図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]102
山野上禮子遺作展
開催ごあいさつ
我ルリュールの師匠山野上禮子逝去から丸3年が経ちます。
80冊近い作品が遺されました。書物を愛する方たちにこれらのルリュール作品を見ていただきたく京都伏見のものことあとりえ一頁で展覧会を開催いたします。会場には可能な限り沢山のルリュール作品を展示する予定です。
この会場は私たちが修理のためのルリュール勉強会に取り組んでいる、いわば現場です。ルリュールされた書物たちは、生まれ故郷に帰ったように息を吹き返してくれるのではないでしょうか。
何事かをやろうか?やるまいか?迷っていると「迷っているならやるべし!」と激励してくれる人でした。この師匠の遺作展なら、巨大なカッターや、かがり台や大小のプレスや紙や糊や革が存在感を発揮しているこのアトリエでこそふさわしいとの思いからこの会場で開催することにいたしました。
そして、これらの道具や機材は、ご遺族の好意で山野上アトリエから私たちに受け継がせていただいたものです。
この師匠の言葉で「図書館資料保存ワークショップ」を始めることができました。
「図書館資料保存ワークショップ」は現「図書館資料保存ワークショップ番外編」としてその活動を継承しています。
現在ルリュールは、中世ヨーロッパで行われていた当時と異なり、多くの場合、糸綴じされた古い書物を解体し、修理し、綴じ直すことから始めます。つまり書物修理や修復の技術や手法が必須です。
翻って図書館所蔵本を修理しようと思えば、その本の成り立ちを知ることがその書物に一番ふさわしい方法を見つける近道であることはたびたび山野上師匠から伝えられたことです。
そこで「図書館資料保存ワークショップ番外編」は師匠の旅立ち後、修理の勉強のため、ものことあとりえ一頁でルリュールの製本方式のひとつブラデルで各自の所蔵本を作成しています。
立ち上げ当初の「図書館資料保存ワークショップ」はコロナ禍のため会場であった京都大学での開催ができなくなってしまいました。現在も再開できていません。
山野上師匠がベルギー・ブリュッセルでルリュールを学び、帰国後、枚方市でアトリエを開いたのは1981年、その当時は必要な道具も材料も日本では手に入らないものばかりだったでしょう。
そんな時代から制作を始めた師匠は日本文学や日本の工芸など日本語の本をルリュールした作品を多く遺してくれました。それらはヨーロッパで伝統的に使われて来たモロッコ革などと和紙を組み合わせたり、和綴じや折帖本に仕立てたりと身近なものを使い、工夫しています。手に取って見て行くと、いろいろに思いを巡らせながら楽しんで、あるいは苦労して作品づくりに励んだかが偲ばれます。
本来の展覧会は作品に触れていただくことはしませんが、この度は上に書きましたように、みなさまに師匠のアイディアを鑑賞していただきたく、ご希望の方は展覧会スタッフに申し出ていただき手に取って見ていただけるコーナーも設ける予定です。
最後になりましたが、この展覧会開催にあたって、京都活版印刷所様、活版印刷研究所様に協賛いただいたことを感謝申し上げます。
なお、会場は靴を脱いで入場していただきますことを申し添えます。
急な開催日程になってしまいましたが、本を愛するみなさまのご来場をお待ちしております。詳細は案内葉書の画像をご覧下さい。
山野上禮子師匠についてのWEB MAGAZINEの記事は以下のものがあります。
WEB MAGAZINE No.68 2022年7月15日和魂洋才のルリュール
https://letterpresslabo.com/2022/07/15/kulpcws-column68/
WEB MAGAZINE No.86 2024年1月15日修復は面白い!
https://letterpresslabo.com/2024/01/15/kulpcws-column86/
WEB MAGAZINE No.68 2022年11月15日「図書館資料保存ワークショップ 番外編」新たな一頁へ
https://letterpresslabo.com/2022/11/15/kulpcws-column72/
WEB MAGAZINE No.68 2022年9月15日大学の資料保存について気懸りなニュース
ー再びー
https://letterpresslabo.com/2022/09/15/kulpcws-column70/
図書館資料保存ワークショップ 堤美智子記