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京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㊶
資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子

世の中がこんな風になってしまうなんて、昨年には思いもしなかったこと。
コロナウイルスの感染拡大防止のため、人と人との接触が非常に制限されるようになりましたね。

私たち資料保存ワークショップも、2月に1回開催。その後から活動を自粛。現在も休会しています。
そして、昨年9月から開始した「資料保存ワークショップ番外編」という、学外での月1回の活動も、1月の活動後、同じく休会。
志同じくした人たちと直に交流が出来ないことは、寂しいものです。
その「番外編」(資料保存ワークショップ番外編、今後は略して「番外編」と書かせてもらいます。)のこれまでの活動について、今日は触れてみたいと思います。

「番外編」の活動の主旨は、2019年11月15日の記事「[図書館に修復室をツクろう!]㊱ 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。」で、ご紹介していますので、そちらも合わせてご覧いただけるとうれしいです。

番外編は、そこにも書いているように製本を学ぶ会ではあるのですが、”本の仕組みを知って本の修理に活かす”ことを大事な目的の一つとして、主に図書館員の方を対象に開いています。

私の本の修理は、「図書館員のための図書補修マニュアル / 小原由美子著, 発行:教育史料出版会, ISBN:9784876523771」や「防ぐ技術・治す技術―紙資料保存マニュアル / 「防ぐ技術・治す技術-紙資料保存マニュアル-」編集ワーキング・グループ著, 発行:日本図書館協会, ISBN:9784820404415」等を参考にほぼ独学から始め、このワークショップに出会い、メンバーの人から教わったりして、少しずつ技術を積んできましたが、その時々の破損状態に応じて、破損部分を直す日々。しかし、その「本」がどういう工程でできているのかを知ることで、より適した修理方法を選択できるのではないか、と思うようになりました。
それには製本を知る必要があると感じていました。
同じようなタイミングで、以前製本をされていたという方から、製本用のプレスやかがり台など道具類を譲り受けるという有り難い出来事もあり、京大でのワークショップは、所蔵本の修理をメインとし継続。
寄贈頂いた道具類を使って、製本を学ぶ「番外編」を学外(開催場所:ものことあとりえ一頁)で開くことに至ったわけです。

まずは、「ブラデル製本」(表紙、背、裏表紙を最終一枚の紙でつなげるくるみ製本とも呼ばれるもの。現代では一般的な製本様式)という製本取り組んでいます。
紙の状態からの製本ではなく、糸綴じされた単行本を改装する(解体して製本し直す)ことにしました。
月一のゆっくりペースではありますが、一つ一つの工程を少しずつ丁寧に進めています。

初回開催は、昨年9月29日。
実は、このブラデル製本。以前京大内でのワークショップで始めかけて、途中になっていたのです。
ですので、私はその時の途中の状態からスタート。
本文を綴じていた糸を切り、バラバラにし、丁ごと開いて折り目を伸ばし、また折り直し、小口や天地のはみ出しを丁寧に切って、また重ねてゆく。表紙裏表紙は、新しいものをつけ直すので、元々の表紙も剥がし、裏打ちされているボード紙も外し、改装の際は、元の表紙裏表紙は本文と合わせて中に綴じ込むので、和紙で改めて裏打ち。
好きな紙を選んで色見返しを作る。そんなところから始めました。

2回目以降の活動の様子については、「番外編」の雰囲気がよく伝わるのではと思い、私の記録した日記の内容をこちらにご掲載させてもらいますね。

 

■ 2回目:10月22日

大阪の大学図書館にお勤めの司書さんがご新規で参加。

保存修理の担当部署があることに羨ましい思いでしたが、実情はカビ取りに追われる日々とか…
他大学の資料保存事情の共有。これはこの番外編の活動の大切なテーマの一つでもあります。

改装から始めるブラデル製本。
ご新規さんは、ご自宅で所蔵されている昆虫について書かれた古いハードカバーの本の解体にとりかかられました。

私は、この日は一丁の中の中くらいの大きさのページに合わせ、他のページをカットする地道な作業の途中で終了。
次回までに全てのページをカットするのが宿題となりました。
ページの端、かなり細い部分を切り落とします。普通のカッターでは、やはりうまく行きません。
なんと!手術用のメスがとても役に立つのです。
道具も様々。

 

■ 3回目:11月23日

参加者は、私含んだレギュラーメンバー3名と、前回から続いての大阪の大学図書館勤務の方、初参加の大阪の公立図書館勤務の方の計5名でした。

私は、引き続きアート紙のハンドブックを改装中。
各丁のちょうど真ん中くらいの大きさのページに合わせて小口を切る作業の続き、そのハンドブックが元々入っていたケースを展開して、本文と合わせて綴じられるように整えています。

 

■ 4回目:12月21日

前回より新規の方は、表紙裏表紙をきれいに剥がされ、表紙の裏も整えて、見返しに力紙を貼る作業へ。
先輩は、とうとう綴じる前の作業へ。
噂に聞いていた、鋸で綴じ穴を開けるという工程を見ることが出来ました。
背を十分に出した状態でプレスで挟み、3人がかりで押さえてギコギコと!
製本は大工仕事と常々聞いていましたが、実感です。
それぞれの丁の背を平らに整えて、ずれないようにプレスに挟み込ませるまでの移動が至難の業です。
確実に直角な箱の角とか使えると良いのかも、と思ったが手持ちがないことが残念。
素麺のあの木の箱が良いそう。
(後日、その素麺の空き箱も知り合いから頂きました!)

