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三星インキ株式会社
印刷と変褪色のメカニズム

印刷と変褪色のメカニズム - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

今回は、印刷と変褪色のメカニズムについて説明させて頂きます。

前回説明させて頂いた通り、金インキに使用している色材である真鍮は、酸性物質の影響を受けて酸化しやすく、酸化されると緑色や黒色に変色する事が知られており、輝度感の消失等が起こります。

この変褪色の発生は平版印刷でよく発生しますが、これは平版印刷が他の印刷方式に比べて発生しやすい要因を持っているからです。

その要因としては、
①印刷時に湿し水を使用する
②金属顔料の粒径が細かい
③金属顔料濃度が高い
④塗工紙を使用する事が多い
⑤化学的変化(酸化重合)によって乾燥する

と言った事が挙げられます。

①に関してはすぐにお分かり頂けるでしょう。雨水のかかる室外にある金属には錆びが発生しやすくなります。

②に関しては、以前書かせて頂きましたが、平版印刷の場合は粒径の細かい金属顔料を使用する事が多く、金属顔料の粒径が細かくなる程、表面積が増える為、酸化する面積が増します。

③に関しても、以前書かせて頂きましたが、平版印刷は金属顔料の含有量が多く、酸化が発生する確率が高くなります。

④に関しては、紙の製造方法に起因する話になりますが、紙にはインキや水分が浸透し過ぎないようにサイズ剤(ロジン)という原料を紙の表面に塗工していますが、このサイズ剤を定着させる際に硫酸バンド(硫酸アルミニウム)と呼ばれる材料を使用している事があります。この硫酸バンドは強酸性の物質であり、塗工面に含まれる事で酸性度の高い用紙となり、その用紙に金インキを印刷する事で、金属顔料が酸化されます。
なお、硫酸バンドを使用して塗工された(酸性度の高い)用紙の事を酸性紙と呼んでいますが、最近は酸性を嫌がる(酸の影響で紙自体が酸化されて、紙自体の寿命が短くなる)傾向がある事から、硫酸バンドを使用しない、あるいはアルカリ性の高い材料と併用使用して中和した中性紙と呼ばれる用紙が広く使われてきています。

⑤に関しては、平版印刷は触媒である金属(石けん)が空気中の酸素を取り込み、樹脂同士を結合(重合)させて皮膜を形成する酸化重合型での乾燥が主ですが、樹脂同士が重合する際に副生成物質(ガス成分)が発生し、このガス成分が真鍮を酸化させます。
発生したガス成分は印刷時に棒積みされた印刷物の間に溜り、塗工紙を使用する事でガスが抜けにくく、金属顔料と長時間接触する事で酸化が進みます。特にベタ刷りされた絵柄の上に金インキを印刷する場合、下刷りベタ部から多量にガスが発生する為に酸化されやすく、変褪色現象は発生しやすくなりますので十分留意して下さい。

他の印刷方式でも、大気中の水分等によって酸化は必ず発生しますので、真鍮を色材とした金インキを使用した印刷物を保管する際は、できるだけ高温多湿条件下を避けて酸化防止に努めて頂ければと思います。

また印刷物から変色の原因はこれだ!と断定するのは非常に難しく、様々な要因が複雑に絡み合って発生しているので特定はできません。その点もご勘弁下さい。

尚、現在は真鍮の酸化を抑制する為に、真鍮の表面に樹脂等をコーティングして酸化を抑制する方法が取られており、ある程度効果を得る事ができていますが、この処理は金属顔料の粒径がある程度大きくないと綺麗にできない為、平版インキ用の細かな金属顔料にはむいていません。

従って、変褪色の発生を完全に抑える為には、真鍮を使用しないイミテーション型(疑似金)で対応する事をお奨めしています。

左部:イミテーションゴールドインキ 右部:真鍮粉使用インキ 上部:非テスト部 下部:変褪色テスト後 | 印刷と変褪色のメカニズム - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

左部:イミテーションゴールドインキ 右部:真鍮粉使用インキ
上部:非テスト部 下部:変褪色テスト後

イミテーションゴールド(疑似金)は、簡単に言えば銀インキと色インキを混ぜて金インキのような色調・発色を持たせるように設計したインキであり、耐性の弱い真鍮粉を使用しない事で変褪色の発生が抑制できます。

食品包材などに金色を使用する場合、イメージ的な面から変褪色の発生は避けるべきであり、食品包材用途に多く使用されている凹版(グラビア)印刷や凸版(フレキソ)印刷では、イミテーションゴールドが主流であります。これらの版式の場合は皮膜が厚く、アルミ存在量を多くする事ができる為にノンリーフィングタイプのアルミを使用しても金属発色を得る事ができ、鮮明で高輝度な印刷物を得る事ができます。

しかし、インキ皮膜が薄い平版印刷では輝度感・隠蔽性を得る事が難しいので、ノンリーフィングタイプのアルミを使用しにくく、逆にリーフィングタイプでは色に濁りが出てしまうので鮮明な色調を得るイミテーションゴールドを設計するのは難しい環境下でありました(この点は銀インキで説明させて頂きます)。

ただ、宣伝となってしまいますが、弊社では上記の問題点を改善した高輝度・高鮮明度を兼ね備えた平版印刷用イミテーションゴールドの製造・販売を行っていますので、ご所望の場合は是非ご連絡頂ければと存じます。

ただし、イミテーション型インキは真鍮を使用したインキよりも濃度・輝度感が劣りますので、その点は事前にご了承・ご確認の上、検討して頂ければと思います。

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左部:イミテーションゴールドインキ 右部:真鍮粉使用インキ 上部:非テスト部 下部:変褪色テスト後 | 印刷と変褪色のメカニズム - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

左部:イミテーションゴールドインキ 右部:真鍮粉使用インキ
上部:非テスト部 下部:変褪色テスト後