図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]⑩
本の修理に最適な和紙ができました!
本の破れや表紙が取れてしまった時、本のために優しい治し方をご存じですか?
和紙を使って、普通のフエキ糊のような澱粉糊で貼って治す方法が良いとされています。
大学図書館や地域の公共図書館では良く読まれる人気のある本に限って、壊れてしまいます。それは、別に不思議なことではありません。一般に出版されている本は、普通一人の人間、もしくは数人の人々に読まれるものです。が、図書館の本は一冊の本を何十人、何百人の人たちが借り出して、読みます。人気のある本ほど、壊れる可能性は高くなります。
そこで、図書館のバックヤードには「修理が必要な本」が、どんどん貯まって行きます。壊れたままで貸し出すことはできませんから、つい、手軽にデープ類を貼って応急手当をしてしまいがちでした。
しかし、近年、電子ブックなどデジタルメディアで「本」や「論文」を読むことが、そんなに珍しいことではなくなって来ました。そんな時代を向かえると、紙にインクで活版印刷された、ハードカバーの布表紙や革装丁の本のイメージがアップしてきたのではないでしょうか。何といっても紙の本は何万冊印刷、出版され、販売されても、一冊が辿る、人間で言えば、「人生」、本では、「本の来歴」がすべて一冊一冊異なる独自なものです。
それゆえ、紙の本で、よく読まれる本ほど、なるべく原形を留めて修理し、将来に伝えて行きたいと思います。
前置きが長くなりましたが、修理に使うのに和紙が良いと聞いても、「その和紙はどこで買えば良いの?」との図書館の職員からの声に応えて、京都活版印刷所さんに修理用の土佐和紙を扱われる和紙メーカーさんをお探しいただき、用意してもらうことができました。
その和紙の仕様は『簡易補修テキスト 平成28年度資料保存研修』国立国会図書館 収集書誌部 資料保存課(作製)の6ページに載っている3種類の和紙(下の表のような)を参考にしていただきました。
厚 | 薄 | 極薄 |
20~30g/㎡ | 15g/㎡ | 5g/㎡ |
欠けたページの補修 | 文字の無い部分の破れ、外れたページをなおす | 文字の上の破れ |
このほど、2017年9月9日~11日、「大学図書館問題研究会」という全国国公私立大学の図書館員の研究団体の全国大会が京都の同志社大学で開かれました。そこに「自主企画」という名で、修理用和紙デモンストレーション・イベントを図書館資料保存ワークショップ主催、活版印刷研究所さんの協賛もいただき参加・開催しました。
上記の三種類の和紙をA4サイズ一枚ずつを1セットにして、事前にモニター募集し、アンケートに回答してもらったところ、とても好評でした。
1.三種類の厚さが丁度良い使い勝手
2.A4サイズにカットされているのも保管や扱いに便利
3.どこで売っているのか?手に入れたい
などの回答が寄せられました。
大会当日はこの和紙サンプルを、さらに20名近くの参加者に持ち帰ってもらい、モニターを続けています。
さらに当日は京都活版印刷所さんの独壇場、アダナ印刷機のデモも大好評でした。
参加者自身が印刷体験できる「栞づくり」、私たち、ワークショップのネームカードも可愛いものを作っていただき、栞とともにお土産とすることができました。
このほど、全国に、和紙を使っての本の修理をしよう!という仲間、活版印刷の素敵さを実感した友ができました。
京都活版印刷所さんに感謝!です。そして、「本の修理」、「図書館資料保存ワークショップ」にも新しい風が吹きそうです。
資料保存WS M.T.
(写真撮影: 京都大学資料保存ワークショップ 永田千晃)