三星インキ株式会社
色がもたらす影響や意味合い「白」
今回も古代より存在が知られていた色である白について書かせて頂きます。
白は黒と正反対で光を全て反射する事で見える色であり、無彩色ですが進出色で、黒と異なりどんな色にも混じりやすく、馴染みやすく、調和がとれる色であります。また、白はものを大きく見せる膨張色であり、白い服を着た方が黒の服を着ている時よりも大きく見られます。碁に使われている碁石も白の石と黒の石を全く同じ大きさにすると黒石が小さく見えるそうで、同じ大きさに見えるように黒の石よりも白い石の方が若干小さく作られています。
また白は清潔感というイメージを持つ事から、医療に関わるものが連想されます(白衣・包帯・ガーゼ・救急車など)。
その他にも白は始まりを意味しており、これから新生活が始まる時に使われたり(結婚式での白無垢やウェディングドレスなど)、何もなかった事にする事を『白紙に戻す』と言ったりします。
その反面、終わりという意味を持っており、死者が着る服や切腹する時に着ていた着物は白色(白装束)であります。わが国では現在は喪服と言えば黒色ですが、明治時代前までは白色が主流であり(欧米にならって黒にした)、中国では今でも葬儀に出席する際は白い喪服を着る事が多く、白は『死』を表す色として捉えられています。
また『白星』は勝利を表しますが、『白旗を上げる』は負けを表し、これも同じ色で正反対を意味します。
白は前述の通り、光を全反射する事で見える色でありますが、光に含まれる熱成分(赤外線)も一緒に反射する事から温まりにくい色であり、炎天下に置かれた白色の車は熱を吸収する黒色の車に比べて外装が約20℃も低くなる事が知られています。
また光を全反射する事から、白を見るという事は他の色に比べて多くの光が目に入ってくる事となり、白色を見続ける事はあまり目に良い事ではないと言われています。
特に雪山ではあたり一面白色しか存在せず、太陽からの直射光だけでなく、雪(白)に反射した光も目に入って来る為、非常に多くの太陽光が目に入ってくる事になります。
従って短時間の滞在でも、下界より多くの太陽光を浴びる事となり、目が日焼けしてダメージを受けた状態(一般的に雪目と呼ばれています)となります。従って、雪山に行く際は紫外線をカットするサングラスなどを常備する事をお薦めします。
ただ、光を反射する事から照明効率が良く、同じ照明器具でも部屋を白くする事で明るくなる事から、省エネ対策としては良い方法だそうです。
また、白は何もない(虚無)という冷たい印象を与えやすく、清潔感を付与する為に白を基調とした病院などは、その影響もあって、何か冷たい、寂しいというイメージを受け、心理的に行きたくない場所だと感じるそうです。従って最近では心理的な面を考慮して、安心感を与えるような色彩(淡い緑や赤など)の内装とした病院が増えてきているとの事です。
現在、白を発現する色材として『酸化チタン』という無機顔料が使用されていますが、昔は鉛を主成分とした『鉛白』というものが使われていました。そしてこの鉛白は化粧(おしろい)にも使われていたそうで、顔や身体に絶えず塗っていた為に鉛中毒になる人が多くいたそうです。また絵画にも同じ鉛白が使われており、画家も鉛中毒になる方が多くいたそうです。
ただ、この鉛白は酸化チタンよりも濃度感や白色感に優れているとされており、今なお絵画等では顔料として使われる事があります。
そして白と黒が混ざった色として灰色があります。
灰色は無彩色である白と黒の中間の色域にある無彩色で、質素で控えめな上品さがあり、周囲の色を引き立てる色である事から室町時代の『侘び・寂び』などに使われていた色であり、粋(いき)な色として現在でも多くの色が伝統色として残っています。
また、もともと日本人は墨の文化であり、水墨画などは墨の濃淡で表現(濃い方から順に 焦-濃―重-淡-清)しており、この点から薄い墨の色として馴染みある色だと言えます。
灰色は白と黒の間である事から正負どっちつかずの場合に使用(グレーゾーンなど)される事があり、「灰色の人生」や「灰色の空」など晴れやかではない状態時に使われる色であります。
このような灰色はオフィスの備品などに使われる事が多いですが、心理学的に灰色は沈静効果があるとの事で、落ち着いた雰囲気で仕事ができるという効果を与えると言われています。