三星インキ株式会社
印刷効果面以外で意匠性のある特殊インキ
今回は印刷効果面以外で意匠性のある特殊インキをご紹介します。
・香料インキ
香料インキは読んで字の如く、印刷物に香りを付ける事ができるインキであり、視覚ではなく嗅覚によって付加価値を付ける事を目的に使用されます。
以前は香料を直接インキに混ぜ込んで使用していましたが、時間経過と共に香り成分が揮散してしまい、実際にユーザーの手元に届く頃には効果がなくなっていたなどの問題もありました。現在では香料をマイクロカプセルに注入し、何らかのシェア(爪やコイン等で擦るなど)がかかる事によってカプセルが破壊されて香りが揮散するタイプが多く、以前に比べて飛躍的に長い期間、香りを保つ事ができるようになってきました。
なお、マイクロカプセルを使用した香料インキは、前述の通りシェアがかかる事でカプセルが破壊されて香りが放出される事から、印刷時にシェアがかかりやすい平版印刷には不向きであります。ただ、現在はマイクロカプセルの強度も改善され、平版印刷でも使用できる香料インキが登場していますが、少なからずカプセルの破壊は見られる為、印刷現場はものすごい香りが充満して大変ですが・・・。
・スクラッチインキ
スクラッチインキとはクジや抽選券などの見られたくない部分を隠蔽させるインキであり、その部分を爪やコイン等の硬いもので擦るとインキが剥がれ、隠蔽させた部分が現れて答えや当たり等を判別できるようになります。
一般的にスクラッチインキは、隠蔽性を付与させる為に金属であるアルミを色材として高い顔料濃度で使用する事が多く、一般的な爪やコインなどで擦るタイプのスクラッチ方法を再現するには以下の方法を行う必要があります。
(1)通常に文字や絵柄を印刷する(但し、見られたくない部分は透過を防ぐために濃色等を使わない、あるいは厚盛りとしないよう注意する)。
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(2)スクラッチ性を容易とし、かつスクラッチ時にかかるシェアによって見られたくない文字や絵柄を傷つけないようにする為、隠蔽させたい部分に剥離性の良好な透明ニスを上刷りする(できるだけ厚盛りで印刷する)。
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(3)剥離型透明ニスの上に隠蔽性を付与させる為にスクラッチインキを上刷りする(できるだけ厚盛りで印刷する)。
なお、隠蔽性の高いスクラッチインキを上刷りする事で、見られたくない部分の文字や絵柄を隠す事はできますが、裏面から見ると見られたくない部分が透けて見える事もあります(『頭隠して尻隠さず』ですね)。従って、この方法を行う時はできるだけ厚みがある不透明性の高い用紙を使用し、裏面にも黒や明度の低い(グレーなど)色のインキを印刷して透けて見えないようにする等の処方も必要となります。
また、上記方法では隠蔽部(スクラッチインキ)を爪やコインで擦る為に削りカスが必ず出てしまうので、隠蔽部を削り取るのではなく、セロテープなどを隠蔽部に貼って剥がすと下地が見える(爪などでは擦れ取れない)方法や、見られたくない文字や絵柄を硬い金属(例えば酸化チタンなど)を使用したインキで印刷し、その部分をコイン等の金属で擦る事で、逆にコイン等が削り取られ、文字や絵柄が黒く浮き出てくるという方法もあります(エコスクラッチと呼ばれています)。