜厚が大きい(5~20ミクロン)
③インキ粘度が低い(軟調である)。
④フィルム等の非吸収紙への印刷が多い

上記のグラビア印刷に必要な特徴は、実はUVインキが苦手な部分が多いのです。

上記①~④に必要な性能として、
①印刷速度が速いと紫外線が照射される時間も短くなるため、インキとして早い硬化性が必要となる。
②インキ膜厚が大きいと内部まで硬化しにくくなるので、①と同様に早い硬化性が必要となる。
③インキ粘度を下げるには低粘度成分を使用しなければならないが、低粘度の成分(モノマー)は硬化性が遅い傾向にある。
④フィルム等に印刷する際は原反への濡れ性を向上させるために硬化性が遅い方が良い。

という事から、上記①~④の性能をすべて網羅することは相反する性能が必要となることから、グラビア印刷用のUVインキというのはあまり聞かないのだと思います。(その他にもグラビア印刷で印刷している印刷物の単価が比較的安価であるため、UVインキを使用すると価格的に合わないとも聞いています)。

写真1 | UVインキが苦手とする印刷方式 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

写真1 | UVインキが苦手とする印刷方式 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

次はスクリーン印刷

スクリーン印刷は孔版印刷と呼ばれる印刷方式で、他の印刷方式に比べるとインキ盛りが圧倒的に厚く、印刷面を指でなぞると凹凸が分かるものもあります。
このような厚膜の場合は紫外線を照射しても透過しにくいため、内部が未硬化状態となりやすい傾向となります。
そのために反応性を高める(インキ面及び設備面)ことが必要となりますが、反応性を高めると、皮膜の体積収縮が発生しやすいなどの現象が起こることから、あまりスクリーン印刷には使用されない傾向にあります。
しかし、現在は新たな光反応開始剤や樹脂によって、硬化性や体積収縮などの問題点もかなり改善されているとの事です。

このように、瞬間的に皮膜を形成し、短納期で印刷物が完成するUVインキの使用量は年々増加していますが、特有の不得意な部分もありますので、その点は十分考慮してご使用頂ければと存じます。

なお、先日当コラムを愛読して頂いている方と実際に会う機会に恵まれました(ファン第1号と自負されていました)。
当コラムを心待ちにしているとの事で、全コラムをプリントアウトして机の上に置いてあり、いつでも読める状態にしていますというお言葉を頂きました。
やはり嬉しいものですね。
こういうお言葉を頂けると。

私も入社当時、色々な参考書を読み、講演を公聴するなどして印刷に関して勉強しましたが、内容的にやはり専門的であり、理解するのが難しいことが多かった記憶がありました。
当コラムの執筆のお話を頂いた際、できるだけ多くの方にご理解頂けるように自分なりに咀嚼し、お伝えすることを目標として書かせて頂いており、少なからず目標は達成できたのかなと感じており、更に今後の活動の糧にして参ります。