生田信一(ファーインク)
「活版TOKYO2026」に参加しました

今回のコラムは7年振りに開催された「活版TOKYO2026」に参加した様子をお伝えします。
会場は東京千代田区の神田神保町にある2つのビルディングのフロアが使われました。2026年1月16日(金)〜1月18日(土)の3日間、大勢の来場者を迎え開催されました。
活版印刷の歴史は古く、さまざまな印刷機があります。会場ではコンパクトな印刷機で活版印刷ができるワークショップを体験したり、風合いのある仕上がりのハガキや栞、メモ帳などの紙グッズを買い求めることができました。
このイベントの楽しみは、出店者のブースを覗いたり買い物を楽しんだりができることですが、もうひとつの楽しみは、さまざまな企画で催されるトークイベントや映像上映会に参加できることです。
では、一緒に覗いてみましょう。
「活版TOKYO2026」トークイベント&映像上映会に参加しました
「活版TOKYO」は活版印刷の総合的なイベントです。長い間、コロナウイルス感染予防のために開催できなかったのですが、2026年1月に7年ぶりに開催されました。開催のプレスリリースは以下を参照してください。
→リンク「活版TOKYO2026」
会場は東京都千代田区の神保町三井ビルディングとテラススクエアの2会場を使用し、大勢の来場者が訪れました(写真1〜3)。会場になった建物は神田神保町の古書店街の一角にあり、イベントを告知するポスターは古書店舗のあちこちに掲示され、雰囲気を盛り上げていました。
トークイベント&映像上映会はテラススクエアの2Fで催されました。

(写真1)

(写真2)

(写真3)
(写真1〜3)会場は東京都千代田区の神保町三井ビルディングとテラススクエアが使われました。
活字が生まれる瞬間〜技術と情熱が紡ぐストーリー〜:「AK Renaissance」 とは
トークイベントの催しをいくつか紹介します。
まずは、金属活字の新作「AK Renaissance」が制作・発売されたニュースを伝えるものです(写真4)。ゲストは株式会社築地活字の代表・平工希一さん、活字鋳造を担当した小宮和貴さん、司会・聞き手は東條メリーさん。

(写真4)「活字が生まれる瞬間〜技術と情熱が紡ぐストーリー〜:「AK Renaissance」 とは」トークイベントの概要。
築地活字は活版印刷用の金属活字活の鋳造販売を営む横浜の会社。以前当コラムで取材し、活字鋳造の現場を見学させていただいたことがあり、とても印象深い体験になりました。
→リンク コラム「築地活字で活字鋳造の現場を見学しました」
小宮和貴さんは、活字鋳造技術を継承する若いスタッフです。現在では、金属活字の鋳造は、日本では2社でしか行っていません。新しい書体を作るには、元になる文字の設計・デザインのほか、金属活字の母型(文字の型)を必要とするため、新しい金属活字の製造は難しいと言われていました。しかしながら、これらの技術を受け継ぐ日本、台湾の2社の協力により、金属活字書体「AK Renaissance」が2025年3月3日に発売となりました。
→リンク「オリジナル欧文書体 AK Renaissance の活字発売開始」
トークショーでのお話によると、築地活字の小宮さんは、モノタイプのタイプ・ディレクターの小林章さん、活字の母型彫刻を手がける台湾の日星鑄字行さんの張介冠さんらに連絡を取り、このプロジェクトを進める大きな役目を果たしたとのことです。
活版TOKYOの会場にある築地活字さんのブースでは、「AK Renaissance」の活字の販売や、その活字で組まれたポストカードが販売されました。また、「AK Renaissance」の鋳造現場を取材した記事が掲載された本づくり協会会報誌「BOOK ARTS AND CRAFTS VOL.10」も購入することができました(写真5、6)。

(写真5)築地活字のブースでは金属活字「AK Renaissance」の販売も行われました。活字は1本単位で購入することができます。

(写真6)「AK Renaissance」の鋳造の様子を取材した本づくり協会会報誌「BOOK ARTS AND CRAFTS VOL.10」、金属活字の刷り見本を印刷したポストカードを購入しました。
以下、トークイベントの会場で告知されたイベントのお知らせです。新宿区にある本づくりハウスでは、「活版印刷と装飾文字の世界 AK Renaissance Pb を彩る文字アーティストたち」が催されるとのこと。(写真7)は案内のはがきです。こちらも開催が楽しみです。
→リンク「活版印刷と装飾文字の世界 AK Rはenaissance Pbを彩る文字アーティストたち 2/20~24」

