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あみりょうこ
シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。

Octubre(10月)

(写真1) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真1)

こんにちは。あみりょうこです。秋晴れの気持ちの良い日が続いています(写真1)。暑くもなく、寒くもなく、そして新米がおいしい!日本の秋はなんて最高なんだ!と喜びをかみしめています。

空が青くて乾燥しているこの感じは、オアハカを思い出させます。太陽が強く降り注ぐ感じにわくわくします。単に気持ちがいいからではなく、

「この光なら(シルクスクリーンの)製版がバシーっとできそうだ……」

と思うからです。

私はメヒコでシルクスクリーンをし始めたのですが、「スクリーンに絵を焼き付けて網目からインクを通して刷る」というものすごく単純な仕組みだということがわかりました。

しかし単純なのに、奥が深いというか、できたと思ったらちょっとした環境や条件の変化ですぐに失敗をしてしまいます。スクリーンに感光乳剤を塗って露光して製版するところが一番難しいと思うのですが、それを難しくしている原因の一つに、私が露光BOXを持っていないから、というのがあげられると思います。

製版をするときにはUVを含んだ光を当てて焼き付けるのですが、その光の量と露光する時間を均一にしてやることが失敗が少なく製版する秘訣だとされています。

ところが、メヒコで「露光BOXがなくても太陽光で製版できるぜ!」と教えてもらい、太陽光で製版する面白さを知りました。太陽には製版するのに必要なUV(紫外線)が含まれていて、たった30秒太陽光を当てたら、絵が浮かび上がってくるのだからなんだか魔法のようです(写真2)。成功した時の高揚感は何とも言えないものがあります。

(写真2) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真2)太陽光で製版するイメージ。写真のものは感光乳剤を塗っていませんが、乳剤を塗ったスクリーンの上に製版したいデザイン、さらにガラスをおいて太陽の光を当てて製版します。天候の他にも使っている乳剤の感度によって露光時間を調整する必要があります。

紫外線の量は天気によってかなり左右されるので、曇っていたら1分や2分、といった具合に露光時間を長くとらなければいけません。紫外線の量が十分でないと、乳剤が固まり切らずうまく製版できませんし、逆に露光時間が長すぎると乳剤が固まりすぎて版が抜け落ちないということになってしまいます。

(写真3) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真3)露光BOX。箱の中に光源があります。
画像参照:ScreenPrinting.com by Ryonet

だから露光BOXでいつも同じ条件下で製版することがおすすめされているというわけです(写真3)。メヒコの場合日本と違い晴天の日が非常に多かったので、太陽を使っての製版が割に容易で、本格的な露光BOXの差し迫った必要性を感じていなかったわけです。簡易の小さいものは持っていましたが、それも野菜を入れる木箱の中に普通の裸電球を入れただけというおそろしく簡易なものでした。

日本の方が太陽に恵まれる日が断然に少ないと思うので、近い将来露光BOXを持つ必要があるのはわかっているのですが、秋晴れを目の前にすると、あの魔法の製版をしたくなるというのが人情です。

いつかこの「太陽で製版してシルクスクリーンをする」というワークショップなどをしてみたいと思っているのですが、天気のことや版を洗ったりする水まわりの設備がいるので、まだアイディアとしてぼんやりと持っている程度です。

この製販のところが一番難しいのですが、シルクスクリーンの花形というか一番楽しいところはやはり「印刷する」ところです。印刷はやっぱり、印刷する瞬間が花があるというか実際にインクがのるわけで見た目にもわかりやすいので、「わあ!」となります。

だからせめてその「わあ!刷れた!」という楽しさを共有したいと思い、印刷の体験会を開くことにしました。

製版はあらかじめこちらで済ませておいて、参加していただく方に印刷したいデザインとインクの色を選んでもらい、実際に刷ってもらうというものです。その際に少しシルクスクリーンの仕組みなども説明させてもらいました。製版とか露光とかの言葉に「??」となっているようだと、だいたい「プリントゴッコみたいな感じです」と加えると「ああ!」となる方が多いのですが、それでも「プリントゴッコってなに?!」と言われてしまったときには、さすがに時代を感じてしまいました。(写真4)

(写真4) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真4)プリントゴッコ
画像参照:wikipedia

年賀状なども家庭のプリンタで印刷するようになってからずいぶんと経つので、20代の人などは、プリントゴッコで年賀状をつくったという経験がないのだそうです。

(写真5) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真5)

印刷の体験会には、友人が親子3世代で参加してくれたりしたので、最年少のシルクスクリーンプリンターは3歳でした!

大人に手伝ってもらいながら、一生懸命スキージーを使って印刷しました(写真5)。スクリーンをのけると、さっきまでなかった絵が印刷されていてびっくりしたけど、「私が印刷した!」という感覚はあるようでとてもうれしそうだったので、私もそれ以上にうれしくなりました。

(写真6) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真6)

大人の参加者の方も、シルクスクリーンの仕組みを知ってもらい、実際に印刷を体験してもらうことができたのでいい会になりました。楽しんでできたのが一番よかったです。ものつくりはやっぱり楽しいという原点をみんなで味わいました。(写真6)

日本に戻ってからシルクスクリーンを続けるにあたって気が付いたのは、日本では画材屋さんなどでシルクスクリーンのセクションがものすごく少ないので、道具を買ったりするのが結構難しいということです。おそらく、それほどシルクスクリーンがメジャーではない、あるいは家でするものではない、専門性が高すぎるからニーズがあまりないということなのでしょうか……。

今日も秋晴れ。この晴天がしばらく続けばいいのになぁ、と願うばかりです。それでは、また次回。¡Hasta luego!

(写真1) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

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(写真2) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真2)太陽光で製版するイメージ。写真のものは感光乳剤を塗っていませんが、乳剤を塗ったスクリーンの上に製版したいデザイン、さらにガラスをおいて太陽の光を当てて製版します。天候の他にも使っている乳剤の感度によって露光時間を調整する必要があります。

(写真3) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真3)露光BOX。箱の中に光源があります。
画像参照:ScreenPrinting.com by Ryonet

(写真4) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真4)プリントゴッコ
画像参照:wikipedia

(写真5) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

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(写真6) | シルクスクリーンの印刷体験会、の巻き。 - あみりょうこ | 活版印刷研究所

(写真6)