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京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]②
大学を飛び出して
~大津市立図書館での本の修理講座~

昨年11月、大津市立図書館さんの開館35周年記念行事で“としょかんまつり”という催しが行われました。
この資料保存ワークショップ主宰のT氏へ、その催しの一環で本の修理講座を開いてほしいとお話があったとのことで、この資料保存ワークショップからは私がお手伝いに行かせてもらいました。T氏とそれから、以前このワークショップのメンバーであったF氏、先生と製本教室で長く一緒されている名古屋の某大学図書館司書のH氏の4名での修理のお手伝いでした。

大よそ常の事のように今こうして文章に淡々と書いていますが、このWS(以下、省略して「資料保存ワークショップ」→「WS」とさせて頂きたい。)、普段は京都大学内でのみの活動で、少なくとも私が在籍してから8年は学外での活動はありませんでした。
昨年、京都活版印刷所さんとの出会いから、まるで春の訪れにゆっくりと巣から一歩づつ外へ足を踏み出す動物のように学外へ目を足を向けられるようになったのかな、と思っており、T氏からこの話を受けた時は胸の高揚を感じていたほどです。
気が付けば、本当に気が付けば!私はWSに入り8年目。ですが、どんな本でも治せる!というわけでもなく、自分たちでする修理にはだいたいのパターンがあるので、その範囲での修理なら慣れたという程度。具体的によくある破損の例としては、書き込みや破れ、背のはずれ、のどからのページはずれ、表紙裏表紙はずれ、和綴じのものであれば綴じ糸のほつれ等。これら以外の重度のものは正直、冊数を溜めて業者に依頼する、というのが現状なのです。
そんなことですので、学外で一般の方に指導ということ、破損の程度は?来られる方のスキルは??道具は???所要時間はどのくらいになるだろう??????
どこまで想定して準備すればよいか、胸の高揚の直後にはちんぷんかんぷんの波が押し寄せてきました。というのは私ばかりで、T氏はいたって落ち着かれ、大津市立図書館さんの担当者さんとT氏とF氏で事前に打ち合わせし内容を詰めて下さっていて、私はと言えば、当日少々の不安と楽しみ8割を持ち合わせ、初秋の晴天、朝からさわやかにきらめくマザーレイク琵琶湖を横目に京阪電車浜大津駅から徒歩5分、レンガ色の建物の図書館へ向かうのみだったのですけど。

心配していた破損の程度も、事前の打ち合わせにより、ページはずれが主なものでした。
午前中の催しにもかかわらず15名ほどの方がお見えでした。年齢層様々。学校図書館勤務の方、自身の所蔵本の修理に役立てたく来られた方、色々でした。大学図書館とは違い、公共図書館ならではの利用者層を感じました。

講座風景1 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

初めにT氏から私たちWSの簡単な紹介と本の修理について説明があり、実習となりました。
あらかじめ図書館側に用意頂いた破損状態がだいたい似た本、道具を使い、手を動かしてゆきます。
ページはずれは、本の綴じられ方によっても異なりますが、外れたページのどの部分と外れていない本文紙ののどを帯状に裂いた和紙で蝶番のように糊付けします。貼りつける和紙も紙の目の縦横を見極めて使います。貼った後はシール台紙などにある表面のツルツルしたパラフィン加工された紙を挟んで、糊の定着を待ちます。
同じ説明をしていても、参加者それぞれに解釈が異なり、伝えることの難しさを改めて感じました。短い時間の中、悩んでいる参加者がどの部分が理解できなかったか、またどうすれば分かりやすいか等を考え、そして伝え、理解されて手が動くようになり、できたことを喜ばれる姿を目にするのは、シンプルに嬉しく、やり甲斐を感じるものでした。

講座風景2 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

講座風景3 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

初心者の方がほとんどだから、きっとお一人1冊の修理で時間となるだろう、と検討していたのですが、多くの方が2冊目に取り掛かられ、最後にはまた違ったケースの修理について尋ねられたり、職場で活かせたらいいが和紙など材料が揃っておらず、業務時間内にするのは現実難しいとの感想も頂いたり、同じ思いであるから故、その打開策の必要性を改めて感じる時間でした。

‐‐‐使用する道具類の容易な入手を目指すのも必要だけれど、「これでなくては、修理できない」というものでなく、本や紙への負担の無いものであることが前提ですが、代用できる道具探しも同時に必要なのかもしれない、とこの文章を書きながら今思いついています‐‐‐

初めてのことで、進め方を掴むのに時間がかかったのが悔やまれますが、それも今後の対策としたいと思いました。
大津市立図書館様では、その後修理ボランティアスタッフの登録を募集したところ、講座終了後に早速登録される方もいらっしゃったと後からお聞きし、これを機に修理への意識の高まりが期待されます。

草の根的にぼちぼちとでも修理することを伝播してゆけたら、いつか多くの人の意識で「図書館の本をできるだけ自分たちで修理する」という流れが文化を生むのではないかと期待を込め、ただあきらめず続けたいと思った大変有意義な一日でした。

私自身は、本は、読む人、持つ人の知識になり行動へとつながる小さくて大きな存在だと思っています。その本を長く愛着を持って大切にしていきたい思いが私の支えになっています。

京都大学図書館資料保存WS
小梅

講座風景1 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

講座風景2 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

講座風景3 - 大学を飛び出して ~大津市立図書館での本の修理講座~

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図書館資料を自分たちの手で補修したい、大学図書館員によるワークショップです。
資料保存に役立つ実践的な情報の発信も目指します。

※【活版印刷研究所より】
京都大学図書館資料保存ワークショップとは、活版印刷機(adana8x5)をお持ちで、動かして自分達で印刷したいとのご相談を頂いたのがご縁でした。
紙モノ、印刷、本と共通する事が多く、本の修復に情熱を捧げていらっしゃる事に共感しました。
海外の図書館には、本の修復室があることがスタンダードとお聞きしましたが、日本にはそのような文化がまだないそうです。
本を修復していく事を広めていく活動を図書館関係者はじめ、たくさんの方に共有頂ければと思い、ご執筆をご依頼いたしました。

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