平和紙業株式会社
閑話休題 ―書籍の行方―
時々話題に挙げておりますが、出版界における紙書籍と電子書籍について、2024年の出版市場規模が発表されました。
2024年おける出版の中で、紙媒体(紙書籍+紙雑誌)は、統計を取り始めた2007年以降、緩やかな減少を続けています。反面、電子媒体(電子コミック+電子書籍+電子雑誌)は、統計に計上された2009年以降、右肩上がりで増加を維持しています(グラフ1参照)。
(グラフ1)統計を取り始めた2007年からの推定販売金額の推移です。
2007年当時は、書籍には、紙の書籍と、紙の雑誌しかありませんでしたが、2009年から電子書籍(雑誌、コミック、書籍)が世に登場します。
その後、電子書籍は右肩上がりで増加傾向、紙媒体は、右肩下がりで減少傾向にあります。
2024年の紙の書籍の推定売上額は5,937億円で、前年比95.8%%、紙の雑誌(コミック含む)は4,119憶円で、前年比93.2%。合計で1兆56憶円、前年比94.8%となり、かろうじて1兆円を上回りました。2007年には2兆853憶円あったことを考えると、半減したこととなります。
一方、電子コミックは5,112憶円で、前年比106.0%、電子書籍は452億円で前年比102.7%、電子雑誌は、86億円で前年比106.2%。合計5,660億円で、前年比105.8%でした(表1参照)。
(表1)直近の書籍の詳細推移です。
紙の書籍は、減少傾向の中、2021年に増加に転じますが、2022年以降減少を続けています。
紙の雑誌は、減少を続けています。
電子媒体は、電子書籍が緩やかに増加傾向、電子雑誌は、2029年以降減少傾向にありますが、この分、電子コミックが伸びている結果、全体で電子媒体が増加傾向にあります。
紙媒体と電子媒体の合計では、1兆5,716億円となり、前年比98.5%となっています。
紙媒体と電子媒体を合算した出版市場は、2007年以降、減少を続けてきた中、2018年に底を打ち、2019年から2021年まで増加傾向にありましたが、2022年から再び減少傾向が続くようになりました。
この2019年から2021年の間は、コロナ禍による巣ごもり需要が、電子媒体をはじめ、書籍全体を押し上げることになったと思われます。
しかし、コロナの終息に合わせて、再び書籍売上は減少に転じます(表2参照)。
(表2)2007年からのそれぞれの推定販売額の推移です。
2005年以降は推定値です。直近の進捗率からシミュレーションしたものですが、紙の書籍・雑誌の減少が、予測よりも大きい反面、電子媒体の増加にブレーキがかかった状態となり、なかなか予測が難しいのですが、いずれにせよ、2029~30年には、電子媒体が、紙媒体と逆転する予測です。
2022年はこれまで前年比で20%前後の成長を続けてきた電子媒体にブレーキがかかり、2022年以降7~8%台に低下してきています。コロナ特需で増加したユーザー数の伸びは落ち着き、市場は成熟期に入ったように感じられます。しかし2022年以降、電子媒体の進捗率が鈍化したとはいえ、電子媒体への移行が進んでいることに変わりはありません。
10年前と比較すると、2014年の電子媒体の市場は約1,144憶でしたが、2024年は、5,660憶円となり、約5倍の市場規模に成長しています。
一方、紙媒体合計は、2014年に約1兆6,000憶あった市場が、2024年には1兆円へと縮小、37%減少し、6,000憶の市場を失ったことになります。
紙媒体の減少は、読書離れや、書店の閉店が続いていることなども、その要因の一つと考えられます。
特に紙の雑誌に関しては、2007年に約1兆2,000憶あった市場が、2024年には、4,200憶へと縮小し、65%も市場規模が縮小していることになります。
2022年に電子媒体の市場規模が、紙の雑誌の市場規模を抜き、その後差は開く一方となっています。大きな理由の一つとして、「MORE」「Mart」「steady.」「ポポロ」等の休刊や、「週刊朝日」などの週刊誌の廃刊が相次いだことにあります。
またコミックスも、アニメ化などによるヒットもあったものの、大きな影響を受けることはありませんでした。
もはや雑誌の減少は歯止めが効かない状況となり、ますます雑誌不遇の時代が加速していくものと思われます。
情報伝達という役目を、印刷媒体は、電子媒体へと譲り渡す時期が近づきつつあり、いずれ電子媒体が出版市場の中核になることは間違いないことだと思います。
これまでのシミュレーションを見る限りでも、遅くとも2029~2030年頃には、電子媒体と、紙媒体が、推定売上額で逆転するであろうと予測されます。
1月に、第172回の芥川賞、直木賞の受賞者が発表されました。
受賞作品の中には、弊社取り扱いの用紙が使用されたものもあり、販売増を期待していたのですが、可もなく不可もなくといった状況です。
かつては、受賞作品は、出版部数も多く、紙業界も期待したものでしたが、昨今では、初版、重版部数もさほど多いものでは無くなってきました。
書籍という分野だけの数字ですので、紙全体の市場規模との比較は難しいのですが、世の中がデジタル化に向け進む中、紙の存在価値が問われる時が、もうすぐそこまで来ている気がします。
紙の書籍においては、本の重みとか、ページをめくる感覚とか、手触りとか、人の感覚に頼らなければ、紙を使う意味が無くなってしまうのではないでしょうか。
もはや、「無くてもいいけど、あった方がいい」程度の存在になってしまうのでは?と、危惧するのは私だけでしょうか?
(グラフ1)統計を取り始めた2007年からの推定販売金額の推移です。
2007年当時は、書籍には、紙の書籍と、紙の雑誌しかありませんでしたが、2009年から電子書籍(雑誌、コミック、書籍)が世に登場します。
その後、電子書籍は右肩上がりで増加傾向、紙媒体は、右肩下がりで減少傾向にあります。
(表1)直近の書籍の詳細推移です。
紙の書籍は、減少傾向の中、2021年に増加に転じますが、2022年以降減少を続けています。
紙の雑誌は、減少を続けています。
電子媒体は、電子書籍が緩やかに増加傾向、電子雑誌は、2029年以降減少傾向にありますが、この分、電子コミックが伸びている結果、全体で電子媒体が増加傾向にあります。