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三星インキ株式会社
金インキをうまく印刷する方法

金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

今回は金インキをうまく印刷する方法について書かせて頂きます。

前回書かせて頂いた通り、金インキは一般の色インキに使用している顔料よりもかなり粒径が大きく、比重の重い顔料を2~3倍量使用している為、非常に印刷しにくいインキの代表として挙げられ、印刷会社さん(特に平版印刷)では嫌がられるインキであります。

平版印刷会社からよく指摘される金インキの問題点は次の通りです。

①印刷速度を早くすると濃度感が出にくい。
②印刷速度を早くするとミスチング(細かくミスト状になったインキが飛散する)が発生する。
③水負けを起こしやすい。

これらの問題点は、やはり金属顔料を使用しているからであります。

いやいや、ちょっと待てと。
金属を顔料にしているインキは金インキだけじゃないぞ!
白インキも酸化チタンという金属顔料をインキ中に40-50%使用しているぞ!
という指摘もあります。

おっしゃる通り、白インキも配合的には金インキと変わらないと言えば変わらないのです。
では、金インキと白インキで何が違うのか?

それは何を求めているのかという事です。

白インキを使用する目的としては、主に下地を隠す用途で使われる事が多く、特にキラキラ輝かせる必要もありません。その為に酸化チタンの平均粒径は0.1-0.3μm程度と細かく製造されており、金インキに使用される真鍮の1/10以下の大きさであります。

(真鍮粉) | 金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(真鍮粉) 参考写真:チタン工業株式会社

(酸化チタン) | 金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(酸化チタン) 参考写真:チタン工業株式会社

つまり、色材である酸化チタンを原反に綺麗に転移させる事がメインである白インキに対して、金インキは金属顔料を原反に転移させ、かつ“表面に配向させて輝度感を付与させる”必要があるのです。
これこそが最大の違いであります。

では粒径の大きな金属を原反に上手に転移させる、あるいは表面に浮かせるにはどのような方法があるのでしょうか?

前回、金インキに使用している真鍮粉は、比重が大きいので浮きにくい顔料であると記載しましたが、それでも何とか浮かそうと技術的・設計的に検討・対応しています。
細かい事はノウハウに関わってくるので書けませんが、簡単に言えばワニスと金粉の濡れ性を悪くする。もっと乱暴な言い方をすれば、ワニスと金粉をケンカさせてワニス(皮膜)から金粉をはじき出させる事で金粉を表面に配向させるのです。

ほら、またこれで金インキは印刷しにくいっていう事が分かって頂けますね。

重くて大きな金属顔料を運ぶ必要があるにもかかわらず、顔料を運ぶ役割をするワニスと相性を悪くしているのですから(なお、ワニス(Vanish)の事をビヒクル(Vihicle)とも言いますが、ビヒクルとは荷車や運搬手段という意味があります)。

従って、金インキを印刷する時はできるだけ印刷速度を落として印刷して下さい。
インキの中に50%程度入っている重くて大きな金粉を運ぶには、ワニスに乗せて、ゆっくりと運ぶ必要があるのです。速い速度では金粉をきちんと運ぶ事は難しく、ワニスだけが転移して、良好な金属効果を得る事ができません。
その他にも、粒径の大きな金属顔料を多く使用しているためにインキが細かくちぎれやすく、速い速度の場合、千切れたインキが飛び散ってミスチングを発生させます。
金インキの場合、早い速度で印刷しても、あまりメリットはない事を周知下さい。

次回はもう少し金インキを上手に印刷する方法について書かせて頂きます。

金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(真鍮粉) | 金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(真鍮粉)
参考写真:チタン工業株式会社

(酸化チタン) | 金インキをうまく印刷する方法 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(酸化チタン)
参考写真:チタン工業株式会社