平和紙業株式会社
紙の白さを考える③
昨年の6月に、日本製紙(株)から、『カップ原紙事業強化を図るため、日本製紙クレシア興陽工場において、現在高級白板紙などを生産している2号抄紙機(1966年稼働)を2022年11月末に停機し、2023年度後半を目処に同マシンをカップ原紙の塗工専用設備に改造します。』とのリリースが発表されました。
この2号抄紙機では、弊社の取り扱う高級印刷用紙や、高級白板紙を生産しており、それらの商品が今後供給できなくなることとなったわけです。
以前にも書かせていただきましたが、同様の商品を他の生産設備で作ることは、なかなか大変なことで、同じようなスペックで、同じような紙を作ることのできる、新たな製造メーカーを探さなければなりません。
抄紙機が変われば、紙質も、色も変わることを承知の上で、より従来の商品に近いものを作り、これまで長年にわたってご利用いただいてきた、多くのお客様のご迷惑にならないようにしなければなりません。
抄紙機停機のリリース後、生産できる製造メーカーを探し、試抄を繰り返し、「全く同じ」とはいかないまでも、それに近い商品を何とか取りそろえることができ、現在切り替えに向けてご案内の途中です。
さて、この商品の中に、「北雪(ほくせつ)」というケント紙が含まれていました。名前の通り白い雪のような白さをもつケント紙です。
この「北雪」は、謎の多い商品で、そもそもは、1975年に「白眉ケント(はくびケント)」という名前で発売されています。
「白眉」とは、中国の故事に基づく言葉で、「最も優れている人や、物の例え」に使われます。名前を付けた人は、なかなか学のある方だったのかもしれません。
ところが、そのたった4年後の1979年に、突然「白眉ケント」から、「北雪(北雪ケント)」に、商品名を変更します。何故名前を変更したのか、今となっては分かりません。
そもそも「北雪」という商品名は、かつて北海道にあった、北日本製紙という製紙メーカーで生産されていた印刷用紙に付けられていた名前です。
北日本製紙は、旧王子製紙の流れを汲み、1947年に設立、1970年に王子製紙と合併し解散しています。
この北日本製紙の江別の工場が、現在の王子製紙江別工場になっています。
さて、この北日本製紙で生産されていた「北雪」は、1959年に発売されていますが、この「北雪」はケント紙ではなく、多分上質紙だったと思われます。北海道で生産された白い上質紙というところから、「北雪」と名付けられたのではないでしょうか。
弊社は1959年に「北雪」という名前を商標登録出願し、1960年に商標登録(第563782号)しているところから、弊社専売品だったと思われます。しかし、1970年には、王子製紙と合併し、解散後は、継続生産されなかったようで、名前は残っても、商品が存在しないこととなったのです。
そして前述の通り、1975年に「白眉ケント」が発売されます。
ここからは、あくまで想像の範囲ですが、誰かが、「北雪」という名前が商標登録されていることに気づき、「こっちの方が、雰囲気あるんじゃない?」と言い出し、「折角商標登録してあるんだから、使わなきゃ損じゃん!」ってなわけで、世に出たばかりではあるものの、「白眉ケント」から、「北雪」に変えちゃえってことになったんじゃないかと思うわけです。
(丁度、「北雪」の商標が更新されるタイミングでもあったのも、その一因かもしれません。)
なので、「北雪ケント」ではなく、「北雪」にしたのは、商標登録が「北雪」だったからじゃないのか?と想像するのです。
この「北雪」は、停機する、2号抄紙機で生産されていましたが、他の製造メーカーで、あらためて生産することとなりました。商品名は継続して「北雪」にしたかったのですが、製造メーカーの都合により、「北雪CoC」と名前を変えました。
北海道で誕生した「北雪」の名前は、静岡を経由して、四国に引き継がれることになりました。
しかし、商品の規格はそのままの寸法、連量構成です。また、引き続きFSCⓇ森林認証紙として生産しており、環境対応型商品でもありますし、インクジェット対応でもあります。今後も継続して「北雪」をご愛顧いただければと思います。
余談ですが、時々、新潟にある株式会社北雪酒造さんと、何か関係があるのですか?と聞かれたりしますが、全く関係はありません。
同じ「北雪」という商品を販売していますが、北雪酒造さんの「北雪」は、酒類での商標を、弊社の「北雪」は、紙類での商標を取得しているため、お互いに「北雪」ではありますが、全く抵触しませんので、ご参考までに。
【北雪CoC】の商品詳細はこちら
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/1901230.html