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平和紙業株式会社
文庫本

先ず、今回の新型コロナウイルス感染症防止に尽力いただいている、医師、看護師をはじめとした、医療関係者の皆様には心より感謝申し上げるとともに、罹患された方には、早期の回復をお祈り申し上げます。

さて、ついに非常事態宣言が発出され、人と人との接触を避けるべく、自宅待機とか、在宅勤務とか、家の中で過ごす時間が増えているのではないでしょうか。
とは言え、いざ家で過ごすとなると、意外と時間を持て余したり、外に出るなと言われると、尚更、外に出たくなってしまうのが人情というものです。
こんな時こそ、普段読めない本を読んでみてはいかがでしょうか。

そんな中でも文庫本は、コンパクトで嵩張らず、手軽に読むことができるものです。
文庫本は単行本が発売された後、より多くの方に読んでもらえるよう、コンパクトなサイズに仕立て直したものです。
基本的なサイズはA6規格〈天地(縦)148㎜、幅(左右)105㎜〉、官製はがきとほぼ同じ大きさです。
でもこの文庫本のサイズは、出版社によって微妙に違っていて。書店に並ぶ文庫本を見てみると、天地も幅もサイズが微妙に違っているのにお気づきでしょうか。

私も、御多分に漏れず、自宅待機中にこのコラムを書いているので、手元にある文庫本のサイズを計ってみると、

  天地
ハヤカワ文庫 156 105
文春文庫 153 106
光文社文庫 152 106
集英社文庫 152 105
中公文庫 151 105
幻冬舎文庫 151 100
新潮文庫 151 106
PHP文庫 150 105
角川文庫 148 104
講談社文庫 148 105
ちくま文庫 148 105
創元推理文庫 148 106

手元にある文庫本の中では、天地が最も長いのは、ハヤカワ文庫の156㎜、逆に最も短いのが講談社文庫など148㎜。幅はほとんどが104~106㎜ですが、幻冬舎文庫は100㎜と、最も短い。一言に文庫本と言っても、出版社によってサイズにもそれぞれの個性があるということが分かります(写真1、2参照)。

(写真1) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)手持ちの文庫本で、ハヤカワ文庫と講談社文庫では、随分背の高さが違うのが分かります。

(写真2) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)手持ちの文庫本で、文春文庫と幻冬舎文庫では、随分幅が違うのが分かります。

文庫本に対する出版社の個性は、サイズだけではありません。文庫本本体の表紙や扉、裏表紙にも、それぞれの出版社の個性が光ります。
多くの文庫本の表紙や扉、裏表紙には、その出版社特有のデザインやイラストが描かれています。
例えば新潮文庫の表紙には、ブドウの絵が描かれています。この絵は、扉や裏表紙にも描かれていますが、微妙にデザインが違っています(写真3参照)。
中公文庫の表紙には鳩のイラスト。扉には何となくピカソが描いたような鳩のイラスト、裏表紙にはモノグラムがあしらわれています(写真4、4-1参照)。
表紙のデザインも置かれる位置が微妙に変わったり。時代とともにデザインそのものが変わったりしていて、趣深いものがあります(写真5参照)。

(写真3) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)新潮社の表紙と裏表紙に描かれブドウ柄のイラスト。表紙のブドウのつるの部分は、SL(Shincho Library)の文字をデザインしています(左)。裏表紙はつるのデザインが違います(右)。

(写真4) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)中公文庫の表紙には、胸に「CHUOKORON」と書かれた大きな鳩(?)が。このデザインは、建築家の白井晟一氏のデザインと言われています。

(写真4-1) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4-1)同じ鳥のデザインでも、表紙と扉では違ったデザイン。鳩が咥えているのはオリーブの枝でしょうか。

(写真5) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真5)講談社文庫の表紙は、当初は日本を代表するグラフィックデザイナー故亀倉雄策氏のデザイン(左)。現在は、装丁家の菊池信義氏のデザイン(右)となっています。

表紙や裏表紙は、普段、カバーに覆われていて、なかなか目にしない部分ですが、手元の文庫本を読む前に、一度カバーを外してじっくり文庫本そのものと向き合って見てみると、その出版社の文庫本に込めた思いなどが伝わってきて、時には意外な発見があるものです。

しばらくの間、自宅で過ごす時間も多くなります。早期の終息を祈りながら、是非お手元にある文庫本を手に取って、文字と同時に、じっくり文庫本を味わってみてはいかがでしょうか。

(写真1) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)手持ちの文庫本で、ハヤカワ文庫と講談社文庫では、随分背の高さが違うのが分かります。

(写真2) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)手持ちの文庫本で、文春文庫と幻冬舎文庫では、随分幅が違うのが分かります。

(写真3) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)新潮社の表紙と裏表紙に描かれブドウ柄のイラスト。表紙のブドウのつるの部分は、SL(Shincho Library)の文字をデザインしています(左)。裏表紙はつるのデザインが違います(右)。

(写真4) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)中公文庫の表紙には、胸に「CHUOKORON」と書かれた大きな鳩(?)が。このデザインは、建築家の白井晟一氏のデザインと言われています。

(写真4-1) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4-1)同じ鳥のデザインでも、表紙と扉では違ったデザイン。鳩が咥えているのはオリーブの枝でしょうか。

(写真5) | 文庫本 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真5)講談社文庫の表紙は、当初は日本を代表するグラフィックデザイナー故亀倉雄策氏のデザイン(左)。現在は、装丁家の菊池信義氏のデザイン(右)となっています。