(写真7)「活版印刷と装飾文字の世界 AK Renaissance Pbを彩る文字アーティストたち」を告知するポストカード。
活字が生まれる瞬間〜技術と情熱が紡ぐストーリー〜Making Faces: Metal Type in the 21st Century
こちらは、カナダ人タイポグラファー 、ジム・リマー氏が、書体のデザインから母型の製造、金属活字の鋳造までを一人で行い、完成させた記録映像を上映するイベントです(写真8)。

(写真8)「活字が生まれる瞬間〜技術と情熱が紡ぐストーリー〜Making Faces: Metal Type in the 21st Century」記録上映会の概要。
登壇者はなにわ活版印刷所の大西祐一郎さん、司会・聞き手は東條メリーさん。大西祐一郎さんは、この記録映像に日本語字幕を加え、さらに解説用の冊子を作られました(写真9)。購入サイトは以下をクリック
→冊子「PIED TYPE 4号(特典映像付き)」

(写真9)「PIED TYPE No.4」。金属活字とデジタルフォントの両方を製作するジム・リマーの製作工程を解説する冊子。
映像では、ジム・リマー氏が書体の設計から始まり、デジタルソフトウエア(IKARUS)を使ってのデータ入力、パンタグラフを使っての母型彫刻、金属活字の鋳造、最後に活版印刷による校正刷りまでの一連のプロセスを映像で紹介してくれました。現在では使われていない機材やソフトウェアを使っての制作工程を見ることができる貴重な資料でした。
特別映像セミナー 印刷博物館『活字をつくる』
こちらは、文京区の印刷博物館による、貴重なアーカイブ映像で綴る映像セミナーです(写真10)。

(写真10)印刷博物館による映像セミナーの概要。
印刷博物館は、普段の常設展でも活版印刷に関する歴史的な資料を見ることができますが、この特別映像セミナーでは、筆者が初めて見聞きする資料や映像が数多くあり、そのコレクションの豊富さ、奥深さに改めて驚きました。
印刷博物館には、活版印刷の保存や伝承、研究を行っている印刷工房があり、歴史的な印刷機や印刷設備を間近に見ることができます。また、印刷体験ができるワークショップを定期的に催しています。
→リンク「印刷工房」
本会場の印刷博物館のブースに立ち寄った際には、硬券印刷機で刷られた印刷博物館の割引券をいただきました(写真11、12)。また、現在(今後)行われる展覧会やイベントの案内もいただきました(写真13)。「World Book Design 2024-25」や「極私的エディトリアルデザイン考 京極夏彦×祖父江慎」など、これからも目が離せないイベントが目白押しです。

(写真11)

(写真12)
(写真11、12)硬券印刷機で印刷された印刷博物館の割引券。

(写真13)印刷博物館で開催中の展覧会、今後催されるイベントのパンフレット。
特別映像セミナー 市谷の杜 本と活字館『その手が文字をつくるまで ─活版印刷の職人たち─』
こちらのイベントでは、市谷の杜 本と活字館による映像セミナーです(写真14)。

(写真14)市谷の杜 本と活字館による映像セミナーの概要。
「市谷の杜 本と活字館」は、かつての大日本印刷の前身の一社である秀英舎時代の社屋を利用して、活版印刷機や活字の資料を残したミュージアムです。今回の特別セミナーでは、「その手が文字をつくるまで─活版印刷の職人たち─」と題したトークイベントが催されました。
トークを交えながらの映像は、当時の活版印刷の職人さんの思い出などが語られました。映像資料は、市谷の杜 本と活字館のYouTubeのアーカイブに数多く残されています。
→リンク「市谷の杜 本と活字館」
また現在開催中の企画展「あつまれキラキラ★百箔繚乱」についても紹介されました。会期は2025年10月25日(土)~2026年02月15日(日)ですが、以下のリンクでVRムービーによる会場散策が可能になっています。
→リンク「市谷の杜 本と活字館 VRツアー」で企画展「あつまれキラキラ★百箔繚乱」がご覧いただけます

(写真15)企画展「あつまれキラキラ★百箔繚乱」の案内ページ。
今回は「活版TOKYO」の訪問レポートをお送りしました。充実の3日間で、日頃お世話になっている多くの会社さんに出会うことができたイベントでした。次回の開催が楽しみです。
では、次回をお楽しみに!

