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三星インキ株式会社
特殊インキ 示温インキと磁性インキ

特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

今回も特殊インキをご紹介

・示温インキ

示温インキとは温度変化を色彩の変化として捕えようとしたもので、温度を目視で読み取る事ができるという事であります。

今までに示温インキが使われてきたものとしては、『飲み物を注ぐと色が変わる』『お風呂に入れるとおもちゃの色が変わる』『機械の温度が上がり過ぎると色が変化する』『高温のガスなどが漏れるとその部分が着色してその場所を特定できる』等があります。

示温インキにも1度色が変わるとずっと変わらなくなるタイプ(不可逆タイプ)と、温度変化によって何度も変色・復色が起こるタイプ(可逆タイプ)の2種類が存在し、用途によってどちらのタイプを使用するか検討する必要があります。飲み物を注ぐと色が変わる、あるいはお風呂に入れると色が変わるといった用途については、繰り返し使用できるように変色・復色が起こる可逆タイプが必要であり、ガス漏れ部を特定して判別するような場合は復色しない不可逆タイプを使用する事が必要です。

現在では、示温インキが反応する温度幅も最近は細かくなってきており、数℃単位の違いで変色発生の有無が出てくるようになっており、使用する用途もかなり広がってきています。

最近の文具で、書き間違った部分をペンのお尻部分で擦ると色が消え、何度でも修正できるというボールペンが販売されていますが、実はこれも一種の示温インキであります。

このメカニズムは間違えた部分をペンのお尻で擦ると摩擦熱が発生し、その熱によって示温インキが反応して色が消えるという理論であります。なお、この示温インキは可逆タイプの性質を有していますので、書き直した部分を冷凍庫で冷やすと、消えたはずの文字が再び浮き出てきますので1度お試し下さい。

特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

磁性インキ

磁性インキとは色材に磁性体を使用したインキであり、偽造防止用途(紙幣・小切手・商品券など)や情報の書き込み用途(切符・駐車券・小切手・手形など)等に使用されています。

偽造防止用途としては、磁性インキを使用して印刷された部分の模様を読み取り、その模様をデータとして取り込む事で真贋や分別の判定を行います。紙幣も磁性体を含むインキで印刷されているので、強力な磁石(ネオジム磁石)を近づけると、スッと寄ってくると言われています(試した事はありませんが)。

また、最近では薬などの取扱説明書を磁性インキで印刷し、箱にきちんと封入されているかを箱の外からでも磁力を用いて判定できるようなシステムも考えられています。

これらの磁性インキは磁気に反応するかどうかが判断基準である為、色材である磁性体に磁気を有している必要はありません(つまり磁気に反応するかだけ)。

情報の書き込み用途としては、2つのパターンがあります。

①切符の裏面や駐車券の黒い帯状の部分に印刷されているタイプで、使用する磁性インキと同色の色を下刷りする事で磁性インキ印刷部が簡単に目視できないように印刷されています。
このタイプは磁性インキを情報(バーコード等)として書き込み(印刷)を行うタイプであり、磁性インキが発する磁気を機械が読み取る事で情報を得る事ができます。
その為に磁性インキに使用する色材は磁気を帯びた磁性体を使う必要があるので、この部分に砂鉄などを降りかけると、磁性インキを印刷した部分に砂鉄がくっつき、目視でも分かるようになるそうです。ただし、磁性体から発する磁気が変化したりすると情報が読み取りにくくなる為、このタイプの印刷物には磁気の発する場所の近くに置かないで下さいと注意書きがされていると思います(砂鉄のふりかけもお薦め致しません)。
また、読み取る方法(機械)によって、必要となる磁性体の種類が異なるので、間違った磁性体を使用しないように注意が必要との事です。

切符の裏面 | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

切符の裏面

駐車券 | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

駐車券

②手形や小切手等の一番下に記載された数字を磁性インキで印刷するパターンで、①とは異なって印刷部が目視できる、つまり、目視と機械の両方で判別できるように印刷されています。
なお、このパターンも機械で磁気を読み取る必要がある為、磁気を発する磁性体を色材として使用されています。
このパターンの印刷物(手形・小切手)は世界中で使用できるように共通化する必要がある為、読み取る機械も同じ規格とする必要があり、その為に磁気を発する文字(数字)の形も規格統一化されています。
従って、文字(数字)の形が少し違うだけでも判別できなくなる可能性があり、手形や小切手などは大きな影響が出る事から、このタイプの印刷は少しの妥協も譲れない非常に厳しく管理されているそうです。

数字を磁性インキで印刷するパターン | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

以上のように、磁性インキと言っても磁性体の種類(磁気の有無)によって用途が異なります。

切符の裏面 | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

切符の裏面

駐車券 | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

駐車券

数字を磁性インキで印刷するパターン | 特殊インキ 示温インキと磁性インキ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

数字を磁性インキで印刷するパターン