生田信一（ファーインク）
NECKTIE design office 千星健夫さんが作るクリエイティブな年賀状（中編）
年賀状は新年を祝う挨拶状。NECKTIE design office 千星健夫さんの作る年賀状には、あっと驚かせる仕掛けがいっぱい詰まっています。
さらに千星さんは、これらの制作記録をSNSやNoteの記事で記録しています。今回は、2018年、2019年の年賀状を紹介します。解説のテキストは、千星さんの記事から引用して再構成しました。
2018年年賀状─戌（いぬ）
まずは2018年の年賀状の製作プロセスを紹介します。その当時の世相を思い出していただくために、その前年の流行語大賞を調べ、テキストに添えてみました。当時を思い出しながら読んでください。
前年 2017年の流行語大賞を受賞したのは、「インスタ映え」と「忖度」の2語が年間大賞に。「インスタ映え」は、写真共有SNSのインスタグラムに投稿するために写真にこだわる現象から生まれた言葉。「忖度」は、「首相の気持ちに配慮した」を意味する言葉として、強く印象づけられました。（参考：オリコンニュース）。
2018年なので、8の部分を知恵の輪にしてみようと考えました。完成品がこちら（写真1）。
（写真1）2018年年賀状。
そもそも知恵の輪ってどうやって作るの？どこで作るの？
と、知恵の輪の製作をいろいろ調べると、バネ工場で作っていることが判明。バネと言えば、いつもシロクマの釣り竿を作っていただいている旭スプリング 製作所さんがいるではないか！
ということで相談したところ、こんな変な相談にもかかわらずご快諾いただく。
8の文字に見えないといけないので、ある程度の太さが必要です（写真2）。
（写真2）左が4mm、右が5mm。真鍮だから柔らかい。4mmでもかなり強靭！5mmでは後の加工が大変になりそうなので、4mmの真鍮で製作を検討。
相談した旭スプリングさんが早速試作をスチールで作ってくれました（早いすごい！）（写真3〜5）。
（写真3）
（写真4）
（写真5）
（写真3〜5）線１本分をずらすとちょうどその部分で抜けるということが判明。ちゃんと知恵の輪になってる！ しっかり8にも見えそう。
真鍮線だと協力工場さんで製作する形になるということで、茨城県笠間市にやってきました（写真6〜8）。
（写真6）
（写真7）
（写真8）
（写真6〜8）バネ工場を訪問。こういった機械で作る。
知恵の輪には、ながーいロールの線材を使います（写真9〜12）。
（写真9）
（写真10）
（写真11）
（写真12）
（写真9〜12）バーに真鍮線を巻きつけてぐるぐるー。ある程度のところまできたらぱちんと切れました。これ見るとまさにバネ。
でそれを輪に切断していく（写真13〜15）。
（写真13）
（写真14）
（写真15）
（写真13〜15）切断はゆっくり切らないと欠けてしまうそうなので、慎重に。切りたてほやほやです。
このままだと切断面のバリがすごいので、バリ取りのマシンに入れる（写真16〜18）。
（写真16）
（写真17）
（写真18）
（写真16〜18）中にこういった石と一緒にいれてぐるぐるするとバリがきれいになる。
バリを取ると、かなり知恵の輪っぽくなってきた。ただスプリングバックといって切断するとバネが開いてくる。隙間が空きすぎると知恵の輪にはならない。そこで輪っかを押して隙間をなくします（写真19〜21）。
（写真19）
（写真20）
（写真21）
（写真19〜21）輪っかを押して隙間をなくします。（写真19）は足踏み機。蹴っ飛ばしって言うみたい。このあたりの言い回しは印刷機と似てるかも。でびっくりしたのが壁面のペンチ。なんとすべて自作。昔はこれでバネを作っていた。
知恵の輪が完成です（写真22〜24）
（写真22）
（写真23）
（写真24）
（写真22〜24）輪っかを２つつなげたら、知恵の輪になった！
台紙に切り込みを入れ、でざっくり位置決めをして、テグス・エキスパートに登場いただく（写真25〜28）。
（写真25）
（写真26）
（写真27）
（写真28）
（写真25〜28）台紙に切り込みを入れ、でざっくり位置決めをして、テグス・エキスパートで結んでいく。案の定写真ではみえない。
最後はOPPの袋にいれて、発送です。いってらっしゃい！！！（写真29〜32）
（写真29）
（写真30）
（写真31）
（写真32）
（写真29〜32）OPPの袋にいれる作業。（写真32）は宛名面。
（写真1）2018年年賀状。
（写真2）左が4mm、右が5mm。真鍮だから柔らかい。4mmでもかなり強靭！5mmでは後の加工が大変になりそうなので、4mmの真鍮で製作を検討。
（写真3）
（写真4）
（写真5）
（写真3〜5）線１本分をずらすとちょうどその部分で抜けるということが判明。ちゃんと知恵の輪になってる！ しっかり8にも見えそう。
（写真6）
（写真7）
（写真8）
（写真6〜8）バネ工場を訪問。こういった機械で作る。
（写真9）
（写真10）
（写真11）
（写真9〜12）バーに真鍮線を巻きつけてぐるぐるー。ある程度のところまできたらぱちんと切れました。これ見るとまさにバネ。
（写真12）
（写真13）
（写真14）
（写真15）
（写真13〜15）切断はゆっくり切らないと欠けてしまうそうなので、慎重に。切りたてほやほやです。
（写真16）
（写真17）
（写真18）
（写真16〜18）中にこういった石と一緒にいれてぐるぐるするとバリがきれいになる。
（写真19）
（写真20）
（写真21）
（写真19〜21）輪っかを押して隙間をなくします。（写真19）は足踏み機。蹴っ飛ばしって言うみたい。このあたりの言い回しは印刷機と似てるかも。でびっくりしたのが壁面のペンチ。なんとすべて自作。昔はこれでバネを作っていた。
