株式会社 オオウエ
和紙見本帳を見て、「どれが和紙?」と尋ねた新人時代
第二回となります。
前回は、株式会社オオウエの創業から今までについて書きました。
私が入社したのは、今から6年前。丁度東北の震災があった年の7月でした。
入社して自社発行の見本帳を見て最初に社長に尋ねたのが、
「どれが和紙なん?」
でした。
和紙にはほとんどなじみがなかったこともありますが、本当にそう思いました。
私自身の業界への知識のなさが勿論原因なのですが、このときの感覚は、一般の和紙業界でない方のものと近いと思うので、今でも大事にしています。
紙の余白さんが手漉き和紙に関して書かれています。
私にとっても、和紙=手漉き。
ちょっとラフで、触るとザラザラしていて、紙の端っこが少しモヤモヤしている。
そんな先入観がありました。
弊社の見本帳には、表面が固くつるつるとした紙が並んでいました。
これには理由があります。
バブル期を経て、より和紙への需要が増大していく中、機械抄きが隆盛し、より印刷に適して、よりコストの安いものが求められてきました。
印刷適性を上げようと思うと、表面の平滑度が重要になります。
昔ながらの楮の繊維などで漉く場合は、どうしても密度が粗くなり、印刷機が給紙をしにくくなるんです。
給紙がしにくくなると、連続で紙を送ることが出来ない。いちいち手で紙を通していくわけには、効率面でいかなかったので、そこの対策が必要でした。
そういった部分を克服したのが、この紙になります。
しかし、機能性やコスト面は十分に向上したのですが、一般に考える和紙よりも、ずっと洋紙に近いものになっていました。
同じ和紙でも、手漉き和紙と機械抄き和紙では、たどってきた用途や作り方が異なります。
機械抄き和紙には、より大量に、よりコストを抑えて、より加工適性を上げる。
そんなことが課されてきたのです。
しかし、好景気の時代が終わると、そうした特別な差別化のない和紙が、「同じ似ているなら洋紙や特殊紙でいいんじゃないか」という、至極全うともいえる反応に晒されてきたのです。
特にお箸の袋がそうです。和紙と言うのは、表面がつるっとしていて、裏面がざらっとしています。
その風合いを重視して選んでいただいていたのですが、あるとき「キャピタルラップ」という表裏差のある洋紙が登場しました。
価格も安いので、一気に乗り換えがおこりました。
今、機械抄き和紙は本当に岐路に立っています。
この連載で、そんな機械抄き和紙の成り立ちや特徴、今後の展望などについても触れていこうと思います。