この日は、少し前に参加してきた九州大学での西洋古典資料保存講習会・実習の報告も少しお話しを。
(そちら、詳しくは「[図書館に修復室をツクろう!]㊳ 九州大学へゆく!「九州地区西洋古典資料保存講習会・実習」参加報告 その1(2020年1月15日の記事), その2(2020年2月15日の記事)をご覧ください。)

 

■ 5回目:1月26日

宿題だったケースの表紙と裏表紙、それぞれを民芸紙で裏打ち。それを板に貼り付けて乾燥させておいたものを板から剥がし、不要な周りののりしろをカット。
他ご参加の方は、表紙・背表紙・裏表紙を和紙で裏打ち。もう一人の参加者さんも次回は背の裏打ちに進みそう。
しばらく裏打ちが続きそうな番外編。

今回使った道具のはなし。
紙の厚さを測る、厚さ測りという道具を製本では使うのですが、父に話すと家にも確かあったと思う、と祖父が使っていたものを出してきてくれた。1/20㎜から測れるものだった。
他にはノギスも。

そして、裏打ちに欠かせない道具が、ブラシ。
裏打ちする際、糊を引いた和紙を表紙に乗せたら、ヘラではなく適度にコシのあるブラシで、とんとん、となじませるのが和紙の目にまんべんなく糊が入ってよいそう。
そのブラシ選びが難しい。
たわしでも良いと聞いてやってみたけど、目が粗くて棕櫚が硬すぎるのか、和紙が返って毛羽だってしまってうまくいかなかった。
スーツなどの埃を取るのに使う、洋服ブラシが最適らしいが、あまり売っているのを見かけない。
主宰者が自宅から持ってきてくれたものは、テーラーで使われていそうな立派なもの。
なるほど、使い勝手よく、よくなじむ!
持ち手には「HIRANO」の文字。
調べてみると、ブラシ専門店らしい。
色んな会社があるものだ。
中々のお値段にびっくりだけど、使ってみればわかる。
やはり良いものは、良いのである。

 

参加者皆、スタートの時期が様々であること、解体する本の装丁も異なることから、お互い同時の作業ではないので、工程の復習や予習も同時にできるのがよいところだと思っています。
日記にも書いたように、毎回使用する道具に驚くこと多し。
見たこともないものから、使ったことないもの、本来は別の用途の道具だったり。
製本の工程は、非常に多く、一つの工程が細かい。
使う道具の種類が多くなるのも納得である。

今は、こんなことで休会中。
次回開催はいつになるでしょう。
夏頃には、今の心配ごとなど嘘のように、また集って手を動かしていたいと祈るばかりです。

今しばらくは、
Stay at HOME,
and Bookbinding, Book Repair.

(写真1)解体した糸綴じの本。これから改装を始めます。 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真1)解体した糸綴じの本。これから改装を始めます。

(写真2)表紙・裏表紙の裏打ち作業 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真2)表紙・裏表紙の裏打ち作業

(写真3)裏打ちした後、洋服ブラシで糊をなじませる様子 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真3)裏打ちした後、洋服ブラシで糊をなじませる様子

(写真4)本文背の部分に鋸を使って綴じ穴を開けます | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真4)本文背の部分に鋸を使って綴じ穴を開けます

(写真5)道具さまざま(時計回りに 洋服ブラシ, ノギス, 厚さばかり2種, コビト―, メス, コンパス) | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真5)道具さまざま(時計回りに 洋服ブラシ, ノギス, 厚さばかり2種, コビト―, メス, コンパス)

(写真6)ある回の様子 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真6)ある回の様子

(写真1)解体した糸綴じの本。これから改装を始めます。 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真1)解体した糸綴じの本。これから改装を始めます。

(写真2)表紙・裏表紙の裏打ち作業 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真2)表紙・裏表紙の裏打ち作業

(写真3)裏打ちした後、洋服ブラシで糊をなじませる様子 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真3)裏打ちした後、洋服ブラシで糊をなじませる様子

(写真4)本文背の部分に鋸を使って綴じ穴を開けます | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真4)本文背の部分に鋸を使って綴じ穴を開けます

(写真5)道具さまざま(時計回りに 洋服ブラシ, ノギス, 厚さばかり2種, コビト―, メス, コンパス) | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真5)道具さまざま(時計回りに 洋服ブラシ, ノギス, 厚さばかり2種, コビト―, メス, コンパス)

(写真6)ある回の様子 | 資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真6)ある回の様子