（写真22）
（写真23）
（写真24）
（写真22〜24）輪っかを２つつなげたら、知恵の輪になった！
（写真25）
（写真26）
（写真27）
（写真25〜28）台紙に切り込みを入れ、でざっくり位置決めをして、テグス・エキスパートで結んでいく。案の定写真ではみえない。
（写真28）
（写真29）
（写真30）
（写真31）
（写真29〜32）OPPの袋にいれる作業。（写真32）は宛名面。
（写真32）
2019年年賀状─亥（い）
前年 2018年の流行語大賞を受賞したのは、平昌五輪の女子カーリングで銅メダルを獲得した日本女子チームの掛け声「そだねー」が年間大賞に決定した。「そだねー」は、カーリング日本女子「ロコ・ソラーレ北見」のメンバーが試合中に交わした言葉で、北海道独特のイントネーションで注目を集めました。LS北見の選手らは「こっちいってみよっか？」「そだねー」「ナイスー！」など北海道特有のイントネーションによる穏やかな口調で作戦会議を行い、見事に銅メダルを獲得しました（参考：オリコンニュース）。
2019年はこれまで以上に細部にまで気を配った、解像度の高いデザインがたくさん増殖できるようにと、実験用シャーレに言葉を詰めました。完成品がこちら（写真33、34）。
（写真33）
（写真34）
（写真33、34）年々大型化する弊社年賀状？なので、2019年は逆に極端に小さいことに注力しました。微細なものなら、細胞だろうと、デザインの増殖だろうと、実験用シャーレを使いました。
使用する細胞部分の赤い紙はプライク。今オンデマンド印刷で白のプリントできるんですね。オンデマンドでどこまで小さい文字ができるのかの実験も含め、3ptと4.5ptを面付けして入稿。で、これをちまちま切っていきます（写真35〜38）。
（写真35）
（写真36）
（写真37）
（写真38）
（写真35〜38）3ptでも案外ちゃんと読めたので、今回は3ptバージョンを使用。もう小さくて、iPhoneではぜんぜんピントが合いません。切ったものは文字ごとにシャーレに一時保管。この段階で、あぶない何かを培養してるみたいな細胞分裂感が結構出た！
次は台紙にシャーレを両面テープで貼り付けます（写真39〜41）。
（写真39）
（写真40）
（写真41）
（写真39〜41）台紙にシャーレを両面テープで貼り付け。次に綿を配置します。ある程度ほぐして、良い感じの量に。後半は寿司職人のシャリのように、見なくてもだいたいぴったり分量がとれるようになった（もう一生使わない技術）。ふさふさっと配置します。
シャーレに入った細胞？（文字）をピンセットで入れていく。はじめは指でやっていたけど、静電気で指にはりついて離れず、結局ピンセットが一番やりやすかった（写真42〜44）。
（写真42）
（写真43）
（写真44）
（写真42〜44）細胞？（文字）を綿の入ったシャーレに投入し蓋をする。
袋詰して封緘（写真45〜48）。
（写真45）
（写真46）
（写真47）
（写真48）
（写真45〜48）袋詰を終えて出荷を待ちます。
完成です。シャーレを上から覗いてみると、微細な文字が培養されているように見えます（写真49、50）。（写真51）は宛名面です。
（写真49）
（写真50）
（写真51）
（写真49〜51）完成です。
今回の千星さんのレポート、知恵の輪作りの工程や、シャーレに文字を培養した年賀状を紹介しました。ほんと、千星さんの発想力と行動力には脱帽です。印刷・加工技術も日々進歩していますね。自分が思い描いたグッズがオンデマンドで手軽に作れるようになっていることにも注目です。
次回は2020年、2021年の事例をご紹介します。
次回をお楽しみに！
（写真33）
（写真33、34）年々大型化する弊社年賀状？なので、2019年は逆に極端に小さいことに注力しました。微細なものなら、細胞だろうと、デザインの増殖だろうと、実験用シャーレを使いました。
（写真34）
（写真35）
（写真36）
（写真37）
（写真35〜38）3ptでも案外ちゃんと読めたので、今回は3ptバージョンを使用。もう小さくて、iPhoneではぜんぜんピントが合いません。切ったものは文字ごとにシャーレに一時保管。この段階で、あぶない何かを培養してるみたいな細胞分裂感が結構出た！
（写真38）
（写真39）
（写真40）
（写真41）
（写真39〜41）台紙にシャーレを両面テープで貼り付け。次に綿を配置します。ある程度ほぐして、良い感じの量に。後半は寿司職人のシャリのように、見なくてもだいたいぴったり分量がとれるようになった（もう一生使わない技術）。ふさふさっと配置します。
（写真42）
（写真43）
（写真44）
（写真42〜44）細胞？（文字）を綿の入ったシャーレに投入し蓋をする。
（写真45）
（写真46）
（写真47）
（写真45〜48）袋詰を終えて出荷を待ちます。
（写真48）
（写真49）
（写真50）
（写真51）
（写真49〜51）完成です。
［プロフィール］
千星健夫（Chiboshi Takeo）
1976年、兵庫県生まれ。GRAPHIC / WEB / PRODUCTとジャンルをはみだしたデザインを手がける。写真撮影や活版印刷も自らおこなう。デザイン事務所勤務を経て、2014年NECKTIE design officeを設立。
Interior Lifestyle Young Designer Award 2018受賞。朗文堂タイポグラフィースクール 新宿私塾 講師。
Phone Nº：0422 26 6916
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