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平和紙業株式会社
進化し続ける紙 「ディープマット」

2006年当時、観光立国推進基本法が制定され、インバウンド需要の増加が見込まれる中、日本をPRできる商品開発が必要となりました。
そこで、10年後を見据えたパッケージ用紙を開発テーマとし、和を基調にした、使い勝手の良い濃色を基本コンセプトに商品開発が進められることとなりました。
当時、パッケージ用紙と言えば、白い厚紙が中心で、印刷で色を付けることが当たり前のように行われていました。そこで、肌感のある厚紙で、濃色を中心とした色揃えのある紙で、この現状を少しでも変えられればと言う思いを形にし、2007年に「ディープマット」という名前の商品を市場に投入することとなりました。

2007年10月に、11色の色数と4つの厚み(220、265、360、450kg)の合計44アイテムの商品として、且つ古紙40%以上、バガスパルプ10%以上を配合した、環境配慮型の商品として、販売をはじめると、想像以上に好評をいただくことになりました(写真1)。

(写真1) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)ディープマット発売時は、11色の色ぞろえでスタートしました。

好調な滑り出しに気分を良くしていたのも束の間、発売してほどなく2008年にはリーマンショックに襲われることとなりました。市況は冷え込み、高級感より割安感を求める風潮に転じ、滑り出し好調だった「ディープマット」もこの試練の中に立たされることとなりました。

そこで、パッケージ向けの厚い紙だけではなく、もう少し汎用性を持たせるため、一般的な紙製品から、書籍の見返し、並製本の表紙にも使えるよう、100、130、180kgの厚みを増やすこととしました。
色味と質感を合わせながら、2009年10月に3つの厚みを増やした「ディープマット」が世に出て行きます。

この厚みを増やしたことにより、狙い通りに、出版や、紙製品関係でも需要が増加し、落ち込んだパッケージ関係を補填できるようになってきました。
その後、リーマンショックが一段落するのと歩調を合わせ、「ディープマット」は堅調に推移し始めます。

順調な販売の中、「ディープマット」の少しバランスの悪い色の方向性と、少し暗い色合いを補完することで、更なる需要を開拓したいと考え、色の方向性を調整し、濃くて明るい色を増やすことで、色バランスの良い商品にするために2010年に新色の開発に取り組むこととなりました。

従来の色と、新色の色との整合性を取りながら、使いたくなるような色バランスを持った商品に向け、検討を重ねる中、2011年3月に東日本大震災が発生します。
リーマンショックから立ち直ってから間もないのに、再び、日本経済に大きなダメージを与えることとなりました。
自粛の波に襲われ、華美なもの、高級なものから、質素なもの、コストメリットのあるものへと、経済自体が縮小していきました。

しかし、こんな時だからこそ、この閉塞感を打破する必要があるとの思いから、新色開発の手を休めることはありませんでした。そして、2011年10月に新色6色を追加し、合計17色の「ディープマット」を世に送り出すこととなりました(写真2)。
発売当初44アイテムだった「ディープマット」は、この時点で、119アイテムの商品に成長していました(写真3、4)。

(写真2) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)新たに加えた新色は、6色。全体の色バランスを整えるため、鮮やかさも含めた色合いを追加しました。

(写真3) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)追加した6色を含め、17色の色ぞろえとなりました。

(写真4) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)17色の色をそろえた際に作った、サンプル帳です。
印刷は無く、すべて箔押しと、空押しのみでした。

震災の復興が進むにつれ、世の中の景気も徐々に上向き始め、2020年開催の東京オリンピックに向け、観光庁主導で、4,000万人のインバウンド客を呼び込むことが目標にもされました。
この結果として、インバウンド需要を見込んで、貼箱需要も増加すると予測され、「ディープマット」にも貼箱向けの更に薄いアイテムが必要となってきました。

そこで2014年に70kgをターゲットにおいて、薄いアイテムの開発に取り掛かりました。
しかし、そもそも「ディープマット」を抄いている機械が、厚い紙を抄くには適していても、薄い紙を抄くことには、対応していないため、マシンスペックの見直しや、パルプ配合の見直しなど、製造メーカーの協力の元、約1年がかりで薄い紙の生産も可能となり、2016年5月に薄い厚みの70kgを加えることとなりました。

その後東京オリンピック開催の2020年に向け、インバウンド需要も右肩上がりとなり、2019年には3,000万人を超える訪日観光客数となりました。こうした需要に下支えされながら、「ディープマット」も堅調に推移し、多くの方にこの名前を憶えていただくことが出来ました。

が、2020年に世界中を、コロナ(COVIT19)がまん延すると、全てが一変することとなりました。
緊急事態宣言が発令され、全ての行動が制限され、経済活動は一気に冷え込み、停滞することとなりました。

こうした中、ほぼ時を同じくして、弊社は、SDG’sの取組みを開始しました。この一環として、「ディープマット」を2021年から順次FSCⓇ森林認証紙へと移行することとしました。これにより、古紙40%以上配合した再生紙であり、バガスパルプ10%以上配合した非木材紙であり、FSC認証紙でもある、環境配慮型商品としての位置づけにも幅を持たせることが出来るようになりました。

そして、今年3月、新たに2色(スノー、シャドー)を追加し、19色、8連量の合計152アイテムの商品として市場に投入することとなりました。
発売時の44アイテムから、実に約3.5倍のボリュームになった計算です。

「ディープマット」の凄いところは、世の中の逆境を乗り越え、色や厚みを減らすことなく、絶えず色を増やし、厚みを増やし続けてきたことでしょう。
発売から約20年の中で、一つの色も、一つの厚みも減らすことなく、増やして続けてきた商品は、私の知る限りでは、この「ディープマット」だけだと思います。

多くの方に愛され、使い続けていただき、進化し続ける紙「ディープマット」。
新たに追加した2色を含め、今後も多くの方々にご利用いただくことを切に願うと同時に、更なる進化を求めていきたいと考えています(写真5)。

(写真5) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真5)今回新たに追加した「スノー」「シャドー」を加えサンプル帳です。
これにより、19色、8連量、合計152アイテムのラインナップとなりました。

【ディープマット】進化の軌跡

2007年10月 発売 11色 4連量 (44アイテム) ☜ 10年後を目指して
2009年10月 3連量追加 11色 7連量 (77アイテム) ☜ リーマンショック
2011年10月 6色追加 17色 7連量 (119アイテム) ☜ 東日本大震災
2016年5月 1連量追加 17色 8連量 (136アイテム) ☜ インバウンド増加
2021年2月 2月生産分より、FSCⓇ森林認証紙へ順次移行 ☜ SDGsの取組み
2025年3月 2色追加 19色 8連量 (152アイテム) ☜ コロナ後を見据えて

【規格】

色 : 17色
寸法: 1,091×788㎜(四六判Y目)
連量: 8連量 70、100、135、180、220、265、360、450㎏
環境対応:古紙パルプ40%以上、バガスパルプ10%以上 FSCⓇ森林認証紙に順次移行中

(写真1) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)ディープマット発売時は、11色の色ぞろえでスタートしました。

(写真2) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)新たに加えた新色は、6色。全体の色バランスを整えるため、鮮やかさも含めた色合いを追加しました。

(写真3) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)追加した6色を含め、17色の色ぞろえとなりました。

(写真4) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)17色の色をそろえた際に作った、サンプル帳です。
印刷は無く、すべて箔押しと、空押しのみでした。

(写真5) | 進化し続ける紙 「ディープマット」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真5)今回新たに追加した「スノー」「シャドー」を加えサンプル帳です。
これにより、19色、8連量、合計152アイテムのラインナップとなりました。

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