三星インキ株式会社
透かし印刷について3
今回は、なぜ透かし印刷といえば『平版印刷』と言われることが多いのか?ということを考えてみたいと思います。
改めて、高い透かし効果を得るためにはインキ成分を紙の奥深くにまで存在させる必要があり、その為に低粘度のインキを大きな盛り量で薄い原反に印刷することが必要であるため、グラビア・フレキソ印刷といった印刷方式の方が効果が得やすいと書かせて頂きました。
ですが、印刷工程的に難しい平版印刷を用いた透かし印刷が広く普及しています。
確かに平版印刷でも透かしインキを使用し、盛り量を上げて薄い原反に印刷すれば透かし効果を得ることができますが、グラビア印刷・フレキソ印刷よりも効果が劣ることは確実であります。
ということは、それ以外の要因が大きいのだと思われます。
これはあくまで個人的な推測ですが、『なぜ透かし効果を付与させる必要があるか?』ということが主な要因だと考えます。
透かし印刷を行う大きな目的の一つとして偽造防止効果の付与が挙げられますが、この用途では透かし効果付与部を広い面積で印刷することはまずありません。
偽造防止効果はどこか一部分に透かし効果が付与されていればそれだけで問題なく、また偽造防止効果を付与した印刷物を大部数印刷するということもあまりありません。
このように部数も絵柄面積も少ない意匠性を付与した印刷物を得るには平版印刷が最も適しているからです。
それに対して、グラビア印刷などは上記印刷条件での印刷が効率的に得意ではないため、平版印刷が広く使われていたのだと考えます。
ですが、昨今は平版印刷以外でも透かし効果を付与させる方式が広がってきています。
これは透かし効果を付与させる意図が変わってきたからです。
昔は窓付き封筒の窓部分やクリアファイルなどはプラスチック製品が使われてきましたが、『脱プラスチック』という観念から代わりに紙が使われ始め、プラスチックの特長である透明性という意匠性を透かし印刷を用いて付与するという考えが増えてきました。
これらは偽造防止効果の付与とは違って、広い面積を塗布する必要があるため、平版印刷にこだわらず、ほかの印刷方式でも印刷しても採算がとれるようになってきました。
さらにインキ面ではUVインキを用いた透かし印刷が多くなってきました。
これは今までの透かしインキでは不乾性成分を使用するため、印刷時に裏移りやブロッキングなどの発生、紙中に成分が定着するまでに多くの時間が必要、経時による黄変の発生などが懸念されてきましたが、UVインキを用いることで、この点が解消できるようになります。
ただ、やはり透かし効果を付与するためには不乾性成分(UVの場合は未硬化成分と言った方が良いのでしょうか?)は必須なので、通常のUVインキに比べると皮膜形成は遅いですが・・・・
このように、透かし効果を付与する目的が変わってきたことで、今後は『透かし印刷 = 平版印刷』という考えは古くなっていくと思